現場にアタック

2013年07月03日(水)

担当:近堂かおり

 

先週、このコーナー世界遺産の小笠原諸島で外来種のトカゲが繁殖して問題になっているという話をしましたが、今日は在来種が主役の似たような問題。

舞台は北海道。サケ漁の盛んなエリア。

そこの漁協がアメマスというマス2匹を漁協に持ってきたらホタテ1つと交換するという取り組みを始め、それが波紋を広げています。

どうしてそんなことが起こったのか、アメマスという魚について標津サーモン科学館館長の市村政樹さんに聞きました。

 

サケ科のイワナ属に属していて簡単にいうとサケの仲間。サケというと海に出て川に戻ってきて、卵を産んで死んでしまうと思うがアメマスの場合、1年では死なずに何回も産卵に参加できる。ですから、特に道東地域のものについては冬場川にいて一斉に冬を越すことになる。そのため春になると海に下るようになるが、ちょうどそのときシロザケ稚魚の放流時期と重なるので一緒に海へ下るんです。その際にアメマスがサケの稚魚を補足するのは間違いないと思います。

 


 

 

放流したサケの稚魚を食べちゃうアメマスを釣ってもらって、かわりにホタテを渡すという取り組みを1ヶ月限定で始めた。

アメマスは1ヶ月で700匹も集まった!

アメマスは、漁業資源として収穫されることもあるが、サケと比べると値段は相当安く、漁師さんにとっては稼げない魚。

そこで今回の取り組みが行われた。

 

ところが、アメマスは、日本固有の魚いうことで釣り人に人気の魚

さらに、アメマスはブラックバスのような外来種ではなく在来種ということで「駆除」にも取られかねないホタテとの交換には非難されてしまった

 

詳しい話を漁協に聞こうとすると、音声による取材は受けていただけませんでしたが、かわりにもらったコメントによると、

海で網にかかるアメマスがここ10年で4倍になる一方、サケの漁獲高はそれに反比例するように3分の1以下になっている。そこで2つの魚の関係性を見るためにサケの稚魚を川に放流する際に、アメマスが増えているのかを調査するためにやった。アメマスは釣られて捨てられることも多く、それを集めるのは大丈夫ではないかということで漁協で集めた。」とのこと。

 

サケの稚魚を放流するほかの漁協にもアメマスとサケの関係を聞こうと試したが、軒並み取材拒否。北海道には「アメマスタブー」があった。ただひとつ匿名を条件に取材に答えてくださる漁協があったので話を聞きました。

 

 

アメマスは、1時間に100匹を釣り上げたという話もある。

せっかく育てた稚魚が捕食されてしまうというのは非常にもったいない感じはする。稚魚1匹何十円というお金がかかっているので育てたほうにすればもったいないということになる。

私どもの漁協で言えば収入源の8割はサケに頼っているものなので非常に心配。

 

収入の8割をサケに依存しているんじゃ、これは大きい!

 

この漁協関係者によると、アメマスは数年前と比べて増えている実感がある。

一時間に100匹ですからね・・・。

また、釣り人たちの話では、『別の漁協では、増えすぎたアメマスを駆除する目的で「アメマスダービー」なる釣り大会を開いた』なんて話もあるほどサケを扱う漁師さんにとってはアメマスは問題の魚になっているのです。

 

ところが、アメマスが増えてサケが減ったという関係に疑問を持っている研究者がいました。

サケの生態に詳しい北海道大学・帰山雅秀特任教授のお話です。

 

 

昔からアメマスがサケの稚魚を食べる例はあった。具体的にいうと私がデータを取り始めたのが1970年代ですが、そのぐらいからその状況があった。すなわち、サケが増えようが減ろうが関係なくアメマスは放流されたサケの稚魚を食べているということになる。

ただ、日本に帰ってきているシロザケが減ってきていることだけは間違いない。これまではシロザケにとって北太平洋は住みやすい環境だった。それが今度は1975年以前の気候に変わりサケにとって住みづらい状態になった。

 

サケが減ったのはアメマスのせいではなくて、元々サケが減っていたということなのです。

実は数十年周期の気候変動の影響で1975年~1997年までサケが非常に生息しやすい環境が生まれていて、豊漁だった。

ところが1998年からサケの住みにくい環境になってきてサケの量が減った

気候変動に加え、温暖化の影響で海水温が上昇したため、遡上しないサケが増えてきたこともサケの漁獲量が減ったことにつながったというデータもある。

話を聞くとアメマスはサケの漁獲量減少の犯人にされてしまった可能性が高い・・・。

 

ただ、アメマスはマイナーな魚なので細かなデータがないというのも事実で、漁協が調査と称してアメマスを集めたいと考えたのは、気持ちは分かります。 

ところが、サケだけを保護することにはこんな問題もある、と帰山先生はおっしゃいます。

 

 

 

孵化場魚は逃げるのも下手だし、繁殖も下手なんですね。野生魚と孵化場魚が一緒にいると孵化場魚は繁殖できないんですよ。ある意味過保護になっちゃっている。彼らにとっては環境が良いときは生き残るのに良いのですが、環境が厳しくなると過保護な魚は生き残ることが難しくなると思うんですよね。

むしろ環境の変化に強い野生魚のほうが、生き残っていく可能性が高いのではないか。そういう意味では環境が変化する中で、野生魚をどう守っていくのかということが日本のサケを守っていく上では大事なのかと思うんですけど。

 

帰山先生は人工孵化の稚魚を特別に守る、ということになると、結果的に弱いサケが増えてしまう心配がある、と話す。

とはいえ収入の8割をサケに依存する漁師にとっては放流はやめられない。

生活があり、生きていかなくてはいけません。

深刻です。

しかも私たちの食卓に身近なサケ、ですからね。我々にも大いに関係ありますね・・・。

 

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