こちらは過去ページです。http://www.tbsradio.jp/ss954/へアクセスしてください。

2014年06月04日(水)「天安門事件から25年」(証言モード)

証言モード

■テーマ

  天安門事件から25年。あの時、何が起きたのか?


 ■スタジオゲスト

  ●当時、NHKの特派員として現場からのレポートを続けた
   法政大学社会学部教授
大﨑雄二 さん

  20140604_1.JPG

  ●当時、香港に留学していたTBSラジオ 武田一顯 記者

  20140604_2.JPG

 ■電話ゲスト

  ●TBS北京支局 嶌暢大 記者

  ●当時、朝鮮労働党幹部として北京にいて
   脱北後、北朝鮮問題を分析するコラムニスト 呉小元 さん

 ■インタビュー【2014年5月30日(金)都内にて】

  ●学生運動のリーダーの一人 ウアルカイシ

  20140604_3.jpg 


  ●インタビュアー: 武田一顯 記者

  ●インタビュー訳: 大﨑雄二 さん

Q:25年前、私はまだ大学生でした。ちょうど香港に留学しておりましたので、毎日のようにウーアルカイシさんをテレビの画面で拝見していました。まさに学生運動の英雄でしたよね。さてこの四半世紀の間、中国の人権や民主をめぐる状況にはどんな変化がありましたか。

A:私が英雄だなんて、とんでもないです。結論から言えば、中国の人権をめぐる状況は政治的には後退しています。1989年当時、それまで10年間の「改革・開放」政策によって、政治的な民主化についても表面的にはわずかながら積極的な進歩と呼べるようなきざしも出てきていました。ただし、スピードは決して早くはありませんでしたが......。だからこそ庶民たちもこうした動きに希望を抱いたのです。しかし、1989年の虐殺事件以降は、中国共産党は国民との約束を破って改革への動きを放棄し、自分たちへのより一層の権力集中、独裁化を進めました。国民をより強力に統制することによって権力を維持するというまさに警察国家へと変わっていったのです。中国共産党による支配の合法性、正当性を主張し続けることも難しい局面に入りました。その後の3年間は西側各国の経済制裁なども受けて、経済的にも苦しい状況となりました。そこで、彼らは経済の面で大きな譲歩をすることにしたのです。それは学生たちが運動の中で主張したよりいっそうの市場の開放、経済の自由化という政策に他なりませんでした。経済的にはこれまでになかったほどの自由化を進める一方で、政治的にはさらに厳しく反対意見を封じ込める締め付けを強化してきました。こうした独裁的な政治システムによって、経済の構造の中で中国共産党は直接「利権集団」としての地位を奪い取っていったのです。国民にはわずかな利益しかもたらされませんでした。その一方で、民間の自由や人権をめぐる動きはどうかと言いますと、国民の政治的な自由を求める動きはますます強まっています。1989年あたりまで中国の社会は生活のさまざまなレベルの隅々まで中国共産党がかかわり、統制するという構造をもっていたのですが、国民は次第に共産党や行政機関には頼らなくなってきています。政治的な自由を求める動きは、具体的なスローガンこそありませんが、さらに自由な経済活動の環境づくりを求めたり、独立した司法機関による自由な経済活動の保障を要求したり、行政がかかわる不公平な競争の禁止や経済政策の決定過程への参加の要求などさまざまです。経済的な自由を求めるこうした要求は、まさにそれぞれが政治的な要求となっているのです。この25年間、中国の自由と民主をめぐっては大きな変化がありました。党や政府はますます反動化し、国民はますます強く変化を求めるようになってきています。

Q:この間、中国の指導者も鄧小平、江沢民、胡錦濤、習近平と交替してきましたが、それぞれの政権ごとに何か変化はありましたか。現在の習近平総書記についての評価は如何ですか。

A:日本も含めて、西側のメディアはよく新しい指導者や政党に何か新しい政策を期待するのですが、これは民主的な社会での指導者、政権交替の話です。独裁国家、特に中国のような権力集中の独裁、特殊利益集団の政権についてはまったくあてはまりません。彼らは自分たちの利権を守るために、権力を維持し、反対の声を封じ込めるのです。指導者の交替によって政治改革を期待するというのはあまりにも楽観的すぎます。しかし、まったく可能性がないかと言えば、そうでもありません。それは、指導者の個人的な特徴やその良心によるものではなく、そのときどき中国がどれだけ重大な危機に見舞われるか、どれだけの圧力を受けるかということにかかわってきます。中国も毛沢東や華国鋒の時代にはとても保守的な政策が続いてきました。しかし鄧小平の時代になってからは、改革が進められました。なぜかと言えば、そのとき中国がたいへん大きな圧力を受け、中国共産党政権が崩壊しかねないような危機に直面したからです。もし習近平の在任期間中に何か大きな危機が起き、独裁政権を維持できなくなるような圧力がかかったとしたら、政治改革の可能性も出てくることでしょう。まったく可能性がないわけではありません。これまで中国共産党の政権は幾度かこうした危機を乗り越えてきました。変革の鍵は中国が将来どういう危機、圧力に直面するかということにかかっています。これは独裁者の特徴でもありましょう。
 
Q:日本の政治家はよく「中国は何年かで分裂するだろう」というような話をします。こういう見方については如何でしょう。私は習近平の任期が終わる10年後あたりに中国共産党の統治に何かしらの変化が訪れるような気もするのですが......。

A:中国はこれだけ大きな国ですから、さまざまな議論の中で「分裂」という言葉はよく出てきます。もし分裂が起きるとすれば、国土の分裂の前に権力の分裂が起きることになると考えています。それは、政治構造の大きな変化でもあります。私は内戦が起きるような可能性は低いと見ています。中国共産党が二つに分裂して、お互いに競い合う勢力となれば、それは今のような独裁型の一つの党でありよりはよりましだということになります。二つの勢力は、公開の場で議論し合い、選挙によって争うことになるからです。そこに我々の反対派の勢力も加わります。そうすれば、中国は必然的に自由や民主の方向へと進んでいくことになると思います。
 
Q:将来、中国で民主化要求運動、「天安門事件」の見直し、再評価がおこなわれる可能性はどうでしょうか。

A:そうですね。中国国内で政治的な分裂が起こって、一方の側が政治的な話題にすることも考えられます。それは民意や世論の圧力を受けてということになるのでしょうが。そうした状況が生まれたときには必ず事件についても見直され、民主化運動も再評価されることになるでしょう。

Q 若い人たちは事件のことを知りません。そうした情報の封じ込めということでは、中国共産党の政策は成功しているようにも見えますが......。

A:民主化要求の運動は中国国内の200から300の街で起きました。運動に加わった人を合わせれば何億人という人数にもなるでしょう。そうした人たちの記憶は消し去ることはできません。またこれだけ情報通信技術が速いスピードで発達してきているわけですから、これから10年後、20年後の人たちが事件に関連する情報にアクセスできる機会も増えてくると思います。大事なことは、自分の頭でものを考えるインテリや共産党内部の人たちがきちんと考えてくれるかどうかということです。こうした人たちが中国の未来に深くかかわってくることになるからです。

Q:新疆ウイグル自治区では毎月のように当局側が言う「暴力テロ事件」が起きています。新疆はウーアルカイシさんにとっては故郷ですが、どうお考えになっていますか。

A:今日の世界では理性的な思考とは正反対のテロリズムが横行しています。特にイスラムの関係する暴力の問題についてはセンシティブな問題です。2001年の「9.11事件」以降、民主社会はテロの恐怖にさらされ続けており、今なおうまくコントロールできていません。ここでは新疆ウイグル自治区の問題とともにチベット自治区の問題も同時に考えてみたいと思います。仏教が信仰されているチベットではこれまで130人あまりの人が抗議のために焼身自殺をしています。ウイグルとチベット、この二つの民族が直面しているのは、中国共産党の独裁による民族の文化、歴史、そして民族の尊厳の抹殺というきわめて重大な問題です。だからこそ130人あまりの人たちが焼身自殺することによって抗議の意思を示しているのです。そこには絶望しか残っていないのです。新疆については天然資源の略奪とともに社会資源も奪われ続けています。絶望の度合いから言えば、今はウイグルのほうがチベットよりも強いのではないでしょうか。暴力事件やテロ事件の背景には、1000万のウイグル人が希望を失っているという厳しい現実があることを忘れてはいけません。

Q:この3月に台湾では学生たちが議会を占拠するという「ひまわり学生運動」が起きました。その背景にあるのは、台湾や香港への中国の影響力の増大です。香港も台湾もみな大陸の影響の拡大を恐れていますよね。

A:鄧小平は香港の返還にあたって「現行の制度は50年間変えない。『井戸の水は川の水とは交わらない』」と言いました。このたとえは、中国共産党の井戸の水が香港という川の水と混じり合わないということを言っているのではなくて、逆に西側に向けて「我々の独裁体制には干渉しないでほしい」ということを言っているのです。香港の主権を手にしてからこの20年近く、中国は民主社会の弱点についてだんだんと理解をしてきたようです。民主的な制度を変えることは難しいけれども、手のひらから水がこぼれるようにゆっくりと自由を奪っていくのはそう難しいことではないということを。庶民は自分の安全や利益のために自由が損なわれることには無頓着です。そういう手法で妥協をさせながら民主的な社会を弱体化させるという手法に気がついたのです。遺憾なことに、西側の民主国家もこの四半世紀、中国に間違ったシグナルを送り続けてきました。特に日本政府です。日本国民は私たちを強く支持しているのにもかかわらず、日本政府は事件後、西側諸国の中でもっとも早く中国と関係を改善し、あたかも「私たちが関心をもっているのは貿易であって、学生たちの命などどうでもいい」というような態度を示しました。中国と関係を維持することが国益にとって第一であって、中国の民主化など二の次だというような誤ったシグナルを送ったのです。日本もこの百年あまり国粋主義や軍国主義を経て民主化を達成してきました。民主制についてはさまざまな制度的な欠点もあります。政治家が選挙を気にしたりといったことなどです。しかし、すぐれた面も看過できません。民主化された中国とならば、日本も国家間の無用な衝突を回避できるでしょう。中国がこれから民主化を実現していくかどうかという問題は、何より隣国である日本にとって重大な問題となってきます。アメリカやEU諸国などよりもなおのことです。

荻上チキ、南部広美
radiko.jp

radiko配信エリア外の方はストリーミング放送でお聞きください。

※ストリーミング放送は番組放送中のみご試聴頂けます

ストリーミング放送を聞く

※当番組のストリーミング放送はiPhoneなどのスマートフォンではご利用になれません。予めご了承下さい。

メインメニュー

関連リンク

<   2014年6月   >
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30