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2017年2月21日

2017年02月26日Part0(予告編)「ポスト・トゥルースのその先へ」

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2月26日(日)25時〜のタイトルは
「ポスト・トゥルースのその先へ」

出演予定:鈴木謙介(charlie)、速水健朗、神里達博(千葉大学教授)、富永京子(立命館大学准教授)、倉本さおり、宮崎智之、斎藤哲也ほか

予告編の出演:鈴木謙介、速水健朗、斎藤哲也、矢野利裕、宮崎智之、長谷川裕P(黒幕)

2月26日(日) 深夜25:00~28:00 (=月曜1:00~4:00)

ラジコではインターネットで放送同様、音楽も聴けます。

Ustreamによる動画生中継も行います⇒ http://ustre.am/lrQf

※ツイキャスでも中継します→ http://twitcasting.tv/life954

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charlieです。

昨年くらいから「ポピュリズム」に関する議論が盛り上がっています。ポピュリズムとは、大衆の気持ちに訴える主張で支持を集める手法のことですが、そのデマゴーグ、大衆扇動のような性格が批判されるだけでなく、はっきりとした違いを打ち出せない既存政党に対するオルタナティブとしての可能性が評価されることもあります。ただいずれの場合であっても、聞き手の納得感を得られる主張を軸に据えるところは共通しているようです。

ここでポイントになるのは、聞き手にとって耳馴染みのいい話が、かならずしも実態を正しく反映しているわけではないということです。むしろネットでよく引用される「お前がそう思うんならそうなんだろう、お前の中ではな」という言葉の通り、聞き手が正しいと感じる内容であれば、虚偽の主張やバイアスのかかった物言い、レトリカルな表現と解釈による事実のすり替えが許されるといったことがまま起きています。

それを端的に表したのが「ポスト・トゥルース」だとか「オルタナティブ・ファクト」という呼称なのでしょう。ただ実はこの点について僕は、日本でこそこういした現象が強く見られるものであり、またそれが現代における政治の限界と関係しているのではないか、と考えています。

まず確認しておく必要があるのは、この種のポピュリズムがネットから生まれたものであることです。既成政党がマスメディアを通じて行う情報発信に対して、ネットというオルタナティブなメディアから、「マスメディアが伝えないオルタナティブな真実」が発信されることで、人々がそちらに関心を寄せる。当然その背後には、ソーシャルメディアの広がりとともに普及したバズマーケティング、つまり人々がシェアしたり話題にしたりすることを重視するようなマーケティング手法の発達があります。

そして、拡散され話題にされるトピックには、感情的なものが多くなります。欧米のように移民やイスラム教徒を分かりやすく「敵」に仕立て上げ、私たちが苦しいのはやつらのせいだ、なんていう攻撃的なものもありますし、その逆に「感動」「哀れみ」といった感情も、人々を強く惹きつけます。企業広告などでは、むしろこうした「泣ける」動画が用いられることが最近では多いようですが、いずれにせよ「感情」に訴えかけるメッセージが、ネットでの拡散を促す手段になっています。

なぜエモーショナルであることが重要になるのかというと、ひとつは人々の政治的無関心が背景にあります。僕たちの多くは政治や政策に対する関心を失っており、55年体制的な「複数の利害の談合的協調」も困難になっています。むしろ利権の巣窟と見なされがちなこの種のやりとりに対して、強い感情的なメッセージこそが人々だけでなく、政治も動かす手段になる。長年指摘されてきた待機児童問題に関して、「保育園落ちた日本死ね」という感情的な物言いしか政治を動かせなかった、というあたりに、それが端的に現れています。

また、こうした「感情」の対極にあると考えられている「データ」も、実は感情的なものの広がりに関係しています。トランプ大統領の選挙戦術の中には、心理学の知見を応用したデータサイエンスがあったと言われていますが、人間の行動もデータレベルに分解すると、「人権」とか「連帯」とか、場合によっては「国家」のようなフィクション(虚構)を必要とせずに、ただ感情のスイッチを押すようにして、人間に特定の行動を促すことができます。つまり問題は、「感情的に人々を動かすことができればいいんだ」という開き直りと、「データさえしっかりしていればそれでいいんだ」という割り切りの両方がともに、人間社会を形成してきた「フィクション」を必要としていないために、「感情」と「データ」以外のオルタナティブがないということだと思います。

それは言い換えると、「人に何かを伝える」ことを諦めている、ということではないでしょうか。そう考えると、マスコミでコメントなんかを担当するとすぐ「そういう難しい話は伝わらないので」と注意されます。難しい話を伝える努力をするのではなく、伝わらないことを前提に感情的に煽ったり、グラフを出して黙らせるみたいなことばかりが通用してしまう。どちらも使いようによっては意味を持つのですが、そこは難しい話を考え続けてはや10年のLifeですから、あえて「第三の道」を目指したいと思います。

そんなわけで今回のLifeは、ポスト・トゥルース、オルタナティブ・ファクトと呼ばれて、感情的な刺激が人々を動かすことがあらわになった時代に、どんなことが必要なのかを、例によって結論も決めないまま考えていきたいと思います。リスナーの皆様からも、「ポスト・トゥルースといわれる今、社会に何が必要だと思いますか?」という、あえて大きなテーマでメールを募集します。社会の問題だけでなくても、会社で上司を説得するときに感じる「ポスト・トゥルース」だったり、身内の「ポスト・トゥルース」に対して説得を諦めた瞬間に感じた無力さだったり、そういうエピソードなんかもお寄せください。

メールアドレスは life@tbs.co.jp

ぜひお早めに!

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