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プロフィール

菊地成孔(きくちなるよし)
●生年月日:1963年6月14日生
●出身地:千葉県銚子市
音楽家、文筆家、音楽講師。
85年にプロデビュー、ジャズを基本に音楽活動を展開。
現在は「デートコースペンタゴン・ロイヤルガーデン」、「菊地成孔とペペトルメント・アスカラール」、「菊地成孔ダブ・セクステット」で活動中。
文筆家としては「スペインの宇宙食」、「歌舞伎町のミッドナイトフットボール」、「ユングのサウンドトラック」など。

IPサイマル radiko

第224回(2015年9月11日)の写真館&文字起こしです。

IMGP2305.JPG

今回の番組ラストのトーク、反響がとても大きかったので、久しぶりにdjaponさんの文字起こしを掲載させていただきます。


そして、まあ...先ほども申し上げた通り、普通にそのままシーズン10に突入したいと思います。放送時間も曜日も変わりません。金曜深夜0時からです。と、いうわけで...そうですね、先週...先々週かな?...スペシャル・ウィークで、時間の都合でね、カットせざるを得なかったんですけど。まあ、先々週はね...林さんの「レズ疑惑」を晴らさなきゃいけなかったんでね(笑)。時間食っちゃったんですけど。あの時、最後の曲で、「言い出せない人」...「告白できない」、あと「男女の間に友情はあるか?」「友達か、恋人なのか?」「離婚したけど、今は友だち。これでいいのか?」とか、すごい...そういう類型のね、お便りがものすごい多かったんですよ。

 

で、それに対してワタシが申し上げた事があったんですけど。ま、ま...真ん中、電話なんかもあったりなんかしてね、時間...ラジオ番組ですから、カットになっちゃったんで。ま、もっかい改めて申し上げますけど。要するに、ワタシがそういった方々に申し上げたいのは...現代人ってのは、もうちょっとエロティークになるべきだと思います。やっぱり。で、「エロティーク」なんてね(笑)...しかもワタシが言うとあれですけど。あの...「身体を鍛えて露出の多い服を着て夜の街に繰り出そう!」とかね、「自分のフェティッシュにとことん溺れきろう。」とかですね。「とにかく誰彼構わず口説いてセックスしてしまえ!」...とかね。そういう話じゃなくてですよ。

 

現代人はとにかくね、もうフェティッシュになっちゃってて、オルガスムスとか...ある種の高揚が、もうみんなフェチに行っちゃってるんで。
それこそね、萌え...尽きちゃってるんですよね。「萌える」の方ね。「萌え〜。」の萌えるのほうで、萌え尽きちゃってると思うんで。こう...ヘルシーなエロティカの力が、すごい低下してると思うんですよ。それはね、人間の生きる力と関係してんの。底力と。バタイユって人がいて、ギリギリ19世紀生まれの...まあ、ちょっと頭のおかしい人ですけれども(笑)。彼は有名なね...蕩尽理論っていう...エロティシズム、「越してはならない一線を越すと、最高に興奮するんだ。」っていうね。ま、タブーを破るってことですけれども。

 

ま、ま...一般的っていうかね、エロティシズム論として、この考え方は...100年は持ったと思うんですけど。もう時代は変わっちゃってますから。まあ、世の中ね...射精やオルガスムスの阿片窟みたいになっちゃってて。しかもそれが、消費行動...エロい物っていうことだけじゃなくて、あと風俗とかそういうことじゃなくて、アイドルを追い掛けたりするような事にも繋がってますし、あと...無消費行動ね。それが全く反転した...一銭も使わず...ワタシが昔「ゼロ円ファン」って言葉作りましたけど、ゼロ円でファンができるっていうような事が...。つまり結局ね、資本主義社会の中で、エロティックである...エロティカである事にね、なんか...罪悪感や無力感が残ってしまうわけ。健全なエロティシズムってのは、やっぱ...生きる喜び...ね。まあ、何て言うんですかね...

 

ワタシは幸いにして、音楽っていう仕事があって...。ま、呪われてるとも言えるんですけど。演奏してる間は、まあ...もうずっとトランスしてるから、とんでもなくエロい。あの...演奏してる間は、もう...全員に性欲感じますからね。ただ、演奏してるからできないわけですよ。ステージ上でおっ始まっちゃったら大変ですからね(笑)。違うショーになっちゃいますから。だから...やらないんだけど。世の中、音楽やったり聞いたりしないって方も...ま、おりますわな。そういう方...そういう方がこの番組聞いてるかどうか、よく分かりませんけども。ま、聞いてたとして。ワタシ、もう...さすがに聞いてる方、お察しだと思いますけど、こうやって喋ってるのも音楽と一緒なんですよ、ワタシ。演奏してるのと変わんないんですよね。で、それはともかく...あのね...いきなりですけど...いきなり言うようですけど、人間関係の中で、最もエロティックでヘルシーな関係ってのは、「お互いがセックスしたいって分かってんだけど、絶対にしない。」関係だと思うんですよ。一生、しないんですよ。ワタシ、これが男女の友情の定義でもいいと思います。21世紀は。

 

やっちゃったらね...つまりそれはバタイユのエロティシズムで、破っちゃってるわけだから...禁止を。そん時は、すんげえ興奮すると思うんですけど、もう...やった瞬間から、黄金は糞に変わり始めてんの。後はもう糞まみれですよ。バタイユだけに...っていうわけじゃないですけどね。で、今って...「何かがやりたいけどできない」って事が、すごく屈辱的で怨念的に響いちゃう時代だと思うんですね。幼稚っていうかね。「欲しいオモチャがあるのに買ってもらえない」的な...さ。「偉い人が悪い!」的なね。偉い人なんて...悪いに決まってんじゃんね(笑)。
でも、まあ...そういうのと全然違うわけ。「オレ達は誤解や勘違いではなく、はっきりとお互いやりたいと思っている。言葉にはしてないけど。だけど...やらない。何故なら、友だちだから。」っていう時間をね、極端に言うと...楽しむわけ。過ごすっていうか。

 

ワタシが言ってんのは、あれじゃないですよ。ピューリタニズム的な、プラトニック・ラブ崇拝とかね。あるいはマゾヒズムとかね。禁欲的な。恋愛とも準恋愛とも違うの。あの...人間にはね、抑止力ってものが備わってんですよ。これが無いとね、子どもは全員父親を殺しちゃうわけね。「父親に殺意を持つ」...でも殺せない。ここに屈辱や無力感だけじゃない、抑止力の効果を学ぶ...これが健全に発達するってことなの。順当な発達の流れですよ、これがね。そういうとこから始まって、抑止力っていうもののあらゆる力が、あらゆる場所に広がってるわけ。ポケットの中に鉛筆1本あって、飲み屋で絡まれたら、殺人なんて簡単なのよ。ライブ中に「アンプのボリューム最大にしたいな。」って。で、「PAぶっ壊したいな。」って、やるのは簡単なのよ。ツマミをこうやってやるだけだから。でも、やらないわけ。会社に行くと、なんとなく気になる子がいて、テメエには女房子どもが居て...以下同文なのよ。簡単なことなわけ。でも、やらないわけ。

 

世界は抑止力によって、すげえいい感じになってんですよ。そういうものがね、「ヤセ我慢」とか「抑圧」とか、「欲しいオモチャが手に入らない」って感覚で捉えられちゃうと...要するに、抑止力っていう素晴らしい能力...人間はね、頭のおかしくなった猿なわけで、地球から見たらろくでもない生き物なんですけど、抑止力っていうのは、ワタシ...ちょっといいなって思うんです。結構...「人類っちゅうのも捨てたもんじゃねえな。」って思う能力のひとつだと思うんです。江戸時代はこれを...「粋である」って言ったと思うのね。ま、「大人って何ですか?」って、よく聞かれるんですよ。52にもなると。ワタシなんかはもう...聞いてて分かると思いますけど、弟キャラのガキですけどね。だから...ワタシなんかに聞いても、しょうがねえと思うんですけど(笑)。ジャズなんかやってると、よく「大人って何ですか?」って聞かれますね。

 

「抑止力をエレガントに扱えて、楽しめる人」だと思いますよね。大人っていうのは。恋愛は狂おしいですよね。性愛が入ってくると、もっと狂おしくなったり、逆に一気に...冷めちゃったりしますけど。恋愛でも性愛でもない、抑止された状態ってのがね、音楽には...音楽は万能だから、何でも描かれてると思うの。だから、バート・バカラックって...そういう人にはバート・バカラックっていう流れだったんですよね。まあ、とにかくあの日は「レズ疑惑」晴らさないといけなかったんで(笑)。ここら辺の話が全カットになったんですよね。ま、言葉で言ってもややこしいばかりです。音楽でいきましょう、とにかくね。

 

はい、すべての言い出せない人...友情や恋や性欲が、友情か恋か性欲か...わかんなくなってきちゃった、入ってきちゃった...この関係に、どうしよう...動揺してる人、いっぱいいると思うんですよ。で、その人に聞いていただきたいです。この曲を。あの...甘いお酒かなんかを飲んじゃって、それでこの曲を聞いてる、と。そしたら、ちょっと何か...別に何の意味も無いんだけど、自然と身体が踊っちゃった、と。そしたら、その御相手の人ね...お友だちなんだけど、ちょっと気持ちが一線越えたかもしんない...と思われてる相手の方も、なんか...踊ってた。結局、二人で踊っちゃった...1曲。別にそれで...触ったとかじゃなくてですよ。同じ曲で踊っちゃった...そこまで。もうそこまでで充分セクシーで、充実してて、幸せ。これが我々の最もヘルシーな...ピークなんだ...っていうふうに、思えたら...いいですよね。

 

そういう願いを込めて、ま...バカラックは贈っちゃったんで、バカラックは切なめなほうだから、もうちょっと開きめのほうを。まあ、なんとですね。どんな曲かっつったらね、ラスタファリアンですよ。この番組でも何度か御世話になっている、イギリスの「Soul Jazz Records」がコンパイルしましたRASTAFARI「The Dreads Enter Babylon 1955-83」。「dreads」ってのはドレッドヘアーですね。55年から83年の...これはラヴァーズみたいなチャラいやつじゃなくて、ガチのラスタファリアンによる音楽なんですけども。ガチなだけに聞いていただきたい。今言ったような意味で、聞いていただきたいですね。はい、というわけで...アシャンティ・ロイ。その道では有名な方の曲です。「Hail The Words of Jah」...「Jar」っていうのは「ジャー、ラスタファイ!」...ラスタファリアンの挨拶の最初に付く言葉ですね。ワタシも意味が分かんないんですけども。ラスタファリアンの間では、よく使われる言葉です。


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忘れた頃にファッションチェック。パーカーはホリスター、パンツはH&M、スニーカーはアディダス、お疲れさまでした!