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プロフィール

菊地成孔(きくちなるよし)
●生年月日:1963年6月14日生
●出身地:千葉県銚子市
音楽家、文筆家、音楽講師。
85年にプロデビュー、ジャズを基本に音楽活動を展開。
現在は「デートコースペンタゴン・ロイヤルガーデン」、「菊地成孔とペペトルメント・アスカラール」、「菊地成孔ダブ・セクステット」で活動中。
文筆家としては「スペインの宇宙食」、「歌舞伎町のミッドナイトフットボール」、「ユングのサウンドトラック」など。

IPサイマル radiko

菊地さん最新インタビュー。美しい人は傷ついている?というお話。

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★美男子トランペッター、類家心平さんのお話をした際、美しい男性、美しい女性は傷ついているというお話が出ました。そういったエピソードをもしご存知でしたらうかがいたいのですが。

 

 

まああの、エグい話に成るから、誰々がこうで、という話はできませんけれども(笑)、昔話かつ一般論的に言えばですね、ホステスさんが店に10人いるとしますよね。で、明らかに(ルックスに)差があったりするじゃないですか。年齢とかね。最近のキャバクラとかはちゃんとそういう所が近代化されている訳ですけど、ワタシが小さい頃なんかはまだ前近代的だったので、でこぼこがすごかったんですよね。まあ、女の社会っていうんですかね、仲良くやっている様に見せていたり、もう見せる事も諦めちゃっている人達もいましたけれど(笑)

いずれにせよ内実は嫉妬やいろいろな事が渦巻く世界で、まあ嫉妬や足の引っ張り合いなどは、人間社会全体が遍く持っている暗部であり、エネルギー源でもありますから、活発で大いに結構な訳ですが、とにかくまあ、容姿が、様々な解釈や好み、まあ、フェティッシュですね、そういう相対性を越えて、要するに絶対的に綺麗で、つまり、第一接触で人を引き寄せ、欲望させてしまう人っていうのは、やっぱり人生が苛烈にならざるを得ないですよね。金塊みたいなもんで、自分を求めて人々が殺し合うし(笑)、受け止めきれないほどの欲望を、望まずに生み出す訳ですから。問題はそれをどうやって合理化というかうまくやっていくか、つき合っていくかという事で、まあハートが弱かったりすると速攻で壊れてしまう訳ですよね。

そういうのは別にワタシが実家とその周辺の水商売で見てきたっていう事だけじゃなくて、小学生のクラスとかにも普通にあった事だと思うんですけど、最近の若い人って、美形=モテる、うらやましい。不細工=負け組みたいな感じにはっきりしてきている様な気がするんですよ。いろいろな社会的要因によって。

 とまあ、それはともかくワタシは反射的に、綺麗な人見ると、ああこの人大変だなっていう気持ちになりますね。番組でも言いましたけど女優さんとかね、もういっそそれを仕事にするんだと。モデルさんもそうですよね。綺麗だったりスタイルが良かったり、見目麗しいという事を、ビジネスのステージに持って行ってしまう。これは仕事なんだから、という事にするのが一番まあ、合理的かつ構造的な方法で、こっちの事情はワタシ、仕事柄良く知っています。女優さんや女子アナさん、アイドルちゃん等とよく仕事しますし、音楽家でも、まあそういった、所謂、一般的な美醜みたいな事で、とても美しいとされる人もいるじゃないですか。

 そもそもワタシは水商売からそのままショービズに入っちゃったんで、一般の方がどうしているのかあまり知らないんですけれど、想像するだにゾッとするっていうかね、いろいろ大変なんだろうなみんな。って思いますけどね。綺麗な女性の方なんてまずは、クラスの男友達がなんとかっていう前のセッティングで、妹だったり姉だったり母親だったり父親だったり、家族からの目線がもうおかしいっていう所から始まってるんですよね。

 

 ★ああーなるほどね。

 

 だから学校行く前からいろいろと出来あがってんの、苛烈さが(笑)。まあ、美醜というのは非常に難しいですし、欲望というのも非常に難しい。だからこそ面白い訳ですが。ただ、いずれにせよですね、負の出発ね、何らかの要因で、、、、まあ、「バルネラビリティ(負性)」と言いますが、とにかく虐められたと、バルネラビリティには「非常に美しい」というのも含まれますから、話がややこしいんだけど、とにかく、醜いから虐められるのと、美しいから虐められるのは、同じ事だと思いますけれども、そこからそれを克服して行く。という動きには連帯感があります。そもそも黒人への差別がそうですからね。ジャズというのは、被差別の人々がそれを乗り越える力の実体化ですので。

ワタシも、今でこそこんな有様ですけど、昔はたいそう可愛い子でですね(笑)、自分の本(「スペインの宇宙食」)にも書きましたし、そのままNHKが再現ドラマにしたりしましたが(「わたしが子供だったころ」)、子供の頃、近所のストリップ小屋とかキャバレーに出前に行かされてたんですよ、実家が飲食店だったので。あれは多分親がちょっとした売りにしていたと思うんでいまだに親のことうらんでますけどね(笑)。おっさんとかが届けに行くよりも全然モテる訳ですよ。だから、あそこに出前頼むと、小さいかわいいコが天丼運んで来るってんで注文が殺到みたいな事になりまして、まあ大変な可愛がられ方、可愛がられ過ぎちゃって、ちょっとおいでとか言われてチューとかされたり触られたり・・・もしあれが女子だったらもう一種の強姦トラウマみたいなね、一生引きずるよな。というに足りる経験をやまほどしまして(笑)、子供心にこれはちょっとヤバいなと。ヤバいもなにも、まだそんなに言語化されてなかったんですけれど、自分の魅力というのはこのままいくと危険な事になると。放置しておくと道を踏み外す事になるなという直感がはたらいたんですね。利発な子だったんで(笑)。

 そこからは、どんどんグロテスクで気持ち悪くて、何考えてるかわかんない奴っていうキャラに向かってって、とにかく欲情されない様に欲情されない様に持っていったと思うんですよね。無意識的に。それで家にあるものをバカバカ食って90キロ以上になったっていう(笑)。あんなもん、もっとカッコよくしなくてはいけないと思ってたら、食うのやめてたと思うんですよね(笑)。だから、グロテスクである事が自己愛を満たすようになったと思います。「おおー、もっとグロテスクになった!やった!」みたいな(笑)、まあ、特に何もなくても、自然とグロテスクになったと思いますが(笑)。とにかくおかしくなっちゃったんですよね(笑)。ミュージシャンに成って、俳優とかモデルとかいった仕事とは天地の差がありますが、ある程度のルックスの保証は仕事のうちなのだ。という状態に成ってからは非常に楽になりました。変に屈折した事を考えなくて良いんで。

 だから、シンプルな、キメキメの色男だとか、とてつもない美少女だとかは、大変な人生だと思いますよやっぱり。だから「そこそこの人が、がんばってここまで来た」っていうのが努力のしがいもあるし、一番良いんじゃないですかね。認められる形もシンプルじゃないですか。綺麗だと「結局顔だけだろ?」とか言われたりするんですよね。逆に「あいつは不細工だから、その劣等コンプレックスだけで一生懸命練習したんだな」とか、余計なお世話じゃないですか(笑)。だから、故事みたいになっちゃいますけど、何事も中ぐらいというのが一番いいんじゃないですかね。

 

 
★中庸ね・・・

 

 
中肉中背で、ルックス的にも中くらいっていう。でもがんばってものすごい力をつけましたっていうのがまあ、一番今幸せなんじゃないかなっていう気がしてるんで。生まれもっての美少女とかね美青年っていうのは本当に・・・ワタシが知る限り例外なく傷ついてるんで。まあ名前出せませんけど。歩くと5mおきにスカウトが来たり、あんなの頭おかしくなりますよ。コンパ行ったら全員からコクられるし、もう何が何だかわかんなくなっちゃいますよね。で、その前の段階で親がエロい目で風呂入るのを見てたとかね。小さい頃お父さんに体洗ってもらったらやけに強く洗われて痛かったとか、そういうのがトラウマになっておかしくなっちゃう可愛い子とか山ほどいるんで、ワタシ可愛い子は、男女の差無く、反射的に「大変だな」と思っちゃいますね。だからキャバクラといわず、ミュージシャンといわずですけど、綺麗な人には、「うわあ奇麗だね(涎)」といった風にはなれないです。「大変だったでしょう」っていう感じの構えに成ってしまう、そうすると概ね心を許してくれますねコレ。

 

 
★え?それはモテるって事ですか(前に乗り出して)?

 

 
いやいや、モテるんじゃないけど(笑)、その「話わかってくれる」みたいな感じで。だって綺麗な人は「わあー、綺麗だね」って、もうそんな態度見慣れてるから全然歯牙にもかけないですよね。「いやあ大変そうですなあアナタ。ところで食いモンは何が好きですか?鰻なんかどうですか?ワタシは好きですね鰻」っていう感じで行くと、解ってるなコイツ不細工のくせに。ぐらいな感じにはなるんじゃないですかね(笑)。

 

★なんか菊地さんから役に立ちそうな事を・・・初めて聞いた気がしますね。

 

 
はははは。まあ、そんなシンプルな話じゃないんですけどね、結局人それぞれなんで、その人が何を背負って来たか見えれば良いんですよね。美しさっていうのは、ともすればそういう洞察をも吹き飛ばしちゃうんで。

 

★これは私の本当に拙い恋愛経験の中で思った事なんですけれど、ものすごく綺麗でモテる娘っていうのは、どこか性格がゆがんでいたりする例が多くて・・・自分が可愛いという事に全く疑いを持っていないのでびっくりする事が多いですよね。まあそれで悲惨な事になってフられて終わりなんですけど。

 

 いやー、美醜の話は本当にエッセンシャルなんで、「可愛い子=女王体質で性格悪い」みたいに簡単には片付けられないですよ(笑)。まあ、自分のお客様でも、いろんな方が来て、モデルさんみたいな人もいるし、努力して綺麗に装っている方もいるし、まあ大変失礼ながら一般的に言ってね・・・まあそれでも、ワタシこの仕事に就けて本当に良かったなと思うのは、演奏を聴いている時はアドレナリン出ているから一律みなさん綺麗になるんですよ。あれは凄いと思います。

 この人一般的に自分の事不細工だと思っているだろうなーっていう人もいるんですよ。でもその人も演奏を聴いて、そんでコッチの演奏さえ良ければ、凄く良い顔に成るんですね。みんなおなじになるの。まあいわゆるセックスでイッている時はみんな綺麗だっていう法則がありますよね。その可能性があれば大丈夫なんです。一線以上に落ちる事は無いです。希望ですよね。大変な仕事に就けたと思ってます。

 だから、そういう意味ではワタシは美醜に関する一般論的な政治と経済っていうのはよく知らず、特殊な生まれ育ちから得た経験しか無いですけど、やっぱもう綺麗な人は取り扱い注意で。だから一番ホッとするのはね、「おおがんばってやったな」っていう、化粧やワークアウトで体も心も綺麗に整えてね、で服もオシャレにして、だからのびのびとやってるなっていう人が一番こう、ホッとしますね。良い意味でも悪い意味でもヒヤヒヤしちゃうんですよね、女王タイプの、所謂性格悪いとされる人だって、あれ好んで女王様になりたくてなったんじゃなくて、周りに追いつめられて、ならざるを得ないみたいな所がありますからね。犠牲者扱いみたいな目でみちゃう可能性もあるから。それは失礼ですからね。

 

★なんか・・・美しいんだけれども性格のいい人って

 

 いますね。

 

 ★つまりそれはどういう事なんでしょうか?

 

 それは自意識上、美しくないと思ってるんじゃないですか?

 

 ★ああー!なるほど。

 

 やっぱ家族だと思います。そういう事に頓着ないお父さん、お母さんにに育てられ、自分に欲情させる記号がある。なんて夢にも思ってない。普通にしっかり生きて。みたいな人もいっぱいいますよね。ただまあ、フェティッシュもあるから。まず一般論的な美があって、で一方で個人的な美があるじゃないですか。「とんでもなく森三中がクるんだよ」みたいな、いろんな人がいる訳ですよ。フェチは無限だから。とは言え、フェチは無限だからと言って、完全に自由で相対的な世界がある訳ではないですからね、絶対この人綺麗だっていう人はいるんで、そこらへんの差も面白いですよね。絶対値と相対値の。いい男だけど全然その事を意識していない奴とかいますし、とんでもない不細工だけどメチャメチャ自分に魅力がある事をわかっていて自信がある奴もいますよね。もうそうすると、そいつ不細工に見えないですよ。もうなんかカッコいい訳。

 

 

★じゃあ、最後にしょうもない質問ですけれども、ものすごく綺麗で性格が曲がった女の子と、人並みの容姿なんですけれども性格がいい人とどっちが好きですか?本当にしょうもない質問で申し訳ありませんが。

 

 

ああー。まあ、こちらも本当にしょうもない答えで申し訳ないんですけども、どっち好きだとしか言いようがないですね(笑)。

 

 
★はははははは。

 

 どっちもかなりいいんじゃないですか(笑)?まあ、何でもいいんですよね(笑)。どんな人格も噛めば噛むほど味があるので。一歩踏み込むと全員味ありますから。かなり悪質でドス黒いのだって、こっちがタフに受け止めてグルーヴすれば、ヘルシーに持って行ける可能性はあります。疲れるけどね、悪くないですよそれも。

 

★ああーなるほどね。

 

ただ、やっぱ一番癒されるのは、自由に無邪気に頑張ってるっていう人ですよ。それがそこそこ頑張ってるっていうのを超えちゃって、金メダル獲ったりしたら最高ですよね。普通人にして超人という。それが福島千里選手ですよ!ウナコーワの人はワタシのフェティッシュだけれども(笑)。

 

 ★ははははは。

 

 もう最高ですね。癒しがあるうえにパワーももらえるから、もうすごい良いわけ。

 

 
★金メダルで言えばキューちゃん(高橋尚子)とか?ちょっと昔になりますが。

 

いやあの、マラソンの人は全員暗いんで(笑)。

 


★ははははは。

 

 
長距離はダメ(笑)。ダメって言うとアレですが、長距離は耐えるスポーツなんで、耐えるが出ちゃうから。ああいう形でアドレナリン出してかなきゃ走れない競技っていうのはキチガイになるんですよ(笑)。長距離ランナー的な狂気っていうのはちょっとすごいものがありますよね。

 

 ★小出監督との関係とかね。

 

 
まあそれはどうでも良いけれども(笑)、長距離ランナーで名を成した人ってみんな多かれ少なかれキチガイぽいじゃないですか。ちょっと普通じゃないですよね。一滴づつアドレナリンを搾り出してつぎ足していくって相当な事なんで、想像つかないですよね。修行僧的なハイっていうのは、ちょっと怖じ気づきます(笑)。道端ジェシカさんとかもそうですね。ワタシ42.195キロも演奏した事ないですから。だいたい100mですよ1曲(笑)。30分間の演奏でも、ワタシには100mなんです。100mが何度も何度も続くイメージです。短距離的なんですよね。結局。

 

★ 菊地さんがスポーツの事をしゃべっているのはちょっと新鮮だったので(笑)、また次の機会にスポーツの話をうかがいたいと思います。