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番組メールアドレス

プロフィール

菊地成孔(きくちなるよし)
●生年月日:1963年6月14日生
●出身地:千葉県銚子市
音楽家、文筆家、音楽講師。
85年にプロデビュー、ジャズを基本に音楽活動を展開。
現在は「デートコースペンタゴン・ロイヤルガーデン」、「菊地成孔とペペトルメント・アスカラール」、「菊地成孔ダブ・セクステット」で活動中。
文筆家としては「スペインの宇宙食」、「歌舞伎町のミッドナイトフットボール」、「ユングのサウンドトラック」など。

IPサイマル radiko

放送後記 第6回(2011年5月22日)  菊地成孔さん収録を終えて語る

DSC01703.JPGのサムネール画像
菊地さんいわく「鼻血が出る程売れなかった」というSPANK HAPPYの『ANGELIC』を片手にティッシュを鼻の穴につめた状態でインタビュー開始(嘘)。

★今週6回目を迎えて、皆さんからのメールもハガキも増えて、こちらが予想できない方に話がころがったりして、いい感じで番組がグルーヴしてきたような気がしますが。

 そうですね。AM番組っぽいですね。うれしいです(笑)。

 ★今週は4曲目に菊地さんが過去にやっていたバンド(菊地さんと岩澤瞳の二人)SPANK HAPPYの曲『ANGELIC』をかけましたけど、ハガキやメールで「再結成してください」という希望がよく来るんですよ。菊地さんが「鼻血が出る程売れなかった」と言うわりにはとても人気がありますね?

 いやいやいや、売れなかったんでカルトなファンがいるんじゃないですかね。まあ、売れてるバンドでもいるかカルトは(笑)。ま、それこそ好事家の方々という奴で。なのでワタシには年中行事なんですよ。スパンクス(=SPANK HAPPYのこと)の好事家の方というのは、ワタシとこう、すれ違う一瞬があったら死んでも逃さずに、さっと「またスパンクスやって下さい」って言いますから(笑)。そのたんびに「やりません。すみません(笑)」って答えまして、何か向こうさんもそれで嬉しそうというかね。伝えたぞ。的な、満足そうな顔されて(笑)。これはもう60、70になっても続くんじゃないかなと思ってなかば腹をくくっています。

 ★SPANK HAPPY名義で、リミックスをやりましたよね?

 そうですね。相対性理論さんのリミックスの仕事をさせていただいて、最初は当然菊地成孔という名前で始めたんですが、作っている間に「これ、何かSPANK HAPPYみたいになってきちゃったな」って話になってきて、じゃあSPANK HAPPY名義にしようという事に途中から差し替えまして、久しぶりにSPANK HAPPY名義で仕事をしました。

 ★その名義を見て「あ、またやる気だ」って思った方もいらっしゃるかもしれませんね。

 いるかもしれませんね。ていうか、もう、舞い上がっちゃって、すわ、(相対性理論の)やくしまるさんとやるんだ、ぐらいに盛り上がっちゃった方もいらっしゃって、メール来ちゃったりしてるんですよね(笑)。好事家というのは興奮しやすいので。勿論、あんなに売れてる方と出来る訳が無いですし、それ以前に誰ともやらない訳ですが(笑)。スパンクスが一番好きで、スパンクスが聴きたいんだけど、やってないんでしょうがないからJAZZ聴いてるって人も結構います(笑)。まああの、皆さんマナーがよろしいので「今も素敵ですが、私じつはスパンクスから入りました」みたいなね(笑)。「本当はスパンクスの新しいの聴きたいんでしょう?(笑)」とかいうと「ぎく(笑)」とか言ったりして(笑)。

 ★アーティストの方は今やっている事や、これからやろうとしている事が最高で、過去を引っ張り出されて「あの頃が最高だ」って言われたらやっぱり心外ですかね?

 今も良いし、昔も良かったねと思って頂ければ一番良いんですけど、なかなかそうは行かないですよね。ワタシだって誰それは60年代がピークだった。とか、普通に査定している訳です。 ただ、今はメールだのブログだのサイン会だのがあって、直接それをクレームの形で言いにくる人がいて(笑)。これだけは困っちゃいますね。アーテイストに限らず、どんな方であろうと「昔のオマエは輝いてたけど、今ぜんぜんだね。ぜんぜんだけだよ」とか、わざわざ言われたら、あんまり嬉しかないと思うんですよね(笑)。劣化したら見捨てれば良い訳で、また少しして見直したり輝き出したら、何事もなかったかのようにまた好きに成れば良いと思うんですよね。まあ、甘え社会、依存社会だからしょうがないんだけど(笑)。ガシっとしがみついてるんで「最近ダメになった!オマエは変わってしまったー!!」みたいな直訴に至るという(笑)。ユルくいきゃあいいんですけどね。かなり昔ですが、サイン会で「スパンクスやってくださいよおおおお。やってくださいよおおおおおお」みたいな、おしっこ漏らして座り込んじゃう様な感じのヤバい人来ちゃったんで(笑)「あなたが女子高生だった頃、今よりずっと奇麗でしたよ。でも、ワタシその事わざわざあなたに言わなかったじゃないですか?スクール水着着てくれます?また?(笑)」って、勿論、初対面の方ですよ(笑)。言ったの。そしたら「着ますよおおおおおおおお!!スパンクスやってくださいよおおおおおお」て、すがりつかれちゃって(笑)こらもうダメだ。と思いました(笑)。でもしょうがない。それが人間なんですよね。悲しい生き物です。過去にしがみつくっていうのは(笑)ライオンだのカメレオンだのは、「あの頃の俺は、今よりも見事にハエを舌でぺろっと喰ってた」とかいった過去なんか無いんだから。人間ならば「あの頃はよかった」って思わない人いません。ワタシはどっちかと言うと今が一番よくて、毎日楽しいし、明日も楽しみだな。という・・・まあ、ある意味で病気というか(笑)、この歳でそんなんじゃダメつうか、いい加減この歳になったら「あの頃よかったな」の方が成熟してると思うんですが、とにかくワタシは「来月のあのライブが楽しみだ」「来年はこんな事やるんだ」「もう、どんどん日に日に良く成ってるなあオレ。どうしよう。キャー」とかまだ毎晩考えている完全なキチガイなので(笑)、これも50、60になれば自然に止むのかわかんないんですけれど。ですからまあ、逆にですね。昔は良かったねというのも、今さえ否定されなければぜんぜん嫌じゃないですよね。あの、一番痛いのは、アーティスト本人が密かに「あの頃はよかった。今はダメだ」って、自分でも思っていて、それをそのまま他人に言われる事だと思いますよ。アキレス腱ね。ワタシもね、何を隠そう、今は少しは大人になりまして、そこそこ賢くなったんでやらなくなったんですけれど、この業界入ったばかりの頃は先輩ミュージシャンとかに会うじゃないですか。そうしたら「昔のあの作品が大好きです!!」って言うと、すごい嫌がるのみんな(笑)。坂本龍一さんにお会いした時も、出会い頭に鞄の中から『鏡の中の十月』出してサインして下さいって言えないですよね(笑)。それより「いやあ、最近なさっているコンピューターでピアノとノイズでやっているアレ、もう20世紀の古典のひとつに数えても良いですよね」とか言って(笑)。勿論これ100%本気ですけどね。坂本さんに「ダメだった頃」というのは、少なくともワタシには無いので、とても楽です。

★ファンの人としては自分が一番楽しかった頃や、辛かった時に聴いた曲はある意味聖域に属していますよね。

 そうですよね。

 ★「この曲で私救われました」みたいなのはアーティスト本人に言いたくなっちゃいますよね。

 言いたくなっちゃいますよね。それはもう本当にそうですよ。ワタシだって自分の作っている音楽は思春期に聴いた音楽を頭の中で作り直しているだけですから(笑)。拡大再生産ですよ。拡小再生産かもしれないですけれど(笑)。自分のスパイスは加えますけどね。とはいえね。だからもう、過去に執着がある事はどうしようもない事ですから。例えばね、いつも最前列で聴いていたお客様がいて女性の方で、まあふられて辛いと。で、ライブに来なくなったなと思ったら結婚していたと。これよくある話で(笑)(ワタシの音楽が)いらなくなったっていうね。ワタシも「いやあ良かったです。お幸せに」としか言いようがない訳で、人間別に、くじけている時だけ音楽が必要な訳ではないんでしょうけれど、やっぱりキツい時に特に必要とする側面はありますからね。だから、誰かがキツかった時に自分の曲が思い出の1曲になっていたら、それが過去の作品であろうと、現在の作品であろうと未来の作品であろうと、有り難い話であって、「ありがとうございます」としか言いようがないですけどね。ただ先輩に昔の作品を出して褒めるのは気を付けています(笑)。

 ★自分が同じ事をされて複雑な思いをしたから、同じ事をしない様にと?

 ていうか、先輩に怒られたんですね(笑)。「そんなに怒る事ないじゃん!」っていうくらいに(笑)「だーかーらー良いって言ってんじゃん!!」つって(笑)ってこっちが逆ギレするくらい怒られたんで、ダメなんだな、こういう事はって思いました。オレ別に言われても、まあちょっとは腹立つかもしんないけどそこまでキレないぜっていうね、そんな感じになったりなんかして。それで戒めていますね。はい(笑)。

 ★昔を振り返らないで前向き前向きっていうのは性格ですか?

前向きっちゅうと立派な感じですけど、要するに未来志向ですよね。終わっちゃった事は・・・最近やっとね48歳近くになって来て、おおあの頃SPANK HAPPYいい仕事してたなとか、あの段階で「南米のエリザベス・テーラー」(2ndソロアルバム)やばかったなと、まあ、チャラい自己愛ですけどね(笑)。振り返ったりする事はありますけ、きっかけは去年全集(闘争のエチカ)を作って、まとめて聴いたんですよね。その時に「あれ。なかなか俺もいい事やってたんじゃん?」とか思ったりしました初めて。それまではもう終わったら聴かない、終わったら次、次っていう感じだったので、まだ何もやっていないっていう気持ちがいつも強かったんですよ。まだ何もやっていないんだから、これやんなきゃ、これもやんなきゃっていう感じで作って来たんですけれど、ここんとことはクールダウンして「いろいろやったな俺も」っていう感じにちょっとなりましたけどね。まあ、加齢ですよね(笑)。

 リスナーの方でも昔の事をクサクサ悩まず、前向きに生きたいなって思っている人がいるかと思うのですが。

 だから「ポジティブシンキング」とかじゃないんですよ(笑)。なんていうかね、東関東の人間の特徴だと思うんですよね。せっかちというか、おっちょこっちょいというか。逃げ足が速いんですよね。どんどん魚も傷んじゃうし、話古くなっちゃうんで、ラジオのネタ帖も一生懸命書くんですけど、来週まで使えるかなーと思って、使えた試しがないですよね。ラジオを聴く人にとってはいいのかもしれないんですけれど、しゃべるワタシの方がフレッシュ感全くないんで、常に新鮮新鮮っていう感じで。結構地域的なものだと思います。下町から東の人は結構そういった所ありますよね。基本早口で。だから前向きだっていうほどエラいものじゃないですけれど(笑)。ただ、勿論、過去辛い事もいっぱいあって、激痛の失恋した事もあるし、死にかけた事もありますし、病気した事もいっぱいあるんですけれど、思い出すとね、ああいうの全部面白かったなと思うんですよね。あんまり辛く引っかからないですよね。はい。これも病気だと思います(笑)。

 ★「ああー失敗した」ってのたうち回ったりしないんですかね?

 ほとんどないです。まあ、ちょっとは恥ずかしかったり、あーやっちゃったー。とか後悔したりしますけど、だってどうせその事終わってるんだから(笑)。あんまり引きずらないですよね。でもわかんない。年取ったら中年から壮年にかけての感受性が出て来て、すごく人生に悔やんだりとか、クヨクヨする人に変貌したりするのかもしれませんが(笑)。そしたらそれを楽しみます(笑)。今んとこそんな感じですよね。

 ★では、これからも新鮮なネタを用意していただいて楽しくラジオをやって欲しいですね。無理矢理まとめましたけど(笑)。