水曜九時、《銀座コリドー街》で。 #7

東京閾値

「あなたにとってコリドー街ってどんな街ですか?」

そんなこといきなり訊かれたら、なんと答えるでしょうか。
仮に筆者であれば「急に言われても困りますし、そもそもあなた誰ですか怖い怖い怖い」と周章狼狽するのみです。

東京都中央区銀座に位置し丁度新橋から有楽町駅間の高架下に連なる飲食店街を称して「コリドー街」。
銀座高級店の流れと新橋の廉価居酒屋群の汽水域であり、立ち寄り易くも瀟洒な雰囲気を湛えた構えの店が多く、何と申しましょうか、「ホッピー」の消費量が随分と少なそうな街です。

こうした街の雰囲気は自然と男女の出会いの場を醸成、気づけば日本随一の「ナンパスポット」なんて軽佻に称されるようになりました。しかし、とある有識者の話によればコリドー街が賑わうのは金曜21時過ぎがピークであるとのこと。では果たして週の真ん中にコリドー街にいる方はどんな人々なのでしょうか。今回探る閾値はまさにこのあたりにありそうです。

マイクに大きく「TBSラジオ」と書かれたステッカーを着け、胸ポケットに「TBSラジオ」の名刺を忍ばせ、「TBSラジオなのですが」と話しかけていく松重を道ゆく人は「お、YouTuberだ」と囃します。厳密には違うのです。ただし、ひとつ言えることは、街に、活気が戻ってきています。

 

「あなたにとってコリドー街ってどんな街ですか?」

 

最初にお話を伺った女性2人組みもコロナ前はよく来ていたとのこと。2130分頃のインタビューだったのに対し「またこれからちょっとだけ呑み行こうかな」と言っておられたのは象徴的でありました。

またキッチンカーでのBAR営業をされていた店長さんはなんと23歳。

「とりあえず10億くらい稼ぎたい」と仰っていた居酒屋店員さんは21歳。

「お店に用事があったから来た」と仰っていた同僚の女性も20歳前後。

そもそもコロナ禍以前は未成年であった方々が今、銀座コリドー街の経済インフラを担っていらっしゃるのだから、時の流れの速さに三半規管が狂いそうです。

 

「あなたにとってコリドー街ってどんな街ですか?」

ロケの終盤で、お話を伺えたのはともに30代前半の中間管理職のお二人。何の話をしていたか尋ねれば「愚痴一択」らしく「上からはパワハラを受け、下にはパワハラをしてはいけない状況」なのだとか。これはもう、働き方改革が生んだヘルニアです。楽しくお話しているように見えたので話しかけたつもりが、まさか斯様な状態だったとか。

「でも、そんな愚痴を、吸収してくれるのが、コリドー街」

それでも最後は、こちらを慮ってくださったのか、まとめてくださいました。
これもまた中間管理職のなせる技。お疲れ様でございます。

そろりロケも切り上げようと駅に迎えば、なぜか高架下より楽しげなビートが。古い映画・漫画のセリフなどで聞いた「ゴキゲンなナンバー」という単語。今、我々の鼓膜を揺らすこの音楽こそ、まさにそれに違いありません。

そこはコリドー街と並走するように高架下に連なる「裏コリドー」。
その奥に広がる空間、高架に反響する例の「ゴキゲンなナンバー」に身を委ね、踊っている方々いらっしゃいます。

「あなたにとってコリドー街ってどんな街ですか?」

「コリドー街は若者の街で、裏コリドーは大人の街だね」

大体50代から60代の方々がこうして集っていらっしゃる様子。なるほど、大人の街でした。我々が今までいた「表」のコリドー街には仕事の愚痴を零し合う中間管理職の方々、「裏」には楽しくクラブで踊る方々。

これ、裏と表、間違えて着てないか?とおもわずタグの位置を確認してしまいそうになりますが、「コリドー」とはそもそも「回廊」という意味。ぐるり巡って、裏も表も関係ないのです。そんなこと、有識者は言っていませんでしたが。 

文責:洛田二十日(スタッフ)

 

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