増加する「空き家の空き巣」。でも帰るに帰れない。では対策は?

森本毅郎・スタンバイ!

全国に広がる連続強盗事件が大きく報じられ、怖いですが、一方で、誰も住んでいない「空き家に空き巣が入る事件」も、増えているようです。

 

■空き家は狙われやすい

「東京で働いていて、実家のご両親も亡くなり、田舎の家には誰も住んでいない」という方も多いので心配な話ですが、どんな状況なのか?

空き家問題に詳しい、「空き家管理士協会」の代表理事、山下裕二さんに伺いました。

「空き家管理士協会」代表理事 山下裕二さん

「地方にある自分の実家、どんな状態か見てきてほしい」みたいな依頼を受けることがあるんです。

年4回、巡回しているお家なんですけど、その所有者から連絡があって、「どうも空き巣に入られたみたい」と。中の引き出しとか押入れをぜんぶ開けた、物色した散らかり放題。

何か取られたかもわからないですけど、長く空き家にしてたということで、実際の被害はわからないらしいんですけど、「中をすごく荒らされた」っていういことで落ち込んでいましたよね。

やっぱり空き家ってわかると、帰ってくるリスクないじゃないですか、家の人が。なので例えば、夜、侵入したら朝までじっくり中を物色できるとか。

昼間でもね、塀が高いお家なんかだと、外から見えないので、一度入ってしまうともうゆっくり物色できるっていうのが、空き家が被害にあいやすい側面なのかなという風に感じていますね。

山下さんは、香川県を中心に、空き家管理の代行(依頼を受けた物件の、空き家の見回り)をしている。

そんな中で、数年前から増えているのが、「空き家の空き巣」。

先ほどの事例も、香川の話のようですが、久々に帰った実家がメチャクチャにされていたらゾッとします。

ほかにも、「未遂」ではあったそうですが、窓のサッシをこじ開けようとした形跡が見つかったりと、空き家の被害は、実際にあるようです。

<山下さんが見回り中に見つけた、窓枠(サッシ)のゆがみ。バールのようなものでこじ開けようとした跡があります>
<こちらも、同じ物件の別のサッシ。屋内の被害はなかったようですが、狙われていたことにゾッとします>

このような被害は関東圏でも広がっているようで、各地の警察からも注意喚起が出ています。

例えば栃木警察署からは、「昨年の秋以降、栃木市や壬生町において、空き家を狙った窃盗事件が多発しています」と、今年2月いに発信がありました。

また、千葉県旭警察署からは、「(昨年)8月中、旭市内では一般住宅や空き家を狙った空き巣事件が約20件発生しています。犯人は、扉や窓の無施錠箇所を探したり、窓ガラスを割って侵入し、室内の現金や貴金属を盗んでいきます」と、気になる情報も出ています。

こうした情報は、各地の治安情報を発信するサイト「ガッコム安全ナビ」などで無料提供されているので、こうしたアプリを登録し、身を守るのも手段の一つです。

総務省の直近の調査では、空き家は全国に「848万9千戸」あるので、ひと事ではない方も多いはず。

  • 地方自治体や警察署の情報等を元に、事件を解析・分類し、無料で公開しているサービス「ガッコム安全ナビ」
    https://www.gaccom.jp/safety/about/

 

■空き家に鳴り響く、電話のコール音。いますぐ転送サービスを!

では、狙われないためには、どうすればいいのか?

「窓ガラスに防犯フィルムを貼る」、「センサー付きのライトを取り付ける」など、グッズを活用する手も、勿論あります。

ただ、そんな中で、先ほどの山下さんは、空き家の見回り中に、「ちょっと気になることがある」と教えてくれました。

「空き家管理士協会」代表理事 山下裕二さん

最近ちょっと心配なのが、「常に誰も出ない電話」っていうのは、「これは空き家だぞ」と知らしめてることにもなるので、できれば「転送サービス」を(利用)することで、なるべく空き家だと他人に知られないようにした方がいいなじゃないかなと。

僕らも巡回中に家電が鳴ってビックリするケースがあるんですけど、何回も家電が鳴ってる…出るわけにいかないんで、アレですけど。

特に施設とかに入所されるケースは、時間的な余裕がなかったりすると、そこまでなかなか気が回らないこともあるんですけど、固定電話の転送をしてないのは意外と怖いと感じたんで、ぜひ近日中に、転送をおススメをしておきます。

都内などで住んでいるけど留守電にして出ないのと違って、地方で誰も電話に出ないと、「この家は無人だ」、「子供は東京へ出て、親も亡くなっているのでは」と狙われる危険があるそうです。これを悪用して、空き家だと確かめる、悪い人もいるかもしれません。

これについて調べてみると、NTTでは、「ボイスワープ」という転送サービスがあります。

かかってきた電話を、あらかじめ指定した番号へ転送することができて、スマホでも、対応可能。

月額の利用料が数百円かかりますが、固定電話をしばらく解約できない方は、やっておくと良いかもしれません。

また、基本的な対策にはなりますが、庭木の枝の剪定、生垣を少し低めにしておく(外から監視の目が届くぐらい)、ポストに溜まっているチラシを取り除く、そもそも現金や貴重品を置かない、ということも大事なようです。

 

■「向こう三軒両隣」の消滅が地域の隙を作っている

でも、実家から距離が離れていたり、頻繁に帰れない人は、こうした対策は、なかなか難しいと思います。

そんな中、新たな空き家対策を始めた地域が、愛知県瀬戸市にあるということで、話を聞きました。

瀬戸市・效範連区の自治会長、加藤文弥(ふみや)さんに、どんな取り組みをしているのか、伺いました。

 

瀬戸市效範連区・自治会長 加藤文弥さん

「空き家を、空き家に見せない」取り組みをしようと。

一つは、空き家の駐車場を近所の人が使って、いつも車が置いてある状態にすることによって、空き家に見せない。もう一軒は、空き家の庭先を借りまして、家庭菜園を近所の方がやってらっしゃる。

いつも人の手が入っているように見せる、という取り組みです。

元々はこの地区、空き家を狙った泥棒が増えていまして、去年1年間、すごい数だったんですよ。

「地域全体が何かしている」ということが公になれば、そこの地区はなかなか狙われにくいかなぁという気がするわけです。

「向こう三軒両隣」というのは今に始まったことではなくて、昔から言われている話なんですけど、一番根底はそこにあるのかなという気が、自治会の活動をしていますと、しますけどね…。

加藤さんによると、「效範連区(こうはんれんく)」の中で、去年だけで13件、空き家の空き巣被害が報告。

犯人のグループがいくつかあるようで、去年秋に検挙されたものもあるようですが、すぐそこに危機が迫っている実感があります。

そこで、加藤さんの地域では、ご近所付き合いが派生して、「空き家の世話人」という役割を作って、駐車場や庭を使った、「空き家に見せない」取り組みを始めています。

いまは完全ボランティアということですが、今後は、地元警察や役所と連携して広げていきたいとお話していました。

理想通りにいく地域は、限られるかもしれませんが、まずは、「空き家を空き家に見せない」という、いまできる対策から始めるしかなさそうです。 

 

(TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」取材:田中ひとみ)

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