古本ネット販売で障害者を支援する取り組み「ジョブボン」

今回は古本のネット通販を通して障害のある人たちを支援する取り組み「ジョブボン」を紹介します。「ジョブボン」とは仕事を意味する「ジョブ」と書籍の「本」を組み合わせた造語で、非営利型一般社団法人ワーキングバリアフリーがこの取組みを広げています。
ワーキングバリアフリーの代表・島田博之さんは、もともとネット通販サイトAmazonで、「早稲田ブックス」の店名で古本を販売しています。古本販売は仕入れからお客さんの手に届くまで、検品、クリーニング、サイト出品、梱包、発送など細かく手のかかる作業があり、出品数が膨大になって人手が足りず悩んでいる時に障害者就労継続支援施設を運営する知人から、手伝ってみたいと申し出があり、施設利用者の方に作業してもらったところ、丁寧できれいな仕上がりで、お客さんからの評価も高くなったそうです。

そこで古本のネット通販を就労施設に業務委託し、売上げを施設で働く人の賃金にして障害者支援ができないかと考え、4年前にワーキングバリアフリーを立ち上げ、業務委託する施設を全国に拡大していきました。現在、全国に42箇所、ジョブボンの提携先があり、支援額は年間約900万円になる成果を見せています。
「ジョブボン」を支えているのは仕入の仕組みです古本の仕入先でもっとも大きいのは、企業などからの寄付で、NTTドコモなど大手企業も協賛しています。

企業が購入し不要になったビジネス本はネット通販では人気商品で、古本の売上のかなりの部分を支えているそうです。またワーキングバリアフリーは学校や公共施設、企業ビルなどに白いダンボール製のブックポストを置いて「ジョブボン」のために不要になった本を回収しています。このブックポストはすでに130ヶ所近く、設置されているそうです。島田さんはブックポストでの本の回収について、このように話しています。
「近くの中学校とか高校でこのブックポスト置いて本の回収したいってところがあったので、これから行くんですけど、とくに学校では最近「SDGs」に関心が高く、授業でとりあげていて、生徒たちにも気軽にできるSDGs活動ないかなってよく相談もらうんですね。そこでこいいうふうに不要な本を集めてもらうとSDGs活動に関連しますよと話をすると、「是非やってみたい」となりそういうつながりで、「ジョブボン」の取組みに協力していただけるといちばんいいかなって思ってます。」(非営利型一般社団法人ワーキングバリアフリー代表・島田博之さん)

「SDGs」、はご存じの方も多いと思いますが「持続可能な開発目標」の略で、資源や環境を守りながら、よりよい社会をめざす意味の用語です。学校で集められた使い終わった参考書も古本として売れますし、近くに新古書店などがあっても、持ち込むのが面倒、安い値段しかつかない、などの理由で不要な本を捨ててしまう方もいるようなので、捨てるのであればジョブボンに寄付してもらって障害者などの支援に活用させてほしいと島田さんは言っていました。このように「ジョブボン」はSDGsと障害者支援をわかりやすく結びつける有意義な試みだと思います。
今回、さいたま市の就労継続支援施設「朗真堂(ろうまどう)」の利用者で実際に「ジョブボン」の作業をしている方を取材しました。「朗真堂」は8年前、最初に島田さんと一緒にジョブボンを始めた施設です。施設を利用しているのは、病気や障害などのため就職に難しさを感じる人たちですが、この施設では本好きな利用者が自分たちが働きやすい作業をして、充実を得ているようでした。「朗真堂」の利用者で、ジョブボンの作業をしている、発達障害やうつ病の症状のあるというお二人に仕事のやりがいなどについて聞きました。
「自分も本が好きなんですけど、送ってこられた本を見ると、その人となりが見えるわけですね。本棚を見ればその人が分かると。そのへんが如実に現れているのが仕事をやってて面白いなと。我々にとっては在庫している1万冊のうちの1冊でも、お客様にとっては買ったその本1冊が評価の全てになるので、気を抜かないできちんと作業をやっていかないと、と考えています。」
「本はダンボールで送られてくるんですけど、箱を開けた時にドキドキ感があり、どんな本が入っているのか期待したり、それで自分の趣味に合う本だと、「オーッ、これは!」と嬉しくなったりします。将来的なことですが、自分は本に限らず、ネットビジネスやECビジネスに興味があります。始めるだけなら今は手軽なので、やってみたいと思ってます。経営していけるかは大変だと思いますが。」
二人は1日およそ4時間作業して、100冊程度本の検品やクリーニングをこなしていくということでした。本好きの方はご存知と思いますが、ダンボール詰めするとかなり重くなるので、力のいる仕事だし古本なので汚れがあるとクリーニングが大変と、苦労もあるようですが、こうした作業を覚えることで、ネット販売で独立をめざしたり、就職につながればいいと島田さんは語っていました。
島田さんに、リスナーのみなさんがジョブボンに協力したい場合どうすればいいかを聞きました。
「まだまだポストを置いてあるところは限定的なので、「ジョブボン」のホームページを見ていただけると、寄付したい本を宅配便などで送ってもらうようご案内できるのでもし不要だけれども捨てるのは忍びないという本があったら、是非お問い合わせいただけるとありがたいです。(非営利型一般社団法人ワーキングバリアフリー代表・島田博之さん)」
12月になり、そろそろ大掃除が気になる季節です。部屋の整理で不要な本が出たという方は古本の寄付で病気や障害のある人たちの支援ができる「ジョブボン」を利用してみるものいいと思います。また、島田さんは「ジョブボン」に読み終わった本を寄付する企業、ブックポストを置いてくれる施設なども募集しているので、興味ある方はお問い合わせください。
「ジョブボン」ホームページ https://www.jobbon.net/
問い合わせページ https://www.jobbon.net/inquiry
朗真堂ホームページ https://welfare.romado.net/
(担当・フリーライター 藤木TDC)