「100個の内99個が誉め言葉でも、1個の誹謗中傷で気持ちがグロテスクになる」FC町田ゼルビア・鄭大世さんとSNSの誹謗中傷について考える

12月3日(土)の井上貴博 土曜日の「あ」。
ゲストコーナー「あ」の人は…サッカーJ2・FC町田ゼルビアの鄭大世さん。

井上「ワールドカップが大いに盛り上がってますね?!」
鄭大世「もうね、眠れないです。睡眠不足です…」
井上「嬉しい睡眠不足で嬉しい悲鳴ですよね?」
鄭大世「まあ楽しませてもらってます」
井上「日本代表がグループリーグ1位突破しましたがこれは予想してました?」
鄭大世「予想してたって言ったらそれはそれで何かいやらしいんで、してないって言っときます!」
井上「でも本当に喋りの上手なので、解説もとてもわかりやすいです」
鄭大世「ありがとうございます。それの反響があってすごいびっくりしました!」
井上「私ド素人で…分かりやすいなと思って拝見してるんすけど、解説の難しさみたいなところは感じていらっしゃいますか?」
鄭大世「僕は本当にただただやって楽しいですよね。難しいさで言ったら試合前のデータを頭に叩き込まなきゃいけないのと、いろんな情報をアンテナ張って調べなきゃいけないっていうのは大変だけど、難しさではないです。それも込みで全部楽しいです!」
井上「解説者、鄭大世さんから見た今の日本代表。今大会のこれまでの感想はいかがですか?」
鄭大世「2戦目のコスタリカ戦でメンバーをガラッと変えたのは僕はびっくりしましたね。サッカーって基本的には勝ってる時ってメンバー変えないですよ。そういう事実が一つあるのと、あとは連戦で疲れるって言うけど中3日は疲れないんですよ」
井上「そうなんですか?!」
鄭大世「しかも勝敗が左右するならなおさら。勝った試合の後の中3日あれば十分回復できるんすよ。選手ベースで考えたらみんなそれは共通してるところで誰もがわかってることです。だから勝ってるのにメンバー変えられて負けたら、勝った時に出てる選手って良い気分じゃないじゃないですか?選手はみんなエゴがあって自分を高める。そのエゴで自分を高めるからこそ代表選手になってるわけで、そんな選手たちの集まりのところで、そういう姿は見せないで、顔にも出さないし周りにもみんな偉いから出さないけど…でも心の中では全試合出たいと思ってるのがみんな同じ気持ち」
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井上「へぇ」
鄭大世「それをみんな我慢して、みんなで一緒に喜ぶ姿は美しいじゃないですか?それを美しく見えるのはその美しさという光の影にその悔しさをひた隠しにすることなんですよ。だからこそあの姿は美しいんですよ。だってみんな悔しいですよ、試合に出てない選手は心の中では。っていう意味で、2戦目のコスタリカの試合でああいうメンバーしたのは僕はびっくりしました」
井上「なるほど。ドイツ戦、スペイン戦に勝利した森保監督の凄さっていうのはどうですか?」
鄭大世「結果論だと思うんですけど、誰がドイツ戦の前半を見て後半勝てると思いましたかね?。森保さんも予想できてましたかね?」
井上「へえ」
鄭大世「その前例があったからスペイン戦でも同じようにしたんですよね。前半1失点まではOKみたいな感じで、もうとりあえず守って守って、後半活きのいい選手を投入して、巻き返すみたいな戦術をとったけど、それがうまくいきましたからね。だから、コスタリカ戦で負けてその後も微妙で、グループリーグ敗退してたら
全部森保さんが責任を取らなきゃいけないし、でも今回こうやってグループリーグを突破したってことは森保さんは評価される。結果論はもうその通りなんです。だから結果を出したからもう誰も文句言えないですよ」
井上「確かに結果が全てを変えるし、現在が過去、ひっくり返しますもんね。これがプロの世界。うわーって大変だと思いますよ」
その後、メールテーマの『SNSの誹謗中傷』に話は変わっていきます。
ここからSNSトラブルに詳しいモノリス弁護士事務所の河瀬弁護士にも参加して頂きました。
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井上「まず誹謗中傷の線引きの問題なんすけど、ここは端的に言うとどういうことになりますか?」
河瀬「スポーツ選手って今まさに問題になっている通り、この誹謗中傷っていう被害が特に最近増えている。一般的に言う悪口みたいなものと、法律的にも許されない誹謗中傷っていうところの線引きを一言で完全簡単に言い切れば難しいんですけど、いくつかのパターンがあって、どこかのパターンに該当すると法律的にも違法になってしまうっていう構造かなと思います」
井上「そのパターンについても後ほど伺っていきますが、今回のテーマ『SNSでの誹謗中傷がなくならないのはなぜだと思いますか?』ワールドカップ今行われてますが、日本代表に対する一言、戦犯とか本当にちょっと読み上げたくないようなものが多くなっているということで、鄭大世さんはどんなことを感じますか?」
鄭大世「昔から僕も考えてるんですけど結局人間っていうのが人を批判することで自分を守るっていう本能があってですね、自分の生存本能のためにネガティブに反応するっていう側面があるからそれは絶対になくなることはないと思うんですよ」
井上「うん」
鄭大世「もし今SNSがなくなったんであれば、また違う方法を探して、自分のフラストレーションを人にぶつけるっていう方法とるんですよ。それが今たまたまツールがSNSってだけで、なくなったとしたら違う方法があるんで、それをなくすっていうのは正直難しいと思いますね」
井上「人間の生存本能というか、人類として生き残る上での本能みたいなところもあるんでしょうし」
鄭大世「だから自分が苦しい。そしてその自分の苦しさを自分の中で消化できないからフラストレーションを人にぶつけることによってスッキリして自分を守ってるっていうことなんで。その場がSNSってことですね」
井上「鄭大世さん、具体的に言える範囲で、どんな誹謗中傷がありましたか?」
鄭大世「僕の場合は在日なんで、すごい心無いことを言うことは昔から結構あって…でも結局のところは見なきゃいいっていうのが究極のところで。でもまたそれもやっぱり人間の本能で、自己顕示欲とかもあるから人からどう思われてるかっていうのを気になっちゃうから僕もエゴサもするんすけど」
井上「はい」
鄭大世「でもやっぱり見てて、100のうち99は褒め言葉なんだけど、1個誹謗中傷が入ることでめちゃくちゃグロテスクな気分になるんですよ。でもそれで返信したらそのネガティブが膨らんでいくんですよ。相手は喜んじゃうし。だからもうそのコメント自体を通報して削除して無かったことにします。しばらく心には残るけど、尾は引かないですね」
井上「無かったことにする」
鄭大世「コメントでケンカしてもあれなんで…僕の場合はそれを晒して『こういうことを言っていってる人います。みんなどう思いますか』ってみんなに言ってもらうようにします」
河瀬「度を超えた誹謗中傷に関して、後から警察に相談するとか弁護士に相談するみたいなことをする場合にはコメントを保存しておくっていうのは重要ではあるんですけど、実際問題として消してしまえばある程度問題解決されるっていうところはあります。自分でコメントを消したりとか他の人に拡散されないようにすることができるっていう場合にはそうしてしまった方が手っ取り早いっていうのは絶対的にありますね」
井上「へぇ」
河瀬「いわゆる割れ窓理論みたいな話に近いと思うんです。綺麗なガラスに対して最初にガラスを割る人間ってやっぱり結構ハードルが高い。ただある程度もう既に
割れている窓に対してもう1個石を投げる心理的ハードルが非常に下がってしまうっていうのはやっぱり人間の心理として絶対にあるのかなとは思いますね」
田中「自分の正義感に基づいて悪口を書き込んでいるから相手を傷つけている自覚もないままにそういう発信してる方も多そうですよね」
井上「そうですよね。トッププロのアスリートとしてだったら活動してるんだったらこのくらい言われて当然だろう。別にこれは批判の範囲内ですよって投稿者は思ってるかもしれないし」
田中「ただそれで本当に自ら命を絶つような事例もあったりするので、本当に許せない行為ではあるんですけれど」
井上「人間ってそんなに誰しも強くないですからね…鄭大世さん、例えばサッカー選手として負けたら誹謗中傷がくる、勝ったら持ち上げられる、こういう時のメンタリティってどう保ってるんですか?」
鄭大世「日本代表に比べたらチンケなもんだったんですけど、例えば試合で調子いい時は見るけど、調子悪かった時はもう携帯閉じますよね」
井上「もう全く見ない?」
鄭大世「全く見ないです」
田中「もう自己防衛でそう手段を見つけたっていうことですよね」
鄭大世「はい。傷つきやすいんで。でもやっぱり僕が思うのは、書き込んでる人ってその罪の意識がないじゃないですか?いじめっ子って大人になったら忘れてる、でもいじめられっ子って一生忘れない。それって心にそれだけ傷を負ってて。だから誹謗中傷をこうやってコメントを見た他の人は酷いなって思うけど、コメントしてる本人は気づいてないから。だから結局それが連なって大きい声になって…本人はすごくショックを受けて自ら命を絶つみたいな事例も起きたりするけど、でもそういう事例が起きたとしてもコメントした人たちが自分のせいでこの人は亡くなったんだとは絶対思わないと思うんです。そこが問題なんですよね」
田中「メッセージも沢山届いていて…『SNSは都合のいい情報を選択してみることができる狭い空間。もっと世の中の様々な意見を客観的に受け入れる人が増えれば誹謗中傷は減るのでは?』という意見がきています」
井上「これ難しいもので狭い世界だと持っていてもその世界が全てだと思えてしますってありませんか?」
鄭大世「でも、ガンジーも言うけど、人は変えられないけど自分が変えられる。人を変えるためには自分が変わることって言うじゃないですか?だから例えばこういう議論をしてても、他人がこういう風にすれば良いのになっていうのは、それは他人を変えようとしてることであって、自分を変えようとしたらそれに全く気にしないっていうのが自分の課題であって、それを皆ができたらいいと思うんすけど、僕は自分がそうしないように気をつけてるし誹謗中傷に傷つかないような防衛手段も取ってるし、だから他の芸能人がもしそれで辛いと思うんだったら自分たちもそうやって自己防衛の方法を知って、工夫してやれることやるべきことをやることがその人の課題なんだかなと思いますけどね」
井上「どうしても人を変えようとしてしまうので、変えられないものにストレスとか感じてより悪い方向にいってしまうということですか」
鄭大世「はい、そうです」
河瀬「SNS空間上の誹謗中傷のちょっと特殊なポイントとして、SNSの前の段階から、例えば匿名掲示板ですとか、いわゆるインターネット上で誰か匿名の人間が好きに書ける空間っていうのはあったんですけど、それって別にわざわざそこに見に行かなければ見えないもので、鄭大世さんがさっきおっしゃってたみたいに別になんか調子が悪かった日にわざわざ匿名掲示板の自分のチームのスレッドにアクセスしなければいいんですね。話は結構シンプルというか。ただやっぱりTwitterとかになってくるとそもそも選手の方自身がアカウントを開設してるケースも最近多いですし、わざわざ見に来る人間みたいなものも発生するんですよね。そこら辺で何かちょっとやっぱりSNS以降で世界が変わったのかなっていうのはあります」
鄭大世「だから本当に重複するけど、見ないようにする。これまた人間の本能で、自分がうまくいってない時もまた本能働いて、自分の自己嫌悪が生まれてきたら、人から叱られることを人間で望むんですよね。ネガティブを探し出すんですよ。自分の中でネガティブにアンテナを張り出してそういうことを言われて傷つく自分を
待ってるから誹謗中傷を待ってる自分もいるんですよ」
井上「へぇ」
鄭大世「すごい複雑な話なんですけど。自分が逆にそれをアンテナを張っててそういう悪いことを言う人のネガティブで可哀想な私、コンプレックスのある私っていうのを証明するっていうのがあるんですよ、人間としてね。自覚はないんだけど実はネガティブを自分から呼び寄せてるっていうのもあるから。だからこれあくまで理想論なんですけどやっぱりうまくいってない時は見なきゃいいって話でうまくいってる時は称賛を聞けばいい。うまくSNSを活用すれば良いだけだと思います」
井上「他にもメッセージ届いています。『そもそも誹謗中傷する人は自分に満足していない状態で誰かに当たることで発散させているのだと思います。それを文字化してSNSまで発信する前にストッパーになるような環境がないから誹謗中傷はなくならない。若い世代については学校の授業でSNSについて取り上げたりなどはされているのでしょうか』でも鄭大世さん、こうやってメディアで取り上げることで、やはりこういうメッセージいただける方は、誹謗中傷してない側の人なので」
鄭大世「だから、そこの意義がメディアにありますよね。やっぱりこうやって議論をしてるっていうことをみんなに訴えかけることによってみんなが自分がやってるこのコメントっていうのは誹謗中傷で傷ついてるんだっていう自覚を促すっていうすごく意義のある、今このラジオ番組でもあるし、いろんなメディアがそういうのを発信し続けることっていうのがもの凄く大事だと思います」
井上「発信し続けなければいけないと私自身も思ってるんですけど、何かすればするほどテレビの世界でなんか綺麗事言ってるなって、どんどん溝が深まっていくリスクもあるんじゃないかなとどっかで思ってるんです。誹謗中傷してる人と」
鄭大世「だから本当にこれ人の価値観はそれぞれなんで、誹謗中傷する人っていうのは絶対マジョリティーになるかマイノリティになるのかっていうところで分かれるところで、結局そのマジョリティーの率をどんどん下げていくことっていうのは、やってる方は暖簾に腕押しっていうか、糠に釘打ちじゃないけど…だって終わらないんでこの議論って、なくなることは絶対ない。なのでその反応とかが分かりづらいからやってて意味あるのかな?逆に溝が深まってるかな?っていうネガティブに考えてしまうってのはこれまた人間の本能で。なので、これは絶対に意義のあることっていうことを自分を信じて続けてほしいなって僕はここで主張したいです」
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