「風呂なし物件」に「狭小物件」、人気のワケ

お部屋探しでは、駅から近い「駅チカ」や、「バス・トイレ別」、「家賃」や「築年数」など、条件をつけて探すと思いますが、この時代にあえて、「風呂なし物件」を選ぶ若者がいるようです。
■「風呂なし物件」銭湯とセットで紹介
風呂なし物件の専門サイト「東京銭湯ふ動産」の、鹿島奈津子さんに伺いました。
「東京銭湯ふ動産」運営者 鹿島奈津子さん
古さは諦めてもらうしかないんですけど、やっぱりすごい良い立地に、すごく安く住めて。
昔の「風呂なし物件」はお金がないからとか、いわゆる貧乏学生が住むとか、そういうイメージだったと思うんですけど、ミニマムに暮らしたい、できる限り自分の持ち物を減らしてすっきり暮らしたいっていう方たちとかの究極系として「お風呂もいらない」。
サイト自体には、「この物件の近くには、この銭湯は徒歩何分ですよ」とかっていうのも掲載していたり、あと半分ぐらいは、皆さん、フィットネスが24時間営業してるところが最近は増えたので、今日はフィットネスのシャワーだけでいいやとかっていうふうに、外でまかなってる感じですかね。
「東京銭湯ふ動産」は、おもに東京23区の「風呂なし物件」を扱うサイトです。
「風呂なし」と聞くと、古い、汚いといったイメージがある方もいるかもしれませんが、実際、昭和40~50年代に建てられた物件が多い一方、都心部でも破格の家賃です。
例えば、杉並区・高円寺駅から徒歩5分の物件だと、4・5畳で、家賃3万3千円。新宿区・高田馬場駅から徒歩9分、1DK・6畳の物件で、家賃3万5千円。お風呂があると、6~7万円はするので、立地を考えれば、考えられない安さです。
ただし、銭湯に行くとなれば、もちろん入浴料がかかります。
1回500円で30日通うと、1万5千円。ただ、それを差し引いても、水道代や、風呂掃除の手間を考えると、「風呂なし物件」の方が割安に感じられるということで、あえてこうした物件を選ぶ方が出てきているということです。
■安くてアクセスも良い、狭小物件が人気
銭湯が閉まる前に帰らなければいけないので、飲み会のとき大変そうですが、こうした「最低限のモノさえあればいい」という価値観の変化は、物件の広さにも表れているようです。
続いては、株式会社スピリタスの仲摩 恵佑さんのお話です。
株式会社スピリタス・代表 仲摩 恵佑さん
僕らが取り扱っている物件は、本当にサイズがちっちゃくてですね、あの3畳+ロフトの物件を取り扱ってます。
間取りがですね、ワンルームのタイプになってまして、ミニキッチンとトイレと、あとお風呂ではなくて、シャワールーム。
大体10万円ぐらいするエリアで、7万円ですとか、それぐらいで作らせていただいていると。
一番は立地だと思いますね。職場に近かったりですとか、通勤・通学にかける時間がもったいないですとか、家賃、少しでも節約したいと。
都心のいい場所に住んで時間だとか、お金だとかを節約して、もっと意味のあることに使おうと、そういう方に借りていただいてるという形です。
.png)
こちらは「QUQURI(ククリ)」というシリーズのアパートで、「3畳+ロフト」の狭小物件です。
トイレとシャワールームはありますが、洗面台、浴槽、収納はなく、一般的なワンルームのほぼ半分の面積。
ただ、狭い分、相場に比べて家賃が安く、平均で6万5千円~6千円。恵比寿、中目黒、新宿などの人気エリアにありますが、通常より数万円ほど安く、全1500部屋はほとんど埋まっているそうです。
■一時的な住まいとして割り切り
代表の仲摩さん自身が、「狭くてもいいから、会社から近くて安くて綺麗な物件に住みたい!」という実体験から生まれた物件で、やはり、20~30代の社会人や学生に好評のようですが、今回、実際に中央線沿線の人気エリアにある物件に伺い、住民の方に住み心地を聞いてきました。
今年8月から住み始めた、30代・女性のお話です。
30代・女性
来る前は、地元の群馬県に住んでました。
転職したくて、あと東京に憧れてて、駅近とか、あと家賃予算内とか、築浅っていう部分で絞っていったら、この物件たどり着いたんですけど。
内見来たら、まぁ狭かったんですけど、寝るだけだし良いか、っていうノリで。
キッチンが狭いので全然自炊とかしてなくて、外食とか買って食べるばっかりなんですけど、こじんまりと食べて、ロフトがついてるので、寝るときはロフトに行って寝てます。
来たいっていう友達には、写真撮って「こういう感じだよ」って、完結してます。
正座するぐらいしかほんとできないので、足も伸ばせないぐらいの狭さなので…。
でも2年ぐらいは住もうかなって思ってます。いや~2年後はもうちょっと広いところに引っ越そうかなと思います。


こちらのお宅は、駅から徒歩10分で、管理費込みで7万円。
満員電車に乗るのがイヤで、会社の徒歩圏内に住んでいます。
実際にお邪魔すると、確かに狭い!手を伸ばせばなんでも届くところにありますが、きれいで、天井の高さが4メートルぐらいあるので、思ったより圧迫感はありませんでした。
なるべくモノを持たない生活を心掛けているそうですが、欲しかった空気清浄機も、「場所をとるから」という理由で我慢しているそうです。
その割に40インチのテレビが壁一面にあって、近すぎて見づらいだろうなと思いましたが、この物件には、この方のように「一時期の生活」と割り切って暮らしている方がほとんどのようです。
3畳を、狭いとみるか、便利とみるか。
「モノを持たない価値観の変化」という見方と同時に、経済的に余裕がなくなってきている若者が増えていることにも、目を向けなければいけないかもしれません。
(TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」取材:田中ひとみ)