【補足】宇多丸『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』を語る【映画評書き起こし 2022.11.18放送】

アフター6ジャンクション

【2022年11月18日放送『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』評の補足】

(映画時評コーナー前、番組オープニング・ゾーンにて)

宇多丸:そんな中、まずは(番組金曜パートナー)山本(匠晃)さん、『ブラックパンサー』をご覧になって、いかがでした?

山本:やっぱり、皆さんそうかもしれませんけども。チャドウィック・ボーズマンがいない状態での……。

宇多丸:主人公でした。ブラックパンサー、ティ・チャラでした。

山本:その現実と作品っていうのがちょっと繋がるというか、境がないような思いで見るから……。

宇多丸:そうですね。完全に重なり合っていたというか。

山本:なので、なんかその覚悟での作品づくり、目の前の上映なんだなっていう思いと、なんか本当に感情移入がすごく強くなってというか。この映画体験ってあんまりないなというか。だからこそ今、スクリーンで見るべき時間だったなと、まず率直に思いました。感動しましたし。

宇多丸:まさに。後ほどの評でも言いますけども。こんな作りのブロックバスター超大作……もうファミリーも、どんな層も観る、そもそもは万人向けに作られていると言われているブロックバスター超大作で、この、全面的な追悼。その(本来の主役の)不在……完全に不在っていう作りは、なかなか例がないので。その意味でも本当に記念碑的なというかね、特別な作品ですし。

味わいもね、特に映画が終わると……この終わり際の味わい。ドカジャーン!じゃない、言っちゃえばすごく「小さな」話っていうか。だから本当にライアン・クーグラーが、インディペンデント作家としてね、『フルートベール駅で』っていう作品から出発していますけども、ライアン・クーグラーが、本当に自分らしさみたいなところに完全に立ち返って……っていうか。

まあ彼のフィルモグラフィーは一貫して……まだ4作目なんですけど。4作目でこんなのを撮っちゃっているんだけど。あのね、私の「ライアン・クーグラー史観」からすると(笑)、4作目でこれ、っていうのがまたね、グッとくるというか。本当に劇中のシュリの立場は、もう彼の立場でもあるんですよね。完全にライアン・クーグラー自身の姿。ライアン・クーグラーは、特に『クリード』以降はもう、主人公はほぼ、監督としての彼の立場、って言っても過言じゃないっていうか。そういう……まあ、僕はファンなんでね。そういう継続して観る面白さがありますけどね。

はい。まあまあ、そんな話……山本ウォッチメンもね、(この後の時評コーナー)直前に聞いたりしますけど。ちょっとね、ムービーウォッチメンをこの後にやりますけど、まあ、どうせ入りきらないだろうというところをね、先に言っておいてもいいかなと思うんですけど。

私の映画評の特徴として、他の映画評論家の方のそれと違うのは、やっぱり実際にお金を払って、リアルタイムの映画館に行ってますんで。試写とかじゃないんで。だから、実際の映画館の上映状況がどうだったか……で、特に今回みたいに3Dがあったりとか、上映方式がいろいろある。IMAXもありますよ、なにもありますよって……で、IMAXの中でも今や、いろいろある、ということになっておりますんでね。なので、いろんな上映方式を見比べたりとかっていうところを、いちいち言っていくというか。それが私の映画時評の特徴かと思うんで、ちょっとその話をしていいですか? まず、山本さんはどこでご覧になったんですか?

山本:私はTOHOシネマズ六本木で。

宇多丸:2D字幕というやつですね?

山本:2D字幕です。

宇多丸:まず先に言っておきますけど、前にも言いましたけど。ちょっと疑惑がね、TOHOの六本木は特に……要するに古いシネコンはいちいち、そのカメラ(上映機)のあれとかが交換できないのもあって、どうもその上映ライトが、暗めなんじゃないか?っていう疑惑があって。『THE BATMAN-ザ・バットマン-』という作品、かなり全体が暗めの作品で。正直私、六本木で最初観た時は、ワケわかんないっていう感じだったんですね。で、今回も特にその海の種族・タロカン族というのは、基本的に特に最初の方は、もう暗い夜の海で。で、その、人工的なライトがない状態、月明かりぐらいしかない状態で登場するので。かなり暗いわけなんですね。もちろん、後ほど言うIMAXとかであれば、それはバシッと表現されておりますが。ドルビーシネマなんかでもいいでしょう。(しかし六本木の2D字幕版は)ちょっと正直、暗かったんじゃないですか?

山本:あの、そうなんです。見づらい……見えないことは決してないんですよ。もちろんね。ただね、「あれ? 結構暗めにくるな」っていう。

宇多丸:もちろん、そういう場面ではあるんです。そのしかるべき上映のあれで観ると、ちゃんと暗がりは効果的だし、見える、ということなので。ちょっと私、今回申し訳ございません。そういう2D字幕とかでちょっと見比べられなくて。時間がなくて。そもそも上映時間が長くて、なかなか行けなくてですね。TOHOシネマズ日比谷のIMAX。こちら、最近IMAXレーザーが導入されまして。IMAXレーザー3D字幕。そして皆さんご存知、みんな大好きグランドシネマサンシャイン池袋のIMAXレーザーGTで、フルサイズ3D字幕版を観てまいりました。

ちなみに、このどちらにもついていました……たぶんIMAXについてるのか、それとも『ブラックパンサー』の上映館全てでついているのか、山本さんもどうだったのかを聞きたいんですけども、レクサスのCMって、流れました?

山本:レクサスのCM?

宇多丸:あの、ドーラ・ミラージュ版の……あ、見れば絶対に覚えているんで、じゃあ(2D字幕版上映前には)流れなかったんだね。IMAXのその二回の時は、どっちも流れたんですよ。ドーラ・ミラージュ、要するにワカンダの王様の親衛隊ですね。あの女性たちの……もう、僕は大ファンなんですけど、オコエ率いるドーラ・ミラージュ版の、レクサスCMです。

山本:ええっ?

宇多丸:レクサスにドーラ・ミラージュたちが乗っていて。で、追っ手を非常に暴力的に巻く、という(笑)。「演出です」って出てましたけど、なかなか車のCMでは見られないような……そういうのが観られるんで。これも嬉しかったですね。

山本:ええっ! そうなんですか?

宇多丸:そうなんです。で、その二つの方式……どちらにしてもIMAX 3Dなんだけども。まずその、TOHOシネマズの新しく入ったIMAXレーザーの実力もちょっと見たかったんで、それで見比べてきたんですけども。で、実はこれ、同じ「IMAXレーザー」とついていながら、眼鏡の方式が違ってました。グランドシネマサンシャイン池袋の方は、いわゆるシャッター方式。終わったら返すやつ。要するに電子的にピピピピピッてやって立体に見せる、というやつで。

以前、3Dが最初『アバター』で流行った時に出回ってた、X-panDという方式がございますが、あのX-panDほど重くはない。でも、方式としては同じです。X-panDほど重くはないけど、やはりちょっとレンズの画面面積が、狭いんですね。ちょっと小さい。で、僕は目が悪くて眼鏡をして観るんで、すると眼鏡 on 3D眼鏡で観ることになるわけで。ちょっとね、これIMAXレーザーGT……もちろんグランドシネマサンシャイン池袋、めちゃくちゃデカいんですよ。ビル5階建て分とかの、めちゃくちゃデカい、最大級のスクリーンのデカさなんですが。ちょっとその大画面がもったいない……そもそもその(レンズ自体が狭めな)眼鏡で遮られているんで、ちょっともったいない感じがありましたね。

ちなみにこの『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』、本作のアスペクト比、スクリーンの比率ですね、それは2.39対1のシネマスコープサイズ……これ、いわゆるその大作、スペクタクル映画では普通ですね。2.39対1のシネマスコープと、場面によって1.90対1のIMAX画角。主に今回は、対立相手であるタロカン族周りの、要するにいわゆる「水回り」と言いましょうか(笑)、水回りの描写に主にこのIMAXが用いられていました。なので、これは『NOPE/ノープ』の時のようにですね、IMAXレーザーGTじゃないと、完全版……要するに1.42なんとかっていう、より正方形に近いようなやつ、それじゃないと全部の画は見られません、という作りじゃないです。なので、グランドシネマサンシャインでも、ちょっと下に黒みが残ってる状態ですね。IMAX(の場面)になっても。なので、まあ(通常の)IMAXレーザーでも問題はない、ということです。

その意味でですね、僕が観たTOHOシネマズ日比谷の、最近導入されたIMAXレーザー……ずっとIMAXはあったんですけど、レーザーになって、4Kになってね。非常に見やすくなりましたけども。スクリーンサイズが、ここはちょっとそもそも、IMAXというにはちょっと小さめなんですね。なので私、すいませんね、皮肉っぽく言ってすいません、「IMAXレーザーmini」と個人的には呼ばせていただいておりますが。

でも、まずここはね、3D眼鏡が、いわゆる偏光型。要するに電気的じゃないやつで。持って帰っていいやつですね。品川のIMAXとかと同じですけれども。で、その品川のIMAXと同じなのか、近いのかはわかりませんけど、とにかくあそこと同じような、わりと大きめの面積のレンズで、軽いし、という感じで。正直、私のような眼鏡組は、明らかにこの方が嬉しいし、もちろんIMAXレーザーの4K画面の美しさも申し分なかった。まあminiとか言ってますけど、もちろんある程度ちゃんと大きい画面なんで。なのでTOHOシネマズ日比谷も正直、眼鏡派として今回はちょっと、俺は個人的にはこっちの方が観やすかったな、っていうところはありました。

ただですね、これはTOHOさんに苦言ですね。すいませんね。直前の予告、ずっとやってるじゃないですか。で、あるところから当然、暗くなるんですけども。まず、TOHOの予告って、たぶんTOHOパッケージみたいな感じで、もう決まったパッケージをある期間ずっと流す、って決まってるんだと思うんですけど。たとえば先週のあの『線は、僕を描く』。『線は、僕を描く』を観に行ってるのに……(その上映直前に)『線は、僕を描く』の予告を見せられるんですよ? まずさ、変な気持ちになるだけじゃなくて、なんか予告ってほら、本編とテンション違ったりするじゃん? なんかさ、ちょっとノイズになるのよ。だからこれ、やめてくんねえかな?っていうのと。

あと、その全体の予告。いわゆる額縁状態。どんな大作であろうと(周囲に)黒みがついちゃっていて(画面が狭く見えるので)、それもあんまりよくない。まあ、それは置いておいて……それはいいんだけども、今回の場合、直前に『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』、『アバター』の続編の3D予告が始まったんです。

で、IMAXレーザーで『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』、当然、見るならこの状態で見たいから。要するに、その実力が見られるせっかくのチャンスだし。要するに見せる側、興行側としても、「『アバター』ってやっぱりすごいでしょう?」っていう風に言う、チャンスじゃないですか。ジェームズ・キャメロンだったら「お客さん、ここ、観てください!」って言うと思うんですよ。「どうぞ!」ってなると思う。ところがね、これね、池袋はちゃんとここで暗くしてくれたんで、「おお、すげえな! やっぱり『アバター』ヤベえな、やっぱ! ちょっとケタが違うわ!」ってなったんだけども。

でもTOHOはね、『ウェイ・オブ・ウォーター』(のIMAX 3D予告)がやっている段階でもまだ、煌々と電気がついてて。ちょっともったいなくない? ちゃんとフルのIMAX画角というか、IMAXの映像でやってるのに、なんかちょっとそのIMAX段階になったら……その前のパッケージになってる予告は、多少劇場が明るくてもしょうがないとしても。それでも俺、明るいとは思うけど。ここぐらい、電気消さないとさ。この後の興行にプラスになるのに、なんかな……って。あと、『ウェイ・オブ・ウォーター』をちゃんと観たいと思っている人、いっぱいいると思うんだけど、なんだかなって。

で、すいませんね、生意気な言い方してますけども……こういうとこ! こういうとこ……「こういうとこ、TOHOシネマズっぽい」って、正直思うようになってしまった今日この頃。なんかね、なんかちょっとこう、あと一個、なんか愛が感じられない、みたいな。映画を見せるということに関して、あと一個、なーんか愛情が……。

山本:これはなんなんですかね? なんかレギュレーションとかあるんですかね。

宇多丸:いや、もちろん働いてらっしゃる方、中でいろいろやってらっしゃる方には愛がある……愛がなければ、こんなこと(映画興行は)やってないとは思うけど。

山本:ねえ。お世話になっています。

宇多丸:世話になってますよ。一番行ってますよ。もう(一本無料になる)6ポイントなんてあっという間だわ! 『線は、僕を描く』の二回目、ぶっちゃけタダで観たわ!(笑)……いや、タダじゃねえし。六回、観てるし。毎回、ちゃんと物とかも買っているし、お金、落としているし。その身から言わせてもらうと、あそこは電気を消してもいいんじゃねえか?っていうね。でもともあれ、どちらも平日昼にも関わらず、特にやっぱりグランドシネマサンシャイン、IMAXレーザーGT、みんな大好きなんで、平日昼だけど、まあ埋まってたよ。本当に。

山本:見るならやっぱり(ここで見たい)、というところ、あるんですかね。

宇多丸:はい。ということで非常に熱気のある映画館で拝見した『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』でございました。『ウェイ・オブ・ウォーター』も……ちなみにね、メールでもありましたけど。若干、そこもかぶるっていうか。「水の王国の青い人たち」っていうんで、めっちゃかぶるのね。

山本:それはね、よぎりましたよ。「あれ?」っていう。

宇多丸:で、うがった見方ね。これ、うがった見方よ? ただのゲスの勘ぐりね? ジェームズ・キャメロンが最近、急にMCUの悪口をバーバー言い出したのって、これはひょっとして……? みたいな(笑)。「おーい!(怒)」っていう……キャメロンからすれば、「おいおいおいちょっと来ーい! 水の王国のーっ、青い人ーっ!(怒)」っていう(笑)。

山本:アハハハハハハハハ!

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(来週の課題映画は『すずめの戸締まり』です)

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