本をきっかけに考える、ロシアのウクライナ侵攻

人権TODAY

今回のテーマは「本をきっかけに考える、ロシアのウクライナ侵攻」

ロシアのプーチン政権によるウクライナへの軍事侵攻開始から間もなく9か月が経とうとしています。こうした中、本を通じてこのウクライナ侵攻について考えようという動きを今回は2つ取り上げます。

ロシアとウクライナ関連の本を並べて展示

1つ目は、神奈川県の「横浜市永田地区センター」の図書コーナーで行われている『本と一緒に平和を考える』という特設展示です。どんな展示なのか、司書の嶌田智子さんのお話です。

「お子さんのための絵本だとすると、ロシア側からは有名な民話の『おおきなかぶ』ですね。おじいさん、おばあさんと動物たちが力を合わせて大きなかぶを引っ張り上げるあのお話、そしてウクライナ側ですとウクライナ民話の『てぶくろ』ですね。両方隣同士に並べて、両方の国の情報を得て公平に判断することをしてもらったり、大人用の本、子供用の本を一緒に並べて、親子でそれぞれ借りてもらって、家庭で考える機会とかを作ってもらいたいっていうことから始めたんですが、当初3ヶ月ぐらいやってもいいかなと思ってたものがどんどん延びまして、結局半年以上やってることになります。」(横浜市永田地区センター・司書の嶌田智子さん)

ロシアの本とウクライナの本を並べるほか、子供向けの絵本も大人向けの本もあるのが特徴で、例えば、「戦争は女の顔をしていない」という、第二次世界大戦下の旧ソ連で闘った女性兵士にスポットを当てたノンフィクションは、元々活字版を入荷していたのですが、利用者から読みやすい漫画版のリクエストが入りそちらも入荷、かなり人気だそうです。なお、永田地区センターで行われているその他の特設展示の開催期間は1か月程度だそうですが、この「本と一緒に平和を考える」は今年3月から始まり、現在も継続、また、当初から本のラインナップも変わってきているといいます。再び嶌田さんです。 

「当初は、ロシアはこんな戦略でウクライナを侵攻したんだとか、戦争そのものの進め方とかについて語られているような本が多かったんですけど、今は戦略というよりは、多くの方が国を追われていろんな国で支援を受けながら、祖国に帰れる日を待っている、なかなか帰れないという状況があり、もうちょっと、そういう方たちの気持ちに寄り添ったり、想像できるような本に変えないといけないという判断で、少しずつ変えてきています。」(横浜市永田地区センター・司書の嶌田智子さん)

当初は地政学に関する本が多かったそうですが、最近入荷した本は「ウクライナ避難民とコミュニケーションをとるためのウクライナ語会話集」や、「ウクライナから来た少女 ズラータ、16歳の日記」という、日本に来たウクライナ避難民による日記など、侵攻の長期化で生活が一変してしまった人に、より具体的に寄り添うような本を増やしているといいます。嶌田さんは、この展示の今後について「年内くらいは続けて、社会情勢に関心を持ってもらうきっかけになったら嬉しい」と話していました。

ロシアの絵本を日本語に翻訳

また、近年発売されたロシアの絵本を3冊、日本語に翻訳し、今年6月と7月に日本で発売した、神戸市外国語大学ロシア学科准教授の藤原潤子さんにインタビューしました。まず、絵本の発売の経緯について伺いました。

「元々はウクライナ侵攻とは全く関係のない企画なんですね。去年の秋に出版が決まって、さぁ出版しようと思ったところにウクライナ侵攻が起こりました。侵攻が起こったことでロシアと関係する全てを否定して関係を断絶するような動きがあちこちで起こったので、出版できるかどうかは非常に心配しました。でもその時思ったのは「今こそ出さないといけない」ということですね。この絵本を通して、ロシアにも平和と、全ての子供たちの幸せを心から願っている人がいるんだよっていうことをぜひ伝えたいと思いました」(神戸市外国語大学ロシア学科准教授の藤原潤子さん)

藤原さんは「今回憎むべきは戦争を始めた人であって、ロシア国民全体ではない。平和を取り戻すためには断絶でなく対話が必要で、対話のためには、相手の言葉や文化を知って、心ある人たちと繋がっていくことが必要」と話しています。

今回藤原さんが訳した3冊はいずれも成山堂書店から発売、戦争とは関係のない楽しい読み物ばかりです。『パパかいぞくの こもりうた』は、父親が子守唄を歌って子供をどうにか寝かしつけようとする物語。『ちいさい おふねの ぼうけん』は、小さな紙の船が、海に行って本物の船になりたいと冒険するお話。そしてもう一冊『そらにかえった にゅうどうぐも』については 藤原さんにあらすじを聞きました。

「ある日、1人の男の子が雲を紡いでセーターを作ることを思いつきます。ふわふわで暖かいセーターができて、男の子は大喜びしてそれを着て空を飛び回って雲と遊んだりするんですけど、男の子のせいで雲が減ってしまったせいで地球が暑くなってしまうという問題が起き、温暖化をはじめとする人間による環境破壊についての寓話的な作品になっています。」(神戸市外国語大学ロシア学科准教授の藤原潤子さん)

ロシアは寒い地域だからこそ、気候変動の悪影響が出やすいといいます。先日、COP27の中でウクライナのゼレンスキー大統領が「ロシアのウクライナ侵攻でエネルギー価格が急騰、多くの国が石炭火力発電の再開を強いられ、地球温暖化対策の妨げになっている」と非難しましたが、こうした温暖化の状況を憂いている人がロシア国内にもいるということを、絵本なども通じて知ってほしいと思います。

【書籍情報】    
パパかいぞくの こもりうた https://www.seizando.co.jp/book/10639/    
ちいさい おふねの ぼうけん https://www.seizando.co.jp/book/10635/    
そらにかえった にゅうどうぐも https://www.seizando.co.jp/book/10642/

藤原潤子さんのツイッター https://twitter.com/fujiwarajunko_/ 
藤原潤子さんのインスタグラム https://www.instagram.com/fujiwarajunko_/

(担当:中村友美)

ツイート
LINEで送る
シェア
ブクマ