辛くないシシトウに唐辛子!でも新品種の開発は甘くない

森本毅郎・スタンバイ!

今日は、ちょっと「ピリ辛」なお話です。秋の味覚、サンマの塩焼きに「シシトウ」を添える方もいると思いますが、シシトウには、たまに跳び上がるように辛いものがあって、苦しんだ経験がある方も多いのではないでしょうか。

 

■絶対に辛くないシシトウ 

そんな中、シシトウ生産量日本一の高知県で、「辛くないシシトウ」が開発されたということです。高知県の農業技術センターの鍋島 怜和さんに伺いました。

高知県・農業技術センター 鍋島 怜和さん

完全に、「まったく辛くないシシトウ品種」を開発いたしました。シシトウはどうしても辛い遺伝子を持っていますので、ストレスをシシトウが感じてしまうと、辛味成分を合成する能力が発揮されて、辛い果実ができることがあったんです。ただ今回、我々は、遺伝的に辛味成分を合成する能力をなくしたシシトウ品種を作ったので、当たった!」って叫ぶことのない、本当に辛くないシシトウです。

私も、時に悶絶するぐらい、辛い果実に当たってしまって、舌が痺れて辛味調査を中断することもあったので、時が経って舌が回復するのを待つばかりという、シシトウ品種改良者の宿命ですね。

高知県農業技術センターが開発した、「非辛味シシトウ(仮)」
左の15号、16号が「非辛味シシトウ」で、右側が市販品。見た目は変わりません

シシトウのやっかいなのは、辛いかどうか、見た目ではわからないこと。

私もスーパーで、普通のシシトウを買って確かめてみましたが、13個入りのパックで、1個「当たり」があって、本当に辛かったです。

近所のスーパーマーケットで普通のシシトウを買って煮浸しにした。やはり、13個中1個、「当たり」があって辛かった

甘党の鍋島さんは、多い時で、1日1000個近いシシトウをかじったそうなので、大変だったろうなと思いますが、そもそもシシトウは、獅子唐辛子の略称で、ピーマンやパプリカと同じ、「唐辛子」の仲間です。

シシトウが「まれに」辛いのは、特定の遺伝子が関係していたり、水不足や高温などのストレスがかかると、辛み成分が出ると言われています。

そこで、今回の研究では、辛みのないものを選抜して、交配を繰り返し行い、これを10年続けた結果、まったく辛みのないシシトウを生み出したということです。

 

■川崎市で誕生した辛くない唐辛子

今後、ネーミングを決めて、来年の冬頃には全国のスーパーに並ぶそうですが、調べてみると、辛くて当たり前の「唐辛子」も、辛くない品種が誕生していました。開発者のお一人、ペッパー・レボリューション・カンパニー合同会社の代表、三原 隆一さんに伺いました。

ペッパー・レボリューション・カンパニー合同会社 代表 三原 隆一さん

香る唐辛子と書いて、「香辛子(こうがらし)」という、新しい品種の唐辛子を作りました。その名の通り、香りがとても強くて、パプリカに近い。もっと香りは強い。一般的な唐辛子の辛み成分は「カプサイシン」なんですけども、そのカプサイシンが、「カプシエイト」っていう物質に置き換わってるんですね。その「カプシエイト」の辛さが、「カプサイシン」と比べると「千分の一」なので、それで辛さが「千分の一」になってる。そうですね、見た目でまず引く人はいますね、見るからに辛そうだ、っていうので。ただ、ちょっとちぎって食べると、「全然辛くない」って言います。これはもう普通の野菜って言うんですかね、サラダに乗せるような感じの野菜として、本当にパクパク、普通に食べられます。

「香辛子(こうがらし)」は、見た目は真っ赤で辛そうですが、生でもかじれる辛みに抑えられていて、香りがフルーティーです。

「香辛子(こうがらし)」を、木下さんの直売所で購入。ほんのり辛く、フルーティーな香り
生産者の木下さん

生で食べたり、トマトや豚肉との相性が良いので、ピーマンと置き換えてホイコーローなどもおススメということです。

こちらも、品種改良を重ねて作られたものですが、もとは、超激辛の「ブート・ジョロキア」などからできています。ジョロキアは、世界一辛い唐辛子としてギネスに登録された品種で、普通の人は食べられませんが、辛み成分「カプサイシン」を、「カプシエイト」という別の物質に置き換えています。

カプシエイトは、辛みが少ない分、胃腸に優しく、脂肪燃焼の促進や基礎代謝の向上が期待できるということで、もともとはサプリメントのために開発された品種。

それを、「食べても美味い!」ということで、野菜としても売り出すことになったそうです。

 

■主役をくっちゃう名脇役。売り出しに一苦労

ただ、川崎市を中心に実は3年程前から、売り出されているものの、知名度を上げるのに苦戦しているという話も。

生産農家のお一人で、川崎市麻生区にある「木下農園」の木下順一さんのもとに伺い、袋詰め作業の合間にお話を聞きました。

「木下農園」 木下順一さん

やっぱ唐辛子なので、主食にならない野菜なので。トマトとかキュウリとかっていうもんだったら、多分みんなやってるんじゃないですかね。これはあくまでも、サブ的な野菜なので、主食にはならない。作ったは良いがなかなか売り先に困って抜けてったりして、最後まで残ったのが、僕かなって感じで。これね、良くも悪くもね、香りがすごく強いんです。だから、パクチーと同じような感じで好き嫌いがはっきりするんです、食べて。パクチー好きな人は好きだけど、もう嫌だって人は嫌。なんだろう、主役を食っちゃう名脇役みたいな感じになっちゃう。まぁ、良くも悪くもクセが強い。作り手も試行錯誤しながら育ててるんだけど、これ多分、買い手っていうか、使う人も試行錯誤しながらなんじゃないかな。いかんせんね、今まで例のない野菜なので、うん…。

クセが強いのでハマる人はハマるが、「主役を食っちゃう名脇役」。

3年ほど前から川崎市と共同で、市内およそ30の農家さんで、試験栽培を始めたそうですが、今この品種を、ある程度の規模で作り続けているのは、こちらの木下さんぐらいだそうです。

11月下旬まで、木下農園の直売所か、ネット通販で販売しているそうですが、これからどれくらい広まるか、新品種の打ち出し方を模索していました。

 

(TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」取材:田中ひとみ)

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