「駅の音を見える化する『エキマトペ』」

~「駅の音を見える化する『エキマトペ』」~
電車のエキと、擬音語・擬声語・擬態語など意味するオノマトペを合わせた
『エキマトペ』をご存知ですか?

駅で今どんな音がしているかをモニターに表す装置です。
聴覚に障害のある人に向けて作られたもので
JR上野駅の、京浜東北線と山手線の1・2番線ホームで12月14日まで
実証実験を行っています。
このエキマトペのモニターに写る
アニメーションの文字をデザインした方山れいこさんに詳しく聞きました。
駅のアナウンスとか電車の音といった環境音を、文字とか手話とか
オノマトペのアニメーションとかで視覚的に表現する装置です。
ご家庭にあるテレビよりも大きなサイズのモニターを使用していて、
現在はJR上野駅の自販機の上に置いてあります。
で、中に出ているデザインはアナウンスの文字をそのまま出したりとか、
アナウンスの隣に丸窓で手話が出ていたりとか。
あとは電車の音が、例えばガタンゴトンとかヒューンとか流れると、
そのアナウンスの下に出るようになっていて、その音に合わせて出るので
速さはそれぞれ全然違うんですね。
(方山れいこさん)

「京浜東北線」「ご乗車ありがとうございます」という文字があって
手話でもありがとうっていうサインをしています。
その下には「ガタンゴトン ガタンゴトン…🚃」。
駅に溢れている音をマイクで拾ってAIが分析して、このように文字化しています。
例えば、電車の遅延や運転見合わせなどの緊急時の駅員さんのアナウンスも
文字で見ることができます。
さらに定型の文章については手話も表示されるんです。
実はエキマトペは、富士通と、JR、DNPの3社が共同で
川崎市立聾学校の生徒と一緒に「未来の通学をデザインしよう」という
プロジェクトがあって、そこで出たアイデアをもとに作った装置。
今回、その川崎市立聾学校の生徒と先生にも、書面で取材をすることができました。
まずは聴覚に障がいのある生徒さんに駅での困りごとを聞きくと、
・駅の放送が聞こえないので、例えば、緊急停車している理由がわからない。
いつ復旧するのかわからない。
・電車内のアナウンスが聞こえなかったり、掲示板の表示が終着駅しか
載っていなかったりするためどの電車に乗ってよいかわからず
乗り間違えてしまったことがある。
こうした困りごとを、エキマトペで解消できるということです。
さらに、モニターに出てくるアニメーション文字のデザイン性にもこだわりがあります。
再び、方山さんです。
例えば「ヒューン」だったら、ちょっと鋭利な感じの表現にしたりとか
ヒューーンって電車が勢いよく電車が来るよっていうのがわかるように
先がとがっている鋭利な表現にしたりとか。
あとは、ドアが開く音で山手線は「ポロンポロンポロン」と音が鳴るので、
それは私の中で小さいブロックがボロボロ出てくるイメージがあったので
ブロックのような立体的なアニメーションにしてみたりとか。
(方山れいこさん)

このエキマトペを見た川崎市立聾学校の生徒からはこんな感想を聞けました。
・私たちが知らない音を初めて知ることができてよかった。
・エキマトペは色々な音を聞き取って字の形が変わっていくのが面白いと思った。
全ての音が表示されるのがすごいと思った。
そして先生からは、
・駅のホームで流れている音を聞いたことがなかった生徒たちは
「駅の中ではこんな音が流れているんだ!」と驚いていたという感想もありました。

デザイナーとしてエキマトペのプロジェクトに関わった方山さん、
生徒たちの反応を目の当たりにして感じたことがあるそうです。
耳の聞こえない人、聞こえづらい人って、街に居てもあんまりわからないじゃないですか。
見た目であんまりわからないというか。まずそういうところでの理解が進んでないなと思いますし
どうしても、マイノリティーがマジョリティにー合わせることが当たり前っていう風に
思っている人ってすごく多いなと思うんですよね。
例えば、本当は自分はいつも手話で会話しているから手話でやり取りをしたいのに
「それ字幕で出来ないの?」とか、「テキスト打ってそれで見せられないの?」とか
そういう人ってけっこういたりするんですよ。
でもやっぱり普段自分が喋っている言葉とか、言語とかで話したいって普通の感情じゃないですか。
そこの理解とかが無い方が本当に多いなって思って。
(方山れいこさん)
▼上野駅ならではのパンダのイラストも。

そして、川崎市立聾学校の先生からもこんな感想を聞くこともできました。
・「エキマトペ」の取り組みは聞こえない人たちの生活を豊かにするだけでなく、
健聴者にも「聞こえないってどういうことだろう?」と
聴覚障がい者の理解にもつながると感じ、様々な場所に設置していただきたい。
エキマトペは、障がいがあるなしに関わらず、誰もが人との違いを認め
尊重し合える世界になるよう願って作られたということで、
JR上野駅にお立ち寄りの際には1・2番線ホームにありますので見てみてください。
こうした取り組みが、他の駅にも広がっていくことを願います。
「エキマトペ」ホームページはこちら
💻https://ekimatopeia.jp/
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■追記■
今回取材をさせていただいた、デザイナーの方山れいこさんの仕事風景。
実は、エキマトペに関わったことをきっかけに聴覚に障がいのあるデザイナーを
「気が合いそうだな、楽しく仕事ができそうだなと思って」自身の会社に採用。
方山さんは現在手話の勉強もしていますが、
スタッフ間の会話は、リモートワークなどもあるためチャットで行うことが多いそうですが
出社して集まっている時でもこうしてチャット上で他愛のない話で盛り上がっているそうです♪

(担当:TBSラジオキャスター 加藤奈央)