木造住宅密集地域の住民の防災の取り組み。東京・北区上十条五丁目

人権TODAY

 東京は、山手線の外側から環状7号線の辺りの間に、ドーナツ状に「木造住宅密集地」が広がっています。JR十条駅と赤羽駅の間、環状7号線沿いの北区上十条五丁目もその一つです。約1700世帯が暮らしています。

 上十条五丁目の中の道路は消防車や緊急車両が入れない幅4メートル以下がほとんどで、大地震が起きた時、火災が広がるリスクが最高レベルに高い地域です。そこで、ここの町内会は、「スタンドパイプ」という初期消火に役立つ機材を取り入れています。
 1メートルほどの長さの金属製の筒のようなスタンドパイプは、道路の消火栓のふたを開けて、消火栓に取り付け、反対側にホースをつなぐと、ポンプがなくても、水道の水圧で放水できます。地区内に7か所、目立つよう真っ赤な箱に入れて、個人の住宅の庭先に預けてあります。

 上十条五丁目町会会長の小菅和子さんの自宅の庭先にもスタンドパイプやホースが置いてあります。防火対策部長の香取時彦さんは「重さは、本体は3キロとか、そのぐらいです。近くの消火栓まで運ばないといけないので、重いものだと大変ですし、重いと操作もしにくいんですね」と説明します。小菅さんが「あたしみたいなおばあさんでも持てますよ」と口を添えます。門に鍵がかかる家には預けていないそうで、香取さんは「いつどこで何が起こるかわからないので、その家の人が留守で家にカギがかかっていても、庭先には入れて、誰でも取り出して使えるようにという風にしないと、万が一に備えて、意味がないので」と説明していました。
阪神淡路大震災の経験などから、大地震の時の同時多発的な火災では、消防車だけでは、全てをカバーできないので、消防車が来るまでに住民でできることをやる、という考え方です。

 公園や広場が少ないこの地区ですが、2019年12月には、防火水槽やかまどベンチを備えた「上五防災ふれあい広場」が完成しました。香取さんは「この広場をオープンする時に、実際に町会の人に集まっていただいて、ベンチでお湯を沸かしたり、あと、ゲームとして、スタンドパイプが7箇所ありますんで、探し当ててもらう、というクイズをやったりとかしました。お母さんがたが覚えてなくても子供さんが覚えていて、あそこにあったよ、というのがね、あるだけでもいいかなということで」と説明します。

 町会では全戸に防災マップを配っています。道路の幅が色分けされ、消火栓や消火器、スタンドパイプの場所などが書いてありますが、普段から意識していないと忘れてしまいます。また、スタンドパイプの場所を知ってもらうと共に、町会では使う訓練も行っていて、8年前、朝8時頃に起きた住宅火災では、周りの住民が消防車が来るまでの間、初期消火を行って、被害の拡大を防いだということです。ただ、訓練は2カ月に一度、行っていたのですが、参加者に高齢者が多いこともあり、2年前から、今年の4月の1回を除いて、行っていない状態です。
 上十条五丁目付近では、北区によるまちづくりの計画もあり、道路を消防車が入れるように幅6メートルに広げたり、燃えにくい住宅への建て直しに補助金を出したりしていますが、住宅の立ち退きや家の建て替えには住民への丁寧な説明と同意が必要で、どうしても時間がかかります。そこで、いま、住民がやれること、としてこういった防火対策に取り組んできたのです。
 小菅さんと香取さんに今年の4月の訓練の時のことを聞くと、小菅さんは「2カ月に1度やるのと、全然やらないのとでは違います。触らないよりは、ちょっとでも触ってたほうがいいんだと思います」と話します。香取さんも「扱いはそんなには難しくはないですけど、やってないと、一瞬迷っちゃう。習うより慣れろです。町会の人全員が覚えてもらったほうがいいんですけど、何人かだけね、完全にできる人がいてくれれば、その人が核になって、消火活動ができますので、そのように持ってきたいなとは思ってるんですけども」と話していました。
 北区上十条五丁目は都心に近く、新しい住民も増えています。古い住宅一軒だったところに、建売の住宅3~4件が建つなど、密集度合いが増している箇所もあちこちにあります。町会では、新しい住民にも課題の周知、防火対策への協力を呼びかけると共に、時期を見て訓練を再開したいと考えているということです。

担当:崎山敏也(TBSラジオ記者)
 

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