「ヘアドネーションが広がった今考える、ウィッグを付ける自由・付けない自由」

人権TODAY

~「ヘアドネーションが広がった今考える、ウィッグを付ける自由・付けない自由」~

ヘアドネーションが広がった今、「ウィッグを付ける自由・付けない自由」について考えてみました。
人権トゥデイでも2016年に扱ったことがありますが、
ちょうど「ヘアドネーション」という言葉が広がり始めた頃。
「ヘアドネーション」とは、寄付された髪の毛から作ったウィッグを、脱毛症や小児がんの治療など
何らかの事情で髪に悩みを抱える子どもたちに無償で提供する活動の事をいいます。


以前の放送では、日本で初めてヘアドネーションの活動を始めた
NPO法人ジャーダックを取材し、
当時の放送で、髪に悩みを持つ子どもたちを想って自発的に伸ばした髪の毛を
寄付するのは良いことで、ますます広まっていけばいいですねとお伝えしましたが
現在は、それが髪に悩みを抱える人への押し付けになっていないかという問いを
抱いているといいます。
ジャーダックの代表理事で美容師の渡辺貴一(わたなべ・きいち)さんです。


ヘアドネーションをして、ただ「いいことをした」と思わないでほしいと。
本当にいいことになっていますか?ということを考えてほしいと。
髪の毛って素晴らしいでしょう、毛が長いっていいでしょうっていうのを
髪の毛の無い人たちにずっと押し付けるみたいな形で、ウィッグを付けた方がいいよと、
ウィッグを付けて、大多数の人が髪の毛がある社会に寄り添いなさいよっていう
こういう不平等なことでいいんですかこの社会は、と。
(渡辺貴一さん)

 

当時から渡辺さんは、髪の毛がある人が大多数の社会だから
「ウィッグをかぶると学校や社会に溶け込めるでしょう、
購入すれば高額なウィッグを差し上げますよさぁどうぞ」という構造は
根本的な解決にはならないと言い続けてきましたが、
どうしても誰かのために髪を寄付するドナー側の善意の部分しか伝わらなかったと
話してくれました。

加えて、ウィッグを提供される子どもの親の側にも
似たような考えがあるのではないかと指摘します。
 

私、当事者の人と保護者の人とも接しますので、分かっちゃうんですよね色々。
本人たちは、あぁこれお母さんとかお父さんのために付けてる子けっこういるなと
ある程度の段階で思っていて。まぁ保護者から申し込みがあり、保護者がお子さんの事を
先回りして保護者が用意しているっていう、本人の気持ちが置き去りにされていないかなと
いうところはずっと…。
(渡辺貴一さん)

渡辺さんは、もちろんヘアドネーション自体を否定しているわけではなく、ウィッグを受け取って
喜ぶお子さんももちろんいると話します。
ただ、いいか悪いかはさておき、本人の気持ちが置き去りになっていないかと
渡辺さんは話していました。
この「本人の気持ち」という観点で、自身も脱毛症の当事者でウィッグを30年近く
付けて生活をしてきた、ジャーダックの職員の吉田薫(よしだ・かおる)さんにも
お話を聞きました。 

髪の毛が無くてそれに対して物凄く悩んでた時って、
ウィッグをかぶったらやっとこれでなんか私も鎧を着て外に出れるっていう感じになって、
なんかそこで自分もそれをゴールにしちゃってるところがあったりしたんですけれど、
でも、それプラス、じゃあなんでずっとかぶっておかないといけないのかっていう
一歩踏み出したところに私たち側も考えられるようになってきたのかな。(吉田薫さん)


 

 

吉田さんはフラメンコのダンサーで、人前で踊る時もウィッグを付けていましたが
脱毛症による劣等感があったことで、自身に付加価値を付けたくて
2年半前にスキンヘッドで踊ろうと決めました。
しかしその後も怖いとか恥ずかしいという気持ちがあったそうです。
そこで、まだ自分が前向きになれていないというのも含めて
SNSに投稿したところ「わかる」という共感をもらって、大事なのは
自分の内面に向き合うことだと気付いたといいます。そうした経験を踏まえて
ジャーダックの会員ホームページ上で、ウィッグを受け取る「レシピエント」の
相談を受けています。

今はウィッグを付けないことが多い吉田さんですが、
その一方で、付けることを選んでいる人からのこんな反響のメールが
最近ジャーダックに届いたそうです。再び、渡辺さんです。

 

やっぱりウィッグを使うことに対しては自分では良かったと思ってます、と。
でも、自分の人生の中で海とか泳ぐこと大好きだったのに
プールも諦めた、温泉も諦めた、恋愛ももちろん諦めた、やっぱりそういうことが
つらつらと書いてあって。
まずウィッグを使うという決断すること自体に逡巡があったりとか、
付けた方が良いんだろうか、みたいな。そう易々と、はい毛がありません、
じゃあウィッグ買いましょうとはいかないというところがあるので。
脱毛だからと一括られるっていうのも、恐らく脱毛の人たちも、いやそういうわけでは、みたいな。
(渡辺貴一さん)

    ▼脱毛当事者、ヘアドネーションに関わる人達の本当の想いを知ることができる「31cm」。

ヘアドネーションに関わる16名のインタビューを著名なイラストレーターのビジュアルと共に届けます。

 

欲しいと思う人がウィッグをつける自由と、つけない自由の両方の選択肢のある世の中に
なることを願います。


「NPO法人ジャーダック」の活動に興味を持った方はホームページをご覧ください。
💻https://www.jhdac.org/

(担当:TBSラジオキャスター 加藤奈央)

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