採石場跡地の地下水を活用して夏いちごを栽培!

森本毅郎 スタンバイ!

連日猛暑の夏休みとなっていますが、栃木県宇都宮市の大谷地区が「涼しい観光スポット」として話題です。場所は宇都宮駅から車で20~30分ほど。「大谷石」という旧帝国ホテルにも使われた柔らかく加工しやすい石が採掘されることで有名です。現在、採掘はほとんど行われていないのですが、地域に多数ある採石場跡地のうち一つを一般公開、最深部は地下60mにも及び、中は10℃位の涼しさなんです。

■採石場跡地にたまった冷水でビニールハウス内を冷やす

そして別の採石場跡地では、今年から新たな取り組みが行われています。それは地下にたまった水を活用し「夏に採れるいちごの栽培」を行うことです。OHYA UNDERGROUND ENERGY株式会社・久我幸史さんのお話です。

OHYA UNDERGROUND ENERGY株式会社 久我幸史さん:

この辺りはずっとですね、地下10mを超えると空洞になって、水が溜まっています。そこの水をポンプで水をがっと引き上げて、その水が大体10℃ぐらいなんですね。地下にある水っていうのはあんまり綺麗じゃないので、熱交換をするんです。鉄板を隔てて綺麗な水に温度だけ移る。ここが、その綺麗な水を供給する心臓部になります。

一見、雑草が生い茂る平地なのですが、その地下はかつての採石場で、冷たい水が溜まっています。その水をポンプをくみ上げて、熱交換をした上で、その敷地内に建っているいちごのビニールハウスに供給するという仕組みです。

この水が10℃くらいの冷たさというのがミソ。いちごの本来の旬は冬から春、つまり気温や土の温度が暑すぎると育たないんです。こちらのハウス内では土の中にチューブを埋めて水を流し、土の温度を25℃以下にしています。

さらにビニールハウスの壁面に、冷水を流すため網目状の壁を設置し、ファンで冷気を循環させてハウスの中の温度も30℃以下にしています。

■大谷夏いちご「なつおとめ」の需要高まる

栃木のいちごといえば「とちおとめ」が有名ですが、こちらのビニールハウスで作られているのは「なつおとめ」という品種です。JBファーム株式会社・坂入千恵子さんのお話です。

JBファーム株式会社 坂入千恵子さん:

大谷でできる「なつおとめ」は夏に栽培するいちごなんですけど、特徴としましては、割と酸味が強く、甘いので夏にも適してさっぱりとした、とても美味しいいちごになっております。そもそも夏いちごの生産量が、元々全国から見てすごく少ないんですね。でも需要はとてもあるので大谷の地下水を利用してできるのであれば、この「なつおとめ」しかないかなと思って。病気だったり天候だったりこの暑さだったり不安なことはあったんですけど、この冷却装置があることで割と順調に栽培がされて、生産量も平均的にできていますね。

こちらの農場の近隣では地下水による冷却システムを導入せずになつおとめを栽培している農家もあるそうですが、今年の猛暑で生産量が低下しているといいます。しかしJBファームのなつおとめの生育は順調。いちごは旬以外の夏・秋もケーキなど飲食業で需要があり、これまではアメリカなど海外の輸入ものを使うことが多かったそうですが、今は円安やガソリン価格高騰などの影響で国内のいちごにシフトする動きがあり「なつおとめ」のニーズはより高まっていて、かなり発注が増えているといいます。

■地下水による冷却システムでCO2削減

大谷の地下水を活用したいちご栽培にはこんなメリットもあると、再びOHYA UNDERGROUND ENERGY株式会社・久我幸史さんのお話です。

OHYA UNDERGROUND ENERGY株式会社 久我幸史さん:

冷たい水を作ろうとすると通常はエアコンみたいな形で電気をたくさん使わないといけないんですね。だけどここは水を引き上げて水を供給するだけなので、ただ水を循環させてるだけなんですね。そうすると圧倒的にCO2の排出量が減ります。夏だけじゃなくて冬の活用も考えてます。冬は通常、いちごの生産において油のボイラーを炊くんですね。でもこのシステムを使うと、冷たい水とは言いながら10℃から12℃くらいなので、油を燃やすより圧倒的にCO2排出を削減して温かい熱も作ることができる。CO2排出量は6割削減できると。

夏のいちごも冬のいちごも、大谷の地下水を使った冷却システムによってCO2が6割削減できるといいます。大谷の農場では現在、夏イチゴ農家2社、冬イチゴ農家1社が生産を行っていて、このうちJBファームは今は夏イチゴだけですが今後は冬イチゴも手掛けていきたいということです。

(TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」取材:中村友美)

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