ご先祖、ルーツ調査を通じて噛みしめる戦争

森本毅郎 スタンバイ!

今日は77回目の終戦の日。そこで、今日は、日々の仕事をする上で、その戦争の影響を実感している方にお話を伺いました。

■戸籍謄本も過去帳も、焼失してしまって

依頼者の先祖を調べて、家系図や家族史を作っている会社、ファミリーヒストリー記録社・代表の吉田富美子さんのお話です。

ファミリーヒストリー記録社・代表 吉田富美子さん

●「最初にまず戸籍謄本を取り寄せて、家系図を作るんですけれども、それを元に、言い伝えとか、お墓とか、過去帳、位牌などの情報を聞いて、江戸時代以前も深堀りして調査していって、ご先祖がどんなことをやっていたか、というのを調べていきます。戦争でですね、戸籍謄本が空襲で焼失しているのが、もう結構多いですよね。東京の大空襲ですよね、それと、横浜市、金沢市、例えば軍事施設があったところとか、福山とか。もう広島もそうですけど、焼失して無くなっているので、全然、古い情報が戸籍謄本では取れなかったり。お寺も焼失して過去帳が燃えちゃったとか、という、やっぱり情報が取れないっていうのは、一番の障害ですよね。」

ルーツ調査の重要な手がかりが、戸籍謄本。というのも、現在、取り寄せられる最も古いものは、明治19年式の戸籍謄本で、これだと江戸時代の末期生まれの祖先の名前や住所が載っている可能性があるから。これを元に、まず家系図を作り、最も古い人物について、同じ名前が出てこないか、郷土資料(県史・市史・町史などの文献)を調べたり、菩提寺に行って、お墓や位牌、過去帳の情報をもらって、江戸時代末期以前のご先祖の名前が載っていないか、という具合で調査を進めていきます。

しかし、この一手目の戸籍謄本が戦争で焼失してしまっていることが多く、同様に、お寺が焼けてしまえば、過去帳も無くなってしまい、調査が行き詰まってしまうことも。(過去帳。生没年月日と戒名と俗名を記したもの)

 

■軍歴証明をひも解き、戦争を実感

また、吉田さんが、もう一つ貴重な資料としているのが、軍歴証明。こちらは、さらに直接的に戦争を実感する作業になります。

●「例えば、本籍地、生年月日が書いてあって、二等兵としてどこそこに入って、一年後に一等兵になり、で、昭和19年にどこに召集されて、で、上海の港に着いて、どこの戦闘に加わり、とか、大腿部に銃弾が撃ち込まれて、何日に亡くなったとか。要するに軍歴証明自体は、何月何日どこそこで、どうしたこうした、で終わってるんですけど、それをちゃんと戦争関係の資料を見ていくと、この戦闘では何人の日本兵が亡くなって、とか、どういう戦いだったか、とか、そういう資料があるんですね、探すんですけど、そこと組み合わせていくと、この人がどんな経験をしたのかな、っていうのが分かる。何人の生き残りだったんだな、とか。だから事実を述べているだけなんですけど、その事実の重さがすごいな、と思いながらやってますけど。」

だいたいが手書きのもので、読み解くのは大変なのだそうですが、戦闘の背景や、移動の工程を追うことで、戦争に行った人がどんな経験をしたのか、をひも解いて、それをまとめたり、家族の方に伝えたりしています。その一人の人の移動を追いかけていく過程で、戦場の景色がリアルに想像できて、一人一人の命の重さを感じる、と。しかし、この軍歴証明も、全部が残っているわけではなく、空襲で焼けてしまって、都道府県によってまちまち。4割しか残っていない都市もあるそうです。

 

■戦争は記録も記憶も消えてしまう

このように日々のお仕事の中で、戦争を身近に感じている吉田さん。今も繰り返される戦争について、こう話します。

●「紙の資料、石の資料などの記録っていうものと、残った方の証言、記憶ですよね。結局、資料が燃えちゃうっていうことと同時に、記憶を持った方も、そこで亡くなっているっていう可能性はあって、記憶と記録と両方を使って最終的に報告書とか作っているんですけど、やっぱり両方なんとか残したいと思っているので…。ほんとに、何も言わずに死んじゃうわけですからね。その人のことを覚えている人が亡くなっちゃうと、また失われてしまうので、もう二度と聞けなくなるので。その人の存在が無かったわけではないけど、それを覚えている人がいなくなると、存在自体も、もう見えなくなっていくということになるので、その人の記憶も無くなっちゃうっていうことですよね。なんかね、腹が立ちますよね。」

戦争では、記録も記憶も消えてしまう、という話は重い。先祖とのつながりが、途絶えてしまわないように、吉田さんたちは残った手がかりからなんとか糸を繋いでいる。古いお墓を見つけたら、苔などを綺麗に掃除して、文字が見えるようにしてから解読したり、一文字でも見えれば、そこから時代を類推する、といったことをしています。

        (掃除前の古いお墓:吉田さん提供) 

(掃除後のお墓。字が見えるようになりました!:吉田さん提供)

ルーツ調査をしていると、ご先祖さんたちは、戦争を始めとして、様々な苦労をくぐり抜けてきてあり、いま自分が生きているのは奇跡的なことだ、と感じることができると思うから、生きづらいと言われる現在を生きる人たちに、がんばるお守りのようなものになれば、
という思いで、消えつつある、消えゆくものを、拾い集めて、ちゃんと次の世代に伝えたい、と話していらしゃいました。

 

(TBSラジオ『森本毅郎スタンバイ』取材・リポート:近堂かおり)

※お話を伺った吉田さんがルーツ調査を自分でやるためのノウハウを詰め込んだ著書が発売されます。興味のある方はぜひ。実は私もやってみたいと思っています。

『自分でできる ファミリーヒストリーを調べよう!ご先祖の足跡と家族の物語を辿って作るノート』(二見書房 9月12日発売)

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