核兵器禁止を。岸田政権への失望と原爆の記憶をNYに伝える試み

森本毅郎 スタンバイ!

8月6日は、アメリカによる広島への原爆投下から77年となります。

それを前に、日本時間の8月2日、岸田総理はニューヨークで行われたNPT(核拡散防止条約)の再検討会議に出席。演説で「ヒロシマ・アクション・プラン」を発表し、核のない世界を目指すとしましたが、一方で、「核兵器禁止条約」には触れませんでした。

 

■岸田政権への失望

ではこの演説、被爆された方、そのご家族はどう聞いたのか?被爆者団体「東友会」の代表で、ご自身も3歳の時に広島で被爆されたという、家島昌志さんに伺いました。

東京の被爆者団体「東友会」代表理事 家島昌志さん:

本当の音頭を取ることから逃げてんのかなと、我々もそこは非常に残念ですよ。

日本は確かにアメリカの核の傘に守られているということは事実としてあるけれども、被爆国日本が核兵器廃絶に対しては、日本独自の主張を繰り広げますよということは、誰も非難することはできないと思うし、国際社会も認めると思うんですよね。で、それを期待されてる。

私の父親は、25年も経ってから原爆症で亡くなってしまったっていうことと、私自身が72年も経って甲状腺がんになった。そんな危険なものはね、この世に存在があっちゃいけない。

広島出身の首相であって、核兵器廃絶にはより深い思いを抱いているということを公言する以上は、一歩踏み込んで欲しいと。世界に対して恥ずかしいですよ。

岸田総理はライフワークとして、核保有国と非保有国の「橋渡し役」をすると言っているにも関わらず、今回の演説では、それについての具体的な言及はありませんでした。

そして「核兵器禁止条約」これはNPT(核「拡散」防止条約)よりも、一歩踏み込んだ、核を全面的に「禁止」しようという国際条約ですが、この禁止条約に触れなかったこと、今も日本が批准していないことにも、家島さんは憤っていました。

 

■戦争の証言をデジタルで伝える

そんな家島さんは現在80歳。被爆者の高齢化が進む中、戦争の記憶をどう未来に伝えていくか、ということも課題になっていますが、今回NPTの再検討会議が開かれたニューヨークで、ある企画展が開かれると話題になっています。

どんな内容か、主催者の東京大学大学院・教授の渡邉英徳さんのお話です。

東京大学大学院 教授 渡邉英徳さん:

広島、長崎原爆の被爆者の方々の証言ですとか、当時の記録写真をまとめたデジタルアーカイブ。

三次元のデジタル地球儀=グーグルアースの上に、被爆者の方々の証言を、まさに原爆投下のタイミングで、どこにいらしたのかをというのをお聞きして、その場所に顔写真とともに浮かべて、誰がどこで被爆をしたのかということが、直感的にわかるようにしたものになりますね。

この方のお話が聞きたいという風にボタン押してもらうと、お話になられている動画が大型ディスプレイの画面いっぱいに再生されて、その方のお話を聞くことができる。多分アメリカ市民の方々で、8月6日や8月9日が何の日かって認識してらっしゃる方ってあんまりいらっしゃらない。

せっかくNPTと重なるタイミングですから、原爆投下について深く考えていただけるような、そういう展示にしようと思っています。

「Convergence of Peace Activities:テクノロジーでつながる平和活動」展(現地8月6~7日)@東京大学 ニューヨークオフィス

「テクノロジーでつながる平和活動」展は、8月6日から2日間、東京大学ニューヨークオフィスで開かれます。

会場に入ると、屏風のように、自分を取り囲む大型ディスプレイいっぱいに、広島や長崎の地図が描かれていて、およそ300人の被爆者の証言が動画や写真でまとめられています。そしてズームすると、その時何があったか、一人一人の話を聞くことができます。

こちらは日本でも、ウェブサイトやスマホのアプリで見ることができるので、「ヒロシマ・アーカイブ」、又は「ナガサキ・アーカイブ」と検索してみてください。

 

「広島のきのこ雲」(白黒写真) 撮影:尾木正己
「広島のきのこ雲」(カラー化した写真) カラー化:渡邉英徳

 

■ウクライナの様子も展示

現地では、申し込みが既に100名以上と、開催前から注目度は高いようですが、実は、新たな試みがもう一つ、用意されているようです。

東京大学大学院 教授 渡邉英徳さん:

原爆被害のデジタルアーカイブと同時に、ウクライナの被害の様子を伝えるコンテンツも展示することをアピールしているんですね。

ウクライナ現地の方をはじめ、被害の様子を捉えた3Dデータがどんどんとネット上で発信されています。

その作者の方に、やっぱり一人一人コンタクトして、データを提供していただいたものをまとめたマップ。

そういう意味で言うと、77年前の原爆の被害の様子を伝える話と、今ウクライナでもしかしたら、歴史上3度目の核兵器が使われてしまうかもしれないと。その危機感は、実は世界中の人が今共有しているわけですよね。

なので過去に起きたことを今我々の目の前で起きていることを地続きに感じてもらう。そういうきっかけが作れると考えています。

「ウクライナ衛星画像マップ」東京大学大学院 渡邉英徳研究室・青山学院大学 古橋大地研究室

ロシアによるウクライナ侵攻で被害を受けた町の様子を、3Dマップにして展示。実際に、爆撃されたビルを立体写真で見ると、被害の悲惨さが伝わってきます。

渡邉教授は、広島と長崎、そしてウクライナの現状を並べることで、核兵器のありようや、平和について議論して欲しいと話していたのですが、ロシアが核の使用をちらつかせている今、改めて、広島や長崎で何が起きたのか、世界は知る必要がありそうです。

東京大学大学院 教授 渡邉英徳さん

 

(TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」取材:田中ひとみ)

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