金メダルから始まる新しい人生~東京2020卓球金メダリスト:水谷準さん

コシノジュンコ MASACA

水谷準さん(Part 1)
1989年静岡県生まれ。5歳から卓球を始め、全日本卓球選手権で史上最年少の17歳で優勝。オリンピックには北京2008より4大会連続出場し、東京2020混合ダブルスで日本卓球史上初の金メダル、男子団体で銅メダルを獲得し、日本の卓球界を牽引する存在です。

 

出水:東京オリンピックでの男子団体銅メダル獲得から一夜明けた8月7日に現役引退の意思を表明し、今年2月の引退セレモニーで選手生活にピリオドを打ちました。それまで葛藤があったと思いますが、競技から身を引くというのはすんなりケジメがついたんでしょうか?

水谷:いやぁ~難しいですね。僕自身は卓球がすごく好きだったので、40歳50歳まで競技を続けたいなという思いもあったんですけど・・・。

JK:卓球は一生できますよ! なにもケジメつけることないのに。

水谷:そうですよね。でもパフォーマンスが低下しているっていうのは自分自身が分かっていて、中途半端にファンの人を悲しませるのも辛いなと思っていたので・・・ピークの時に卓球人生を辞めたいとずっと思ってましたし。

JK:それはカッコいいですけど、好きなものは一生好きじゃないですか? 結局卓球に関係するようなことになっちゃうでしょ。やっぱり卓球からは離れられないもん。

水谷:そうですね、今もそういうお仕事させてもらっています(^^;)それこそTV番組ではしょっちゅう卓球して、楽しくやらせていただいているんで、これは一生続けたいなと思います。

JK:ご自分で「マサカこんなことになるなんて!」という経験は? 最近の心境でもいいいし。

水谷:まあこの1年だったら、自分がまさか金メダルを取るとは思わなかった。それと金メダルを取って、キャスターといった人生を歩むとは思ってなかったですね。

JK:たしか目の病気ですよね? 

水谷:引退した一番の理由はそうですね、目が原因です。卓球しているときはボールが見えないというか、見づらいというか・・・ボールが光と一体化しているみたいな感じで輝いているというか。基本的にそういう状態だったので、パフォーマンスとしてはこの3年間はつねに20~30%でしたね。

JK:それでよく金メダル獲得できたわね!!

水谷:だから本当に運がよかった。パフォーマンスは本当によくなかったですし、いろんな力が関わって、奇跡的に獲れた金メダルだと思います。

JK:その病気は治らないんですか? 

水谷:病気自体は治らないですね。

JK:一生お友達ですね。だったらボヤ~の状態で卓球やるべきでしょ。

水谷:(苦笑)でも、それこそ最近講習会をやったときも、ドライブが入らないんですよね。当時は治療をずっとやってたんです。コンタクトやったり眼鏡付けたり。薬も10種類ぐらい飲んで毎日延命している状態で、週2で病院に通って薬をもらって、を繰り返してました。

JK:ボールがものすごく早いですものね! 動いてるのを追ってるだけで目がおかしくなっちゃう。

水谷:だからこれからはゴルフで、止まってるボールで頑張りたいと思います(^^)

 

水谷準『打ち返す力 最強のメンタルを手に入れろ』(講談社)

 

出水:今回出版された本は一般読者向けだそうですが、出そうと思ったきっかけは?

水谷:これはオリンピック終わってすぐですね。終わって2週間後ぐらいにはライターさんとインタビュー形式で話をして、全部書き上げました。

JK:それにしても中身が濃いですよね。リアルというか、感情が見えてきます。

水谷:今回は一般の方向けに、ビジネスにも精通する内容になっているので、誰にでも読んでいただける内容になっていると思います。当たり障りのない言葉ではなく、自分らしい厳しい言葉もあると思います。

出水:そうなんですよね、最終章には「ビジネスの悩み・水谷流ならこう対処する」なんていうのがあったり。

水谷:Q&A方式で、サラリーマンの方から20項目ぐらい質問を集めて、その質問に自分なりの回答をするというのが最後のページに書かれています。この本を書いてから、講演でも「本を読みました、ここの心境を教えてください」って訊かれることも多くて。

JK:どこのスポーツもそうだけど、辞めちゃった後のビジネスって大変じゃないですか。それを若くにして考えてるっていうのはすごいですね。

水谷:そうですかね(^^;) でもアスリートのセカンドキャリアは真剣に考えていかなきゃいけないですし、自分も将来的にはそういうサポートをしていきたいなと思っています。

JK:同じような関係の人は、卓球関係では過去にいないですよね? そういう意味では道を拓く。すごく重要ですよね。みんなピーク過ぎた後に「どうする?」ってなりますもんね。

水谷:なりますね。競技人生って短いですからね。30歳ぐらいでみんな引退してしまいますし、競技によっては20代前半で引退してしまう方も多いので・・・引退したアスリートも人それぞれ、やりたいことも全然違うので、それでもコーチになりたいならコーチになってほしいですし、キャスターだったらキャスターとか。結構いろんなアスリートとも交流が増えてきたので、協力してスポーツ界を盛り上げていきたいなとは思っています。

JK:子どものころからずーっとスポーツだから、他のことが分からないじゃないですか。また一からお勉強、みたいなところもありますもんね。

水谷:でも一から勉強したとしても、やっぱりついていけないんですよね。他の方は高校・大学で勉強してきたので、同じところでやるっていうのは難しい。

JK:だから同じところで勝負するんじゃなくて、全く違う方向の、誰もやったことないことをやるっていうのも大事ですね。

出水:水谷さんは今後のキャリアパスについてどう考えているんですか?

水谷:あんまり具体的なところは考えてないかもしれません。オリンピックで金メダルを取るっていうのをこの20年間目指してやってきたので、それを達成した後、金メダルを超える目標はなかなか見いだせないのかな、って思ってます。

JK:でも世間には卓球のイメージがあるから、そのイメージを活かすのも大切かな。卓球に関係ある新しい企画とか。

水谷:卓球メーカーで「ゴールドメダル・アドバイザー」っていうポジションをいただいて、卓球ラケットの開発に携わっているんですよ。なので今、一生懸命、卓球界に新しいものを作ってあげたいなとは思っています。選手から引退して、用具開発に携わらせていただいています。

JK:それを使ったら勝つかな? ほしいわ(笑)

出水:本の第1章「頂点に立つためには」に「人がやらないことをやる」というのがありますが、それはどんなことですか?

水谷:人生において大きな決断をする時って多々あると思うんですよね。その時何を基準に決めるかというと、多分こっちのほうが少数派だな、っていう方を僕はつねに選ぶようにしてるんです。それこそドイツに行った時もそうですし、2013年からロシアリーグにも行ったんですが、誰も挑戦したことのないところに行きたいなとつねに思っていて。

出水:その先に自分の成長がある、という思いからですか?

水谷:どうなるかわからないから、というのがありますね。誰かがやってたら、この先こうなるんだろうなってわかるじゃないですか。でも誰も挑戦したことがないってことは、どうなるかわからない。

JK:勇気ありますね!考え過ぎるとできないけど、無鉄砲にやらないとできないわよね。

水谷:そうですね、勇気は大事ですね。そこで決断できない人もいっぱいいると思います。自分はそういう挑戦するっていうのが好きなので。今シーズンは海外リーグに行く選手がいっぱいいるんですよ。本当は日本でそういう環境が作れたらいいんですが、どうしてもまだ海外の方が進んでる。

JK:私ね、「忙しくすると図太くなる」っていう箇所が好き。

水谷:慣れるっていうのもあると思うんですよね。「良い慣れ」と「悪い慣れ」があると思ってて。今たくさん仕事をいただいていて、現役の時は睡眠時間が7時間ぐらいだったのが、今は4時間ぐらい。最初はキツいなと思ってたんですけど、慣れてくると4時間でも平気で、仕事できる時間が今までより4時間延びるんですよね。そういう「良い慣れ」をたくさん作っていきたいなと思います。

JK:忙しい忙しい、って言う人ほど仕事できないからね! なんともないのよって楽しめばいいのよ!

出水:厳しい(^^;) でも自分の中で忙しさのキャパシティはありますよね。ご自身の器がどのぐらい許容できるのかはどうやって測ってらっしゃるんですか?

水谷:僕は多分無限ですね! TVとか見てても、他にすごく忙しい方っているじゃないですか。その方にできるなら、僕はそれ以上のことが出来る自信はありますね。そう言い聞かせないとダメかもしれない。卓球選手としての自分はつねにあると思います。自分は卓球で一生懸命やってきて、誰よりも向き合ってきたという自信がある。今はやっていることは違っても、根底にあるのは同じだと思います。だから今が一番楽しいかもしれないですね。

 

==OA曲==

M.  カイト  /  嵐

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