燃料価格高騰で銭湯が苦境。廃業加速で生活困窮者の利用に懸念

森本毅郎 スタンバイ!

ロシアのプーチン政権によるウクライナ侵攻の影響を受け燃料価格の高騰が続いていて、その対策は7月10日(日)後に行われる参議院選挙の争点の1つとなっています。この燃料高騰のあおりを受けている業界として、今回は銭湯に注目しました。

■湯沸かしに必要なガスや重油が大幅に値上がり

燃料価格高騰によって銭湯が具体的にどんな現状にあるのか。東京都墨田区で「押上温泉 大黒湯」など3つの銭湯を運営する有限会社金沢浴場の新保卓也さんのお話です。

有限会社金沢浴場 代表取締役 新保卓也さん:

銭湯って昔は薪を使ってお風呂沸かしてたんですけれども、今はガスを使用されてる銭湯が結構多いんですね。それでうちの方も全ての店舗、ガスでやっておりまして、ガスの経費の方が月100万円上がってるということになりますので、経営を結構圧迫されてます。このガスの値上げはかなり大きくて、耐え切れない銭湯がやっぱり今後も増えていくと思うんですね。

新保さんが運営する3つの銭湯の合計で月100万円のガス代値上がり。そのほか、湯沸かし用ボイラーを使っている銭湯では燃料となる重油の価格も上昇しています。この燃料高騰が起こる以前も、様々な要因から銭湯の数は減少傾向にあります。かつては一般的だった「風呂無し物件」が減少したことで客数が減少、それによって収入が減り、古くなった設備を更新することが難しい。また、経営者が高齢化し跡継ぎがいない。さらに新型コロナの感染拡大による利用客の減少、そこに追い打ちをかけるように燃料高騰。こうした背景から、2017年からの5年間で東京都内の銭湯はおよそ100軒が廃業しています。(東京都浴場組合調べ)

■東京都が入浴料値上げ、しかし安定経営には足りない…

こうした中、新保さんは、元々実家が経営していた大黒湯を受け継いだうえで、近隣で経営者が高齢化し跡取りが見つかっていなかった2つの銭湯の経営も引き継ぎ、銭湯の文化を残すために奮闘されているのですが、銭湯の特殊な料金体系の影響もあり、厳しい経営を迫られています。

有限会社金沢浴場 代表取締役 新保卓也さん:

公衆浴場の場合、物価統制令によって1回の入浴料金が定められているんですね。7月15日から大人の料金が、今480円なんですけど500円に値上げするということを東京都が発表してまして、この理由としてガス代の値上げが大きかったという説明は頂いています。本来このガス代の値上げにより、567円が適当な金額だということだったんですけれども、生活の一部として銭湯というのがありますので、今回の値上げは500円にとどめたということを言ってました。もうここは各銭湯、経営努力をもうかなりしているんですけれども、そこをしていくしかないと思ってます。

この燃料価格の影響で本来は567円の値上げが相当だと東京都側も試算しているにも関わらず、500円への値上げにとどめたとなると、残りの67円分は各銭湯の経営努力にゆだねられ、独自に客数を増やす施策や、経費の削減などをしなければなりません。新保さんはツイッターでも「67円の穴埋めは何かしら補助金対策があれば、生き残る銭湯も増えるかもしれない」と訴えています。

■銭湯が無くなると、生活困窮者に影響

もし67円の穴埋めができず、さらに銭湯の廃業が進んでしまうと、銭湯を本当に必要としている人が困ってしまいます。生活に困窮し、格安の風呂無し物件に住んでいる方、路上生活者の方などです。北区赤羽の飲食店「ソーシャルコミュニティめぐりや」は、コロナを機に去年9月まで生活困窮者向けに無料で弁当を配布し、それと同時に、都内の銭湯で使える「共通入浴券」を独自に購入、困窮者に無償で配ることもあったといいます。めぐりやの店長、橋本哲男さんです。

ソーシャルコミュニティめぐりや 店長 橋本哲男さん

生活保護を申請に区役所に行きたいという方が、区役所に行く前にお風呂に入りたいということで、どんなサービスができるかなと思ったときに、東京都で「共通入浴券」というのを出していると聞いたので、その存在を知って必要な方に配布するということもしました。綺麗な体で役所に行くっていうことは彼にとってすごい大事なことなので。すごく後ろ向きで役所が怖くてなかなか行かれない人だったんですけど、少し前向きになった。やっぱり衣食住も大事なんですけど、お風呂に入ってその清潔な体を維持するっていうのも、人生を前向きに生きていくにあたってとても大事なことだと思うので、銭湯はなくならないで欲しいなというふうに思ってますけどね。

北区内でも銭湯の閉店が相次ぎ、めぐりやが支援の一環で購入した都の共通入浴券(東京都公衆浴場業生活衛生同業組合が発行)も6月1日から10枚4400円から4500円に値上げされ、今後ますます銭湯を利用しづらくなってしまう懸念があります。橋本さんは「困窮者などに対するサービスはそのまま継続してほしいし、もっと充実させてほしい」と仰っていました。

(TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」取材:中村友美)

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