ラジオ番組をTwitter・YouTubeでも!新規リスナーとの接点をつくる新しい音声コンテンツへの挑戦/福井康平・新籾洋介【ラジオ職人のお仕事図鑑】

TBSラジオでは、2022年の春から番組の同時ライブ配信を本格スタート。『パンサー向井の#ふらっと』といった生放送番組を、YouTubeやTwitterでも聴けるようになりました。

さらに、7月10日に投開票がおこなわれる参院選の選挙特番「開票ライブ!参院選2022」でも、この同時ライブ配信を実施予定!

今回は、そんなTBSラジオの同時ライブ配信の立役者で、UXプランニング部の福井さんと、技術部の新籾(あらもみ)さんに、その裏側についてうかがいました。
 

『#ふらっと』などの新番組で同時ライブ配信が本格スタート!

——まずは、TBSラジオの同時ライブ配信(サイマル放送)について教えてください。

福井さん(以下、福井):多くのリスナーさんに馴染みのある同時ライブ配信といえば、アプリ「radiko」かと思います。それに加えてTBSラジオが最近力を入れているのが、YouTubeやTwitterでのライブ配信です。

新籾さん(以下、新籾):radikoではCMなども含めて聴くことができますが、こちらでは権利の関係上、基本的にCMや楽曲は流れません。CM中は、フィラー音楽と呼ばれるBGMを流したり、映像には蓋絵(※静止画)を差し込んだりしています。


——YouTubeやTwitterでの配信なら、CM中以外は出演者の映像も見ることができるのでしょうか?

福井:『アシタノカレッジ』『井上貴博 土曜日の「あ」』など一部の番組では、パーソナリティの様子も動画で配信しています。

それ以外の番組では、そのスタジオの音声卓を映しています。ときどきミキサーに座っている人の手が映り込むこともあって、そこはライブ配信ならではですね。

——今年始まった新番組でも、YouTubeやTwitterでライブ配信をしているとうかがいました。

新籾:『パンサー向井の#ふらっと』『井上貴博 土曜日の「あ」』をはじめ、以前から放送している『荻上チキ・Session』『森本毅郎 スタンバイ!』などの番組でライブ配信を始めました。それ以前からYouTubeでのライブ配信をしていたのが、2020年秋から放送している『アシタノカレッジ』です。

福井:『アシタノカレッジ』は、実はYouTubeでのライブ配信ありきで始まった番組なんです。そこで布石を打っておいて、今年の新番組から本腰を入れ始めた形ですね。
 

「YouTubeで音声コンテンツを楽しむ人と、TBSラジオの接点をつくりたい」

——TBSラジオがライブ配信に力を入れるようになったのには、どんな経緯があったのでしょうか?

新籾:単発イベントなどでのライブ配信は数年前からおこなっていて、僕自身、音声ミキサーや映像を切り替えるスイッチャーを担当してきました。

ただ当時は、ラジオ好きなリスナーさん向けに、プラスアルファの価値を提供する目的での配信だったんです。

一方、今年春から始まったYouTubeやTwitterでのサイマル放送では、ラジオにあまり馴染みのない方に聴いてほしいという思いがあります。

——ラジオに馴染みのない人、ですか?

福井:わかりやすくいえば、ラジオ機器やradikoでラジオを聴かないような方。というのも、新卒の採用面接などで「ラジオをなにで聴きますか?」と質問すると、YouTubeとか、Podcastって答えが返ってくるんです。

それを聞いて、最近はラジオ=音声コンテンツで、必ずしもラジオ局がつくる放送コンテンツではない認識なんだなと。


——たしかに、最近では一般の方でも音声コンテンツを配信できる環境が整っていますよね。

福井:そうなんですよ。たとえばタレントさんがYouTubeで公開している「〇〇のラジオ」みたいな企画も含めて、トークメインのコンテンツを“ラジオ”として楽しんでいる感覚なんですよね。

そんな音声コンテンツは好きだけどTBSラジオをまだ聴いたことがないという方々との接点をつくることができればと、ライブ配信をスタートしました。

——そこで、おふたりが中心になって配信実現に向けて動いていったわけですね。

福井:社内外の調整などは方針を出した私が進めていって、技術部の協力なしでは実現できない機材面などは、新籾さんに協力してもらいました。

僕は今メディア戦略を立てる立場にいるのですが、以前は新籾さんと同じ技術部に所属していたんです。

その頃から、新籾さんは技術スタッフの誰よりも配信の動向をチェックしているような人で。ここは新籾さんしかいないと声をかけました(笑)。

新籾:10年くらい前ですかね。当時、動画サービスのUstreamで、定点カメラを前に1~2人が喋ってる生配信をよく見かけたんです。それから、ラジオと映像の配信には親和性があるんじゃないかとずっと思ってて。だから声をかけてもらったときには、「これはチャンスだ!」と参加を決めました。
 

少人数で作り上げる「ラジオ以上、テレビ未満」のコンテンツ


——YouTubeなどでのライブ配信を実現するまでに、苦労はありましたか?

福井:権利処理の問題は調整が大変でしたね。

番組内で流す楽曲をはじめ、番組テーマ曲も権利をクリアしなければ配信では流せないので、それが配信のハードルにもなっていました。

たとえば「#ふらっと」でいうと、番組OPとEDのテーマ曲、交通情報テーマ曲を関取花さんに作っていただきました。こういった曲については直接交渉しライブ配信でも流せるようになりました。

新籾:「スタンバイ」も、それまでずっと使ってたテーマ曲を変えたんですよね。

福井:そうそう。森本(毅郎)さんに配信のことを相談したところ、「やろうよ!」と快諾していただいて。番組開始当初から使ってきたテーマソングの曲調やメロディはそのままに、配信のためにリメイクしました。

——ライブ配信には、機材の調整や刷新も必要になるかと思いますが、技術面についてはいかがでしたか?

新籾:2021年の3月にスタジオの設備更新があって、それがライブ配信実現の後押しになりました。

そのときの更新では、音声ミキサーといった最新機材を導入するだけでなく、スタジオを映像配信を想定した仕様に変更したんです。


——ライブ配信を見越して、どんな機材を取り入れたんですか?

福井:配信用にカメラ機材を取り入れたほか、映像の映りを考慮してより明るいLED照明に交換するなど、スタジオのレイアウトも工夫しました。

新籾:あとは、カメラやパソコン製品の種類に好みがあるように、機材の種類によっては使いやすさも変わってくるんですよね。

今回の更新では、動画配信も見据えた予算を立てたので、ここぞとばかりに僕の希望通りに揃えてもらいました(笑)。


——実際の配信は、どのようにおこなわれているのでしょうか。

新籾:『アシタノカレッジ』のように出演者の映像ありの配信では、3つの定点カメラを設置して、出演者のマイク音声に応じて、自動で映像がスイッチングされる設定になっているんです。

個人的には、“ラジオ以上、テレビ未満”のものを出したいと思っています。

生放送のスタジオには、特番などでも5~6人、それ以外だと最低3人のスタッフしかいません。ラジオはどうしても少人数になるので、配信のクオリティはシステムの設定でカバーしています。

選挙特番でもライブ配信を実施!注目は、ラジオならではの“深堀り力”

——「開票ライブ!参院選2022」でも、同時ライブ配信をするとお聞きしました。昨年の選挙特番も大盛り上がりだったそうですね。

福井:選挙特番の同時ライブ配信をしたのは去年が初めてだったんですが、反響がすごくて。

YouTubeの再生数はのべ12万、Twitterのライブ配信ではトレンド上位に表示されたこともあって、553万を超える再生数を記録しました。


——すごい再生数ですね……!

福井:ラジオとテレビでは、選挙特番の作り方が違うんですよね。

テレビの場合は、政党へのインタビューをハイライト的にどんどん切り出していくのに対して、TBSラジオでは、荻上チキさんが各政党代表にインタビューで切り込んで深堀りしていく形をとっています。

ここが、じっくり深く知りたいという方に評価いただけたのかなという印象です。

——選挙特番で初のライブ配信とのことでしたが、当日はどんな雰囲気だったのでしょうか?

福井:荻上さんや制作スタッフからは、「ありきたりな質問じゃなくて、番組を聴いている皆さんが本当に思っていることを質問をするぞ」という意気込みを感じましたね。TBSラジオは選挙報道に力を入れていて、毎回、社員みんな気合いが入ってます。

新籾:僕はスイッチャーを、福井さんはテロップを担当していたんですが、みんなバタバタしてましたね。あれほど規模の大きいライブ配信は初めてだったので、大変でした。

福井:制作スタッフも慣れてないから、原稿渡すのにしばらくカメラに見切れてた、なんてこともありました(笑)。

新籾:そうそう。急に出演者が増えて隣のスタジオにカメラを追加して出したけどカメラ位置が悪くて顔が映らない、みたいな(笑)。

だから、評判が良かったことはかなり意外だったんです。そこはやはりコンテンツ力なのかなと思います。


——7月10日の「開票ライブ!参院選2022」も楽しみです!

福井:まさにこの取材の前にも特番に向けて会議をしていたところで、今は、準備の真っ最中です。まだ詳しいことは言えませんが、ぜひ楽しみにしてもらえばと思います。

新籾:去年のバタバタ感を減らしつつ、前回を超えるものを提供するには何ができるか検討しています。映像的にも、クオリティの高いものをお届けしたいですね。

福井:キャスティングやコンテンツの深さも含めて、ラジオ局ならではの音声コンテンツ、「これがラジオだ」っていうものを作れるのが、TBSラジオの強みだと思っています。

ぜひ、この選挙特番がTBSラジオリスナー以外の方にも聴いていただけるきっかけになれば嬉しいです!

(左)福井康平/2005年にTBSラジオに入社。技術部で放送ミキサー、中継業務、スタジオ設備やマスター放送設備の構築などを担当した後、2019年より編成部(現UXプラニング部)で配信等デジタル関連コンテンツサービス戦略、運用を担当。

(右)新籾洋介/2001年テレコムサウンズ(現TBSグロウディア)入社。JUNKのミキサーや中継業務を担当し、コンテンツのLIVE配信にも積極的に関わっていた。現在はJUNKおぎやはぎのめがねびいき、爆笑問題の日曜サンデー、アフター6ジャンクション、生島ヒロシのおはよう定食/一直線を担当。

 

 

JRN・TBSラジオ報道特別番組「開票ライブ!参院選2022」
~多様な声を政治に直接届ける選挙特番

放送時間:2022年7月10日(日)20:00~25:00 
司会:荻上チキ
出演:武田砂鉄、安田菜津紀、能條桃子、日比麻音子ほか
速報チーム:蓮見孝之、南部広美、澤田大樹(解説担当)
政党中継チーム:崎山敏也、楠葉絵美、加藤奈央ほか
https://www.tbsradio.jp/articles/55909/

 

Photo:持田薫 Writing:市川茜 Edit:ツドイ
 

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