「気候変動を含む環境問題は人権問題である」国連人権理事会が決議を採択

人権TODAY

今回のテーマは「『気候変動を含む環境問題は人権問題である』国連人権理事会が決議を採択」

 

7月になったばかりなのに、東京都心でも連日の猛暑。世界を見てみても、ヨーロッパで、熱波の影響によって6月では異例の40度前後の気温となった地域も多数あり、世界気象機関(WMO)は「気候変動によって異常気象の発生頻度が増加している」と指摘しています。

このように近年深刻な気候変動問題に関連して、今回は、2021年10月に国連人権理事会が、気候変動を含む環境問題が人権の問題であるという認識に立った決議、その名も「安全でクリーンで健康的で持続的な環境への権利」決議を採択したという話題を取り上げます。まずは、なぜ環境問題が人権に関わるのか。地球温暖化防止に取り組む認定NPO法人「気候ネットワーク」 理事長の浅岡美恵さんに聞きました。

 

「地球温暖化によって気候変動がどんどん激化し、深刻になり、そのことによって人々の生命や健康が害されていくと。命にも関わるような暑さ、熱波。さらに極端な雨の降り方。土砂災害が起こって、そこで人々が命を失う。あるいは、河川が氾濫をして、住居とか田畑とか水没してしまって、生活基盤を失ってしまう。これを、人権への侵害であると。それは人々の、人間の活動によって地球温暖化が引き起こされているということは疑う余地がないと、世界の科学者達によるIPCC(気候変動に関する政府間パネル)も2021年に断定しました」(認定NPO法人「気候ネットワーク」理事長の浅岡美恵さん)

環境問題による人権侵害が人の活動によって引き起こされているという指摘。例えば人々が電気を使うために火力発電を稼働させると、その際に温室効果ガスが排出され、地球温暖化の原因となり、熱中症で亡くなる方もいれば、気候変動に伴う豪雨が原因で亡くなる方もいます。そのほか、水俣病などの公害問題も、環境に関する人権問題です。高度経済成長期に工場から有害物質が排出されたことが原因でその地域に住む人々に深刻な健康被害をもたらしました。このような、環境問題と人権問題の関係については既にパリ協定など様々な場で触れられてはいたのですが、去年国連人権理事会が決議を採択したことについて、浅岡さんは、「環境問題は人権問題であり、対策をとる責務があることが『世界の国々の総意である』と示されたことに意義がある」といいます。そしてこの決議書の序文には、特に保護すべき人々についても指摘されています。

「大変な暴風雨地帯、サイクロンがたくさんやってくるようなフィリピンのような所とか、非常に気候変動の影響に脆弱な地域という言い方をしますけれども、そうした地域に住む人たち。あるいは貧しくて対策が取れない地域で暮らす人々。また、高齢者とか持病を持っておられる方というのは疾病にかかりやすい。それから女性が気候変動の影響をより受けやすい。特に貧しい地域では、水汲みは女性の仕事であったりしてそれがより困難になるとか。」(認定NPO法人「気候ネットワーク」理事長の浅岡美恵さん)

社会的弱者の方々が、気候変動においても弱者と捉えらえているんです。決議文では「先住民、高齢者、障がい者、女性、少女など、環境被害に対してとりわけ脆弱な立場にある人々のニーズ、正確で適切な情報を得る公共の権利、 政府の環境に関する意思決定に実効的に参加する権利、実効性のある救済措置を受ける権利」について示されています。しかし、この国連人権理事会の決議は理事国47か国のうち43か国が賛成、4カ国が棄権。この棄権した4か国はロシア、中国、インド、そして日本なんです。浅岡さんは日本の棄権の背景について「環境問題による人権問題は対象となるものの幅が広く、国の責任が広がっていく可能性を懸念したのでは」と説明しますが、浅岡さんは日本の対応についてこのような指摘をしています。

「誰かが頑張って対策すればいいということではなくて、どの国もが、それぞれの応分な責任を果たしていって初めて、なんとか被害を最小化できる、食い止めることができる。こういう問題になっているわけですね。そうした流れの中に日本が抵抗勢力として世界に姿をさらしたと。これは世界に対しても申し訳ないし恥ずかしいことだし、日本の国内にとっても、こうした認識で人権への取り組みとか気候変動への取り組みがなされるということは、非常に対策が遅れるということになると。」(認定NPO法人「気候ネットワーク」理事長の浅岡美恵さん)

浅岡さんは、「自分もいつか環境による人権侵害の当事者になるかもしれない。また、自分が当事者にならなくても、子供達の世代がそうなるかもしれない。それ以上に、今まさに生命の危機にさらされてるような脆弱な地域に住む人々に共感力を持てるのかが問われている」として、日本政府に対し、環境への権利保障に向けた積極的な取り組みを求めています。 

(担当:中村友美)

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