【文字起こし】障害者の投票のバリア

森本毅郎 スタンバイ!

6月30日(木)放送の『森本毅郎・スタンバイ!』内のコーナー「現場にアタック」。7月10日(日)の参議院選挙を前に、「障害者と選挙」というテーマで取材しました。

こちらでは、放送内容を全文、文字起こししてお届けします。

 

===以下、文字起こし===

森 本:今朝の担当は田中ひとみさんです。

田 中:おはようございます。

森 本・遠 藤:おはようございます。

田 中:7月10日の参院選に向けて、障害のある方たちが投票しやすい環境を求めて声をあげています。民間団体の日本障害者協議会は、先日、心身に障害がある人や家族に調査を行いまして、およそ200の「困りごと」を集めて、国に改善を求める要請書を提出しました。

こちら、具体的にどんなことに困っているのか?

まずは、ご自身も全盲という、代表の、藤井克徳さんに伺いました。

■「情報」の壁

NPO法人日本障害者協議会・代表 藤井克徳さん:

まず事前の段階で言うと、「選挙公報」あるいは「政見放送」等でですね、非常にバリアが多い。

具体的に言うと、目の見えない人の中には、点字の選挙広報に関しては、何も義務規定がないんですね。

そうすると、うちの市町村は点字の選挙公報が来たんだけれども、うちは来なかったとかね、投票日の1日前にですね、やっと届くとか。事前の情報格差が非常に大きいということは、特に視覚障害者が多かったです。

事前の情報保障がまず足りない。

※NPO法人日本障害者協議会・代表 藤井克徳さん

森 本:なるほど。

田 中:様々な壁があるようなんですが…

森 本:「情報」だな。

田 中:はい、まず「情報」に壁があると。

森 本:そうだね。

田 中:視覚障害のある人には選挙公報の情報を、「民間の団体」が「点字版」や「音声版」「拡大文字版」にして、届ける活動があるんですが、こちらは義務ではないので、ちゃんと届かないということがあるようです。

森 本:そうだな。

※一般財団法人 全日本ろうあ連盟・理事の倉野直紀さん(手話通訳は同連盟の梅澤仁士さんに担当いただきました)

田 中:そしてさらに、耳=聴覚に障害のある方も大変なようで、こちらは「全日本ろうあ連盟」の倉野直紀さんに話を伺ったのですが、 政見放送や街頭演説で見かける「手話通訳」や「字幕」。こちらも実は、義務化されているものではないので、あったりなかったりと、ここにも壁があるようです。

森 本:もう情報格差がすごく出ちゃうってことですよね。

田 中:そうなんです。

※政見放送での手話通訳は「可」であり、「義務」ではありません。(全日本ろうあ連盟提供)

田 中:で、海外とは広報などの仕組みが違うので一概に比較することはできないんですけれども、世界では国連で採択された「障害者の権利に関する条約」というものがあります。

日本も2014年に批准しているのですが、その中身、29条では、「他の者と平等に、政治的活動に完全に参加することを確保する」と書かれていますので、日本はこれを批准していながら、現在はこの権利が保障されていない状況ということがわかってきます。

森 本:そうかそうか。

 

■全盲でも自力で記入

田 中:ということで様々、障害者の情報格差が浮き彫りになったわけですが、先ほどの藤井さんは、目の不自由なご自身の実体験として、「投票所での困りごと」も教えてくれました。

NPO法人日本障害者協議会・代表 藤井克徳さん:

投票所に入ると、家族が投票行為に付き添っちゃいけないっていう風になってるんです。従って、選管が準備した担当者が「代筆」って制度があるんだけども、しかしやっぱり自分の投票行為っていうのが、ある面では思想信条を覗かれるっていうような感じもあって、やっぱり嫌なんです。

だから家で一生懸命「枠」を作って、鉛筆で練習していくんだけども、それでも枠から外れたら無効投票ってなったり、文字と文字が重なったら駄目って言われちゃうわけで、非常に投票した後、あんまり後味が良くないんですね。

でも、自分が書いたことを他人に見られるよりも、なおマシであると。無効になっても。そういうような状態なんですよ。

森 本:これは大変だな…。

田 中:自分の投票内容が他人に見られるっていうのは抵抗感を感じる…

森 本:そりゃそうですよね。普通はね、見られないようになってるんだからね。

田 中:そうなんですよ。理解できますよね。で、これ、自分で書くのが難しい人は、投票所の担当者に記入してもらう「代理投票」っていう制度を利用したこともあるそうなんですが、職員が顔見知りだったりすると特に、「投票の秘密」っていうのを不安視していますよね。

森 本:そりゃそうだ。

田 中:一方で、点字による投票=「点字投票」っていうものもあるんですが、実は、全盲の障害者の中で点字を使えるのはわずか5%前後しかいないそうなので、誰もが「点字投票」を利用できるわけでもないそうです。

そして、自宅から郵便で投票できる「郵便投票」という制度もあるんですけれども、この制度はかなり限定的で、対象が。重度の身体障害者や要介護5の人に限られていて、全盲の藤井さんは利用することができません。

森 本:できないと。

田 中:はい、利用したくても。ということで、藤井さんは、やむを得ず、自力で投票用紙に名前を練習して書いているそうです。

森 本:ね、練習してね。

田 中:そうなんです。枠からはみ出てなかったかなと心配しながら帰宅するということで。

森 本:はい。

田 中:ただ、アメリカでは2002年に、「投票支援法」というものが成立していて、視覚などに障害のある方が自分一人で投票できる機械を、少なくとも一台は、設置することを義務づけています。

森 本:投票所に一台必ずあるようにしてあるんだ。

田 中:はい、秘密はちゃんと守られます。

森 本:そうかそうか。

田 中:さらに、オーストラリアでは電話で投票できるシステムがあったりと、是非、こう言ったものを日本でも安心して投票できるような仕組みを導入して欲しいと仰っていました。

 

■選挙はバロメーター

田 中:あとは他にも、「投票所への移動」の福祉サービスを充実させたり、「投票所のバリアフリー化」を徹底したり、様々なところに投票の、選挙の壁があるんだということがわかってきましたが、最後に藤井さんは、こんな指摘をしていました。

NPO法人日本障害者協議会・代表 藤井克徳さん:

私は、各国の「障害者と投票」の状況を見ればですね、その国の障害者の置かれてる状況が、象徴的に見えてくる。

もっと言うと、「人権水準のバロメーター」と言っていいと思うんですね。その点でやっぱり日本っていうのは、まだまだ弱く脆い社会に留まっているっていう風に言っていいと思うんです。

政治に参加したいのにできないってことですから、これは苦しいですよね。

だって、法律でも予算でも、みんな国会議員で決まってくるわけですよね。

それを選ぶのに参加できないっていうのは、差別をされた感覚。外されてるっていうような感覚をね、持つのは当たり前だと思うんですよね。

近いところにありながら最も遠く感じるのが投票所。

これが障害者の実感じゃないでしょうかね。

田 中:もちろん公職選挙法を改正しないとできない課題もあるんですけれども、「投票したくてもできない人」がいることは、やはり人権にかかわる切実な問題です。

森 本:そうだね

田 中:だからこそ一方で、「投票できるのにしない人」がいることについて。これを私たちがどう捉えていくか、っていうところも突き付けられていますし…7月10日投票です。

森 本:だから投票所のね、やっぱり投票支援っていうのは、アメリカの例なんかをさっき聞いたけれども、機械を設置すれば、まずそれで一つ解決できるわけだから、そんなに難しい話じゃないように思うんですよね。やる気さえあれば、そういうものを設置すれば良いわけだから。

田 中:海外には良い事例たくさんありますので、

森 本:参考にしてにしてね。

田 中:参考にしていただきたいと思います。

===文字起こし終了===

 

弱者の声を政治に反映して、公職選挙法を改正するためにも、当事者の一票が投じられるべきなのに、それが出来ない。

どんな障害があっても、情報を得て、投票できる権利は保障されるべきではないでしょうか。

 

(TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」取材:田中ひとみ)

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