いとうせいこう×斎藤幸平1

スナックSDGs powered by みんな電力

土曜日の夜、ラジオの中にオープンする社交場が、「スナックSDGs」。 
毎週いろいろなお客さまを迎えて「この星の未来」を話し合う番組です。 
スナックのホストは、再エネソムリエの大石英司とTBSアナウンサー上村彩子。 
今回のお客さまは、いとうせいこうさん と 斎藤幸平さん です。 
 

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いとうせいこう

活字に映像に音楽と様々な分野で活躍するクリエーター。累計30万部のベストセラーになった小説『想像ラジオ』、ノンフィクションでは、『国境なき医師団を見にいく』など著書多数。2021年には、福島県に「いとうせいこう発電所」をオープンして電気の生産も始めている。 


斎藤幸平

1987年生まれ。東京大学大学院・総合文化研究科の准教授。社会の行き詰まりを打破するためには、「今こそ、資本主義から脱却すべき」と書いた著書、『人新世の「資本論」』は新書大賞を受賞。45万部を超えるベストセラーとなっている。 
 


今回のSDGsは・・・

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―IPCCのレポートが伝える本当の気候危機

 

上村 
今夜、話していきたいのは、気候危機の問題です。国連の IPCC(気候変動に関する政府間パネル)がまとめた最新の報告書は、去年の夏に、「人間活動による温暖化が起きていることは疑う余地がない」と初めて断定しているんですが、その続編のレポートが、今年の2月、そして、4月に続けて発表されています。斉藤さん、このレポートから、どんなことが分かってきたんでしょうか?



斎藤 
このレポートには、今後、気候変動が進んでいくことで、山火事や洪水、干ばつ、そうしたことに起因する食糧危機や水不足などのリスクが飛躍的に進化していくということが非常に詳細に書かれているんですね。 
それだけじゃなくて、今、たとえば戦争との関連で、ウクライナの難民問題は結構大きな人道問題になっていますけれども、この報告書でも、今後2050年ぐらいまでのスパンに、一億人から二億人規模で、今住んでいる場所を気候変動を理由に移住しなければいけない人たちが出てくるという、膨大な人々が移住させられるというような予測が出ています。 
こんなことが起きたら、社会は非常に不安定化していくし、場合によっては新しいまた別の紛争が起きるかもしれなくて、これはもう、コロナが終わっても、もう明けることがないような慢性的な緊急事態、それぐらいの本当の危機に直面しているということが今わかってきています。 
日本も全然関係のない話ではなくて、今後台風とかも大型化することになれば、たとえば東京なんかでも、江戸川区であれば江戸川や荒川が氾濫するかもしれない。さまざまな土砂崩れなどのリスクも高まります。 
また、日本は外国からの食料に非常に多くの食べ物が依存していますから、外国で食料危機が起きれば、日本にも大きな影響がすぐに出てしまう。そういう、全然無関係じゃない問題だということを忘れてはいけないと思います。



いとう 
しかも、この戦争は、直接エネルギー危機にも関係しているわけだから、エネルギー問題という意味ではCO2の問題をどうするのかっていうことでも繋がっていますよね。 
いろんな人に話を聞くと、たとえばロシア軍が原発を占拠するようなことが起きたら、という想定もあって、ヨーロッパ、特にドイツでは今までの計画を前倒しにして再生エネルギーの方にグッと進めようというような流れになっているみたいなんですけど、そういったことは日本では全く報道されずに原発再稼働の問題に結びつけているだけなんですよね。 
だから、情報がものすごく遮断されている状態の中で、こういう気候危機が進んでいるんだなっていうような気が僕はすごくするんだけど。



斎藤 
ほんとそうですよね。だから実際には今エネルギー価格とか食料価格が上がっているのは事実なんですけど、それが結局、じゃあやっぱり原発を止めちゃいけなかったんじゃないか、というような話になってしまうと、私たちにとっては、たしかに電力の値段が上がってしまうというのは生活をより逼迫することにはなるけれども、短期的に対策を取ろうということで石炭火力原発を再稼働していく、という道を選んでしまえば、長期的に見ればむしろ破局に向かってしまう。そういう非常に難しい舵取りを迫られる中で、長期的なリスク、短期的なリスクはどうなっているのかっていうような議論すらも十分に行われないままになんとなく流されてしまっているのは民主主義としてどうなのかな、と思いますよね。

 


―ウクライナ侵攻で、再エネ価格も高騰!?

 

大石 
お二人には、「みんな電力」の顔の見える電気も使っていただいていて、ご迷惑をおかけしちゃうんですけどね。これからちょっとずつ、やっぱり料金は上がっていきますよたぶん。TBS ラジオのリスナーさんも結構「みんな電力」の電気使ってくれいてる方が多いんですけども、自然エネルギーを使っているんですよ。 
そこで、考えると思うんですね。”自然エネルギーって太陽とか風力の電気じゃないの?“と、ウクライナで起こっている戦争でLNGが不足して、それで、どうして再生可能エネルギーの電気代が上がるの? っていうことって、すごい不思議じゃないですか?



いとう 
それは、しつこいぐらい、しっかり話してもらった方がいいと思うんですけど。どういう仕組みなんですか。



大石 
これは、過去に決まった取り決めの中で、再生可能エネルギーの価値っていうのは、市場価格相当だ、みたいなルールが決められているんです。そういう取り決めがなされているんで、資源価格に応じて再エネの価格も上がったり下がったりしているっていうことです。



いとう 
なんのための再エネかわかんないですね。



大石 
そうですね。僕たちも、お客様に説明する時、困っちゃうんです。 
太陽とか風力の電気なのにどうして値段上がっているんですか? って言われても、そういう取り決めなんです、という説明しかできない。私たちもおかしいと思うから、そのルール変えてよっていう話もするんですけども。 
これから多分もっとその変動が激しくなると思うんで、本来だったらこれって、自然エネルギーを普及させるいいチャンスではあるんですね。自然エネルギーだったらそれがある意味固定化されるとか。もちろん不安定だからうまくそこはバランス取らなきゃいけないんですけども、でも普及させるチャンスでもあるんだけど、なかなかその議論にもならないなっていうのは、今のところありますよね。



斎藤 
もったいないですよね。石油価格が上がっているぶん太陽光の方が安いじゃないか、ってなるはずなのになぜか一般の人たちのイメージだと、電気代が上がっていて、「再エネの効率が悪いせいなんじゃないか」みたいなイメージだけが流布しているっていうのはほんともったいないです。



いとう 
しかもその、取り決め自体をなかなか変えないっていうことも、いかにも資本主義の末期の状態だっていうことがよくわかる。もうちょっと健全な資本主義であれば安い方にマーケットが広がればいい話なんだけど、既得権益がそういうことをしないようになって硬直化しているという、一番良くないケースですよね。



大石 
エネルギーの業界はサプライサイドからルールが決まっているんですね。消費者サイドは無視されているというか。このルールでやるよ。俺らは供給してやっているんだ、っていうようなルール設計なんです。



いとう 
しかもこれはその、そこで転換をしている国々もあって彼らの方はやっぱり未来の方にきちんと近づいていっていることがわかるのに、我々はこの制度を維持すれば維持するするほどものすごい勢いで遅れていっているっていうことなんだよね。違う社会を作れるチャンスなのにそこから遠ざかっているっていうのは残念以上のものですね。 
新しい枠組みが必要だと思います。消費者、使っている人たちが、こういうクレバーなやり方をしましょうよ、こういう未来のビジョンを持ちましょうよ、という風に運動していく、世論喚起していく必要がありますよね。



大石 
RE100と呼ばれる、再エネを100%使っている企業さんも同じ悩みを抱えているんですよ。気候危機を防ごうぜっていうことでいろんな企業再エネを使い始めたんだけど、使った企業から高騰するわけですよ。



斎藤 
おかしいですよね。頑張っていいことしようとしている人たちがより負担しなくちゃいけなくて、環境に悪いものを使っている人たちが得をするシステム。



大石 
一斉に声をしっかり上げて国に伝えていくことでそのルール改正を呼びかけたいですね。僕らだけだと、なかなか力不足で。

 


―エネルギーは自分たちで作ればいい?

 

いとう 
たとえばね。僕は「いとうせいこう発電所」っていうのを、作らせてもらっているじゃないですか。それで、「いとうせいこう発電所の利点」としてあると思っているのは、規模が小さいってことなんですよ。 
規模が小さいからいろんな変化に対応できるんじゃないかとか、あるいは、いわゆる大企業の再エネの人たちが持っているような制限っていうものから抜ける可能性があるんじゃないかと。それはつまり、斎藤くんが言っているようなそのコミュニティ、コモンの問題みたいなもので、たとえば 「僕の持っている1000枚のパネルは、ある程度の地域まで潤わせることにする」とすると、これは全国に売るわけじゃないわけだから、みんなで分け合うために作ったんだ!という風に方向転換するとするならばその、「市場価格と連動する」というところから外れていっても良い可能性って無いですか?



大石 
あると思います、それは。



いとう 
僕はね、それが全国でいっぱいできればいいんだって思うんですよ。 
それぞれの場所で、バラバラの人達がその一つの集合の中で、より良い再エネ、より良いエネルギー制作をする、というのが可能になるんじゃないかっていうところに一気に行っちゃいたいんですけどね。



斎藤 
それって今非常に重要で、再生可能エネルギーって分散型で、ローカルで民主的だと思うんですよね。今、化石燃料っていうのがいかに独裁政権と親和的で、その懐を潤しているかがわかって、しかも気候変動も推し進めているっていう最悪な状態なわけですよね。こういう戦争を止めるためにも、再エネを進めていくことが独裁政権の資金を止めることにもなるし、自国のエネルギー安全保障を強化することにもなるし、当然、気候変動を止めることにもなるっていう意味で、今こそこういう動きを加速させていきたいなと。 
値段は上がっちゃっているけど、怖気付くのではなくて、さらにこの転換を進めていくしか平和への道はないじゃないかっていう思いを強くしています。



いとう 
「安全保障」ってことをやたら言ってくる人がいるけど、その問題に関しても、再エネじゃないと危ないじゃないか、と思うんですよ。50何機の原発を海岸沿いに持っていて、そんなところを他の国が狙わないわけないだろうと。再エネはどこをやられても別のところで同じことができるから代替がきく。大急ぎで進めるべきだと思います。



斎藤 
今この社会のエネルギー価格の上昇っていうのは別に再エネのせいじゃなくて、やっぱり化石燃料に基づいた社会の脆弱さ・リスクが露わになっているんですよね。 
結局私たちの社会は化石燃料に基づいて動いているけど、その化石燃料が外国の、しかもある独裁的なところから来ている。自分たちのエネルギーの根幹さえも実は独裁政権に握られているっていうのは非常に恐ろしいことであって、やっぱり民主主義をしっかり守っていくためにもエネルギーを自給していくことが必要で、日本は石油とか出ないんだから、太陽光とか風力を増やしていくってことしかないんじゃないかなって思いますよね。



いとう 
そうなんですよね。原子力発電だってウランがどっから来ているのかって、輸入を止められちゃったら、もう何もできないっていうことをもう一度考えた方がいいと思うよね。全部、輸入に頼っているんだと。そこが切られちゃったら、もうなんにも意見が言えなくなるっていうことは今まさに見ているわけで。 
結構な割合で先進国以外の人達っていうのがやっぱりロシアに歯向かえない。ないしは、先進国が勝手なこと言っているけど、俺たちは俺たちで昔ながらのやり方で、なんでやっちゃいけないんだよ、っていうような恨みみたいなものも感じるぐらいの状態だと思うんだけど。 
そういうことを考えると、やはり、なるべく早く再生エネルギーということにしていった方が我々は安全だと言えるんですよね。



斎藤 
そうですね。先進国が再エネとかも独占してしまうんじゃなくて、技術支援も含めて、途上国やグローバルサウスって呼ばれるような国々への支援をして、できるだけ早く化石燃料依存から一緒に脱却していくような動きを作っていく、っていうのが、本来、日本が国際的な舞台で果たすべき政治的役割なんじゃないかと思います。 

 

 

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