いとうせいこう×斎藤幸平3

スナックSDGs powered by みんな電力

土曜日の夜、ラジオの中にオープンする社交場が、「スナックSDGs」。 
毎週いろいろなお客さまを迎えて「この星の未来」を話し合う番組です。 
スナックのホストは、再エネソムリエの大石英司とTBSアナウンサー上村彩子。 
今回のお客さまは、いとうせいこうさん と 斎藤幸平さん です。 
 

         ↓放送音源はコチラ!

 


いとうせいこう

活字に映像に音楽と様々な分野で活躍するクリエーター。累計30万部のベストセラーになった小説『想像ラジオ』、ノンフィクションでは、『国境なき医師団を見にいく』など著書多数。2021年には、福島県に「いとうせいこう発電所」をオープンして電気の生産も始めている。 


斎藤幸平

1987年生まれ。東京大学大学院・総合文化研究科の准教授。社会の行き詰まりを打破するためには、「今こそ、資本主義から脱却すべき」と書いた著書、『人新世の「資本論」』は新書大賞を受賞。45万部を超えるベストセラーとなっている。 
 


今回のSDGsは・・・

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―コロナ禍で加速した格差

 

上村 
先日、ある新聞社が行った格差に関する全国世論調査では、今の日本で格差が深刻だと答えた人の数、「ものすごく」と「ある程度」を含めて88%という結果です。この88%という数字、とてつもなく高いですが、どのように受け止めますか?



斎藤 
やっぱりコロナ禍で格差の問題ってすごく露わになっていますし、テレワークができて大して影響を受けてない人たちと、テレワークもできないのに長時間で低賃金で働いているエッセンシャルワーカーと呼ばれる人たちがいて、それは「こんなのやってられるか」って思うし、やっぱりそういう意味で社会全体に閉塞感はすごい広まっていると思うんですよね。 「人新世の資本論」 は今45万部とかですけど、これはやっぱり、今の社会で本当に大丈夫だろうか、もっと何か別のやり方を考えなきゃいけないんじゃないか、というふうに多くの人達が考えている、感じているって言う事の表れだっていう風に思います。 

何かきっかけがあって、これがうまくいくんだっていうことを、誰かがある種パイオニア的に示すことができれば、みんな着いてくるかもしれないですし、そうなってくれば、結構、加速度的に、今までのやり方がガラガラと崩れるのが始まるんじゃないですかね。



いとう 
88%というのは、もうそれが実感だと思いますね。ヒリヒリするような実感。あの人たち大変だなっていう人たち、僕は大変だなっていう人たちが本当にたくさんいるということはもうほんとよくわかりますよ。 商店街に行ったらわかるじゃないですか。もうシャッター閉まっちゃっているとことか、みんながもう見ていると思う。東京の中であんなにゴーストタウンみたいなものが生まれているのを見るって、 僕、生まれてからはじめてだからね。どうなっちゃうのかなこの国は、って思うんですよ。組合っていう中間団体がなくなっちゃった。商店街みたいな、中間団体みたいなものも機能しなくなっちゃったっていうのも大きいと思うんだけど、新しく急いで作って、酒屋さんとどっかの焼き鳥屋さんと、どこどこが共同でネットワークして何かお互い融通し合うとかってことをもうほんとに速やかにやっていかないといけない。 

本当は公助がやるべき問題だから、自助で結局乗り越えたのかって言われるのも悔しい話なんだけど、でもそれを言ってられない時が来ているんじゃないかと。我々は我々のやり方で、自分たちをやっぱり一つネットワーキングし直さなきゃいけない。繋ぎ直さなければいけない、ってことは確実だと思いますね。今はちょっとだいぶ変わっちゃったんだけど、浅草に20年ぐらい住んでいた時期があるんですよ。

で、最初の頃はもう完全に浅草が終わった時期だったんですね。全然人がいない。でも、街の人たちはお祭をやっているから、青年部とか、それぞれがすごく結びついているんですね。で、ある時期まで、なるべくチェーン店を入れなかったんです彼らは。本当によく戦っていたと思う。それをやっていたおかげで独自の店ばかりあったから、もう一回注目し直されて、一気にあんなに人が来るようになったんですね。それで、今はまあ大きいチェーンも入るようになってしまったけれど、まだなんとか彼らは、なるべく自分たちが独自でありたいという欲望は持っているし、それはお祭りが支えているんです。文化が支えるんだなーっていうことが本当によくわかる。それをまず作んなきゃいけない。 

誇りを持てる文化みたいなもの、その地域独自のものを誰かが見つけて一緒にその場所の人たちと作っていく。発表の場を作っていく。そのことによって再編し直さないといけないんだな、という風に思っていますね。


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―世の中が変わる数字は「3.5%」!

 


上村 
「2030年までに世界中の誰一人取り残さない」というSDGsの認知度は、民間の調査では、7割以上になってきています。世界が良い方向に向かっていると信じたい一方で、現実には今この瞬間にも戦争が起きてしまっています。私たち人間はもう変われないのではないか、という諦めのような風潮もあると思いますが、私たちはこれからどのように立ち向かえばいいのでしょうか。



斉藤 
たしかにね、諦めたくなるような、人間って本当に愚かだなと思う時もありますけれど、ただ他方で数年前を振り返ると、こんなマルクスマルクス言っている私がこの SDGsを掲げるTBSラジオの番組に呼ばれるような状況が来るなんて思ってもいなかったですし、そういう意味で言えば、やっぱり世の中の空気って大きく変わっているなと思うんですよね。 それこそ気候変動の問題だって、数年前だったらそもそも誰も興味も持っていなかったし、こういう番組で時間を取って議論されるようなことじゃなかったけれど、たとえば、グレタ・トゥーンベリさんが出てきたことで私たちの考え方とか価値観って大きく変わりましたよね。 

そういう意味で言えば、やっぱり数年とかでも、思っていた以上の変化は起きているし、まだまだ諦めちゃいけないと思う。もちろんやらなきゃいけないこと、変わらなきゃいけないことはたくさんあるけれども、そこは本当に 「人新世の資本論」 以降、ずっと言っている 「3.5%」 ですよね。 変化を起こすのが過半数の人である必要はなくて、閉塞感を感じている人たちの中で一部の人たちが本気で動き出せば後はついてくるんだから3.5%がとにかく死ぬ気で動き出す。余裕がある人たちですね。さっきの格差の話もありますが、今、本当に大勢の人たちが苦しんでいて余裕がない。 私とかは多少余裕があるから、いっぱいもっとみんなのためにできることをやる。そういう人たちが3.5%集まればこの社会も大きく変わると信じています。



いとう 
あとはつまり、「では何をすればいいのか」 っていうことで悩んでいるんだと思うんですよね、みんな。意識は変わっているんだけど自分は何もすることができない、無力である。そういうことに責め苛まれてメンタル的にもちょっと病んでいってしまったりする人達をいっぱい見てきていますけど、やっぱり斎藤くんが言っていることはすごく希望のあることで、3.5%ですよね。僕でいえば、やっぱり、小さいところで成功例を作るんだっていうことは、全く同じことだと思うんです。 

これまでの長い何千年という歴史でも、そういう3.5%なり小さな成功例なりいうものが、たとえばローマのどこかの都市がすごく面白いことをやってる、とかっていうことが新しい政治を産んだり芸術を産んだりしてきたっていうのは事実なので、僕らはそのことを、歴史をよく振り返ってみておく必要がある。 
そこに実際に変えた人たちがいた歴史が必ずあるから、迷ったら下を向いているべきではないなっていう。どこかでやはり希望を持って進まなければ、絶望的なんだけど、進まなければいけないなっていうのはやっぱり思いますね。 
 

 

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