男性の育休を広げる取り組み。今年度から始まった改正育児・介護休業法

森本毅郎 スタンバイ!

働き方改革やジェンダーギャップの解消が意識される中、課題になっているのが「男性の育児休業」。厚生労働省の2020年の調査では、男性の取得率は、わずか12・7%とかなり低い数字ですが、この男性の育児休業の取得を広げるため、実は今年度から「改正育児・介護休業法」が施行され、企業には、さまざまな義務が課されました。

そこで、施行から3ヶ月経って、成果は出ているのか?取材しました。

 

■「聞く」「公開」が義務化

まずは、今年度から始まった改正育児・介護休業法について、特定社会保険労務士の羽田未希さんに伺いました。

特定社会保険労務士 羽田未希さん:

今回の改正の趣旨というのは、男性の育児参加を促して、男性の育児休業取得率を向上させることです。

2022年4月からは、育児休業の制度について個別に周知して、育児休業を取得するかどうか、本人の意向を確認することも、事業主に義務化された。このとき、育児休業の取得を妨げるような言動をしてはいけないということです。

2023年4月1日からは、従業員数1000人を超える企業が、育児休業取得状況を公表する、これが義務化されます。外部から、育児休業に対して積極的に会社が支援しているのかどうか、ということが目に見えるという形になります。

※特定社会保険労務士 羽田未希さん

この改正法は、今年4月から、男性の育児休業取得を広げる施策を企業に求めています。

具体的には、上司などに育児休業の理解を広げるための研修の実施や、相談窓口の設置、また、「育休を取りたいけど言い出せない」ということがないように、会社の側から積極的に、「育休を取りたいか」本人の意向を聞くことが、義務化されました。

さらに10月からは、育休とは別に、出産直後に休みが取れる男性版産休「産後パパ育休」が開始。そして来年度からは、従業員1000人以上の企業は、育休の取得状況の公開が義務になります。

今は、人手不足なので、この育休の取得率が低いと、 「優秀な人が来てくれないかもしれない」として、 企業が動くことも狙っているようです。

 

■育休を必須にした会社

では、改正法施行から3ヶ月で、状況はどう変わったか?調べてみると、この4月に合わせて、独自に社内の制度を強化したところがありました。その一つ、パーティション(間仕切)のメーカー「コマニー」の人事課、銭田眞一さんに伺いました。

コマニー株式会社 人事課 銭田眞一さん:

4月から、男性女性ともに「育児休業を1ヶ月間取ってください」という制度をスタートしました。

その1ヶ月間については、通常であれば「育児休業」ということで、給料が出ない制度になってるんですが、我々の方では、この1ヶ月間については給料を全額出しますと。

さらにこの1ヶ月間は賞与についても「出勤した」というふうにみなして、賞与についても影響が出ないような制度となってます。さらにこの休業者をサポートしてくれた他の従業員に対しても、評価をしていくというふうにさせて頂いています。

育児休業っていうことが、当たり前の会社風土を築いていくということを実現するという点で、従業員には「必ず取ってください」と、「必須」という言い方をさせてもらいました。

※育休取得者に配られる「家族ミーティングシート」で、育休の取得プランを立てます(コマニー提供)
※「イクキュー通信」を発信(コマニー提供)
※「イクキュー通信」に載っている社員の体験談(コマニー提供)

育休は、男性の皆さんも、取りたくないわけではないが、取りにくい、というのが実態です。その取りにくさは、給料、同僚、上司と様々な理由がありますが、こちらの会社では、これらをまとめて解決するような新しい制度を作り、「必ずとってください」と必須化しました。

また、育児休業は休業扱いなので、普通は給料は出ません。代わりに雇用保険から「育児休業給付金」が出ますが、これは給料の67%程度なので、目減りしてしまいます。そこでこちらでは、給料が満額出るように補助することにして、ボーナスも減らない仕組みにしました。

そして、同僚への負担が増えるだけという状況も改善するように、仕事を引き継いだ同僚を評価する制度も構築しています。

 

■育休中も給料が減らない

では、社内の育休取得、3ヶ月でどれくらい取得が進んだのか。こちらは従業員およそ1200人の会社ですが、4月以降7人にお子さんが生まれ、そのうち6人が育休を取得、もう1人も取得予定ということで、現状、取得率100%を達成しています。

※コマニー株式会社 人事課 銭田眞一さん

確かにすごいのですが、休んでいる人に給料を全額出すのは、かなりコストがかかるのではと思ったので、銭田さんに聞きました。

コマニー株式会社 人事課 銭田眞一さん:

コストは我々「ゼロ」だと考えてるんです。というのは、給料は出すんですけれども、今まで皆さん、育児休業なんて取ってこなかったので、給料出してたんですね。育休取らなくて給料出して。

今からは、育休とるけど給料出すので、確かに人がいなくなる分出すんですけども、それは「家で家事という家事や育児という仕事をしている」というふうに捉えて給料を出すので、我々としてはコストはないっていうふうに考えてます。

「家の仕事」っていうふうに捉えているんですけれども、自分の家が充実していて初めて、職場でも生き生きと仕事ができるんじゃないかなと思うんです。

それは両方とも同じように仕事というふうに考えているっていうのが当社の考え方です。

確かに、新たなキャッシュアウトは、ほぼない形…

もちろん、最初は、育休が出るたびに、効率が落ちたり、売り上げに影響するかもしれないけれど、家事も仕事という文化が会社に浸透すれば、育休以外の普段でも、早く帰れるように、無駄な仕事を減らしたり、効率化を進めたりして、会社にもプラスになるはずということでした。 

育休取得については、家庭のあり方、働き方の変化に合わせて、会社も制度を整えていく必要がありそうです。

 

(TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」取材:田中ひとみ)

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