元受刑者などの話が聞ける「刑務所ラジオ」

人権TODAY

今回は…東京都府中市のコミュニティFM局が放送している番組「刑務所ラジオ」を紹介します。

「刑務所ラジオ」は4月から毎月第2・第4月曜日の夜10時から30分間、東京府中FM、通称「ラジオフチューズ」で放送された、元受刑者やその家族、支援者などが出演して話す番組です。企画した「監獄人権センター」は受刑者やその家族などの相談を受けたり、刑事施設の制度や待遇の実態調査を行っているNPO法人です。1995年に弁護士や大学の研究者によって設立され、受刑者の支援を組織的に行った草分け的な団体です。現在、弁護士など7~8名のスタッフで運営しているそうです。

法人名に「監獄」というものものしい言葉が使われているのは、団体が設立された95年には刑事施設の規則や受刑者などの処遇を定めた法律が「監獄法」だったことに由来しています。2006年に法改正があり条文の上で「監獄」という言葉は「刑事収容施設」に置き換えられました。(2006年5月24日施行「刑事収容施設及び受刑者の処遇等に関する法律」)しかし同NPOは刑務所が「監獄」と呼ばれていた時代にあった懲らしめとして刑罰を課し閉じこめる場所という理念に変わりはないと考え、法人名にあえて「監獄」という名称を残してます。

「刑務所ラジオ」の番組づくりを担当したのは、このNPOの事務局スタッフ塩田祐子さんです。刑務所を知らない人々に、受刑者や出所者などの言葉を届けたいと番組を企画し、「ソーシャル・ジャスティス基金」という市民基金から助成を受けて、6回の予定で番組を作りました。塩田さんは番組に対する思いをこのように語っています。

「毎回、元受刑者の人には必ず出てもらうことは決めてまして、支援者とか弁護士みたいな関わってる人が前に出るのではなくて、当事者の人が直接話をされる、その人のお声だとか話しかたもそのまま伝える、編集をあまり加えないということをイメージしてます。出演者には、このラジオ以外で、公の場でご自分の話をされることは今後ないだろうという方を選んでます。ただ、まったく知らない方に突然オファーすることはなく、知り合いだったとか、ご縁があった方にお願いするようにしてます。普段お会いした時に雑談で出る、こういうことで悩んでおられたとの言葉にすごくリアリティがあるので、もしチャンスがあれば、おっしゃりたいのはこういうことじゃないかなと想像しながら質問を振るようにしています。」(塩田祐子さん)

あまり他のメディアに出る機会のない元受刑者の方たちが出演してじっくり話すのがこの番組のオリジナルな部分です。語り慣れてない人たちの言葉から悩みや困難が生々しく伝わってきます。これまで5回、放送がありましたが、第1回は薬物使用で服役された人、第2回は今も入所中の受刑者ご家族、母親と妹に気持ちを聞き、3回目は少年院2回、刑務所2回入所経験のある当事者が刑務所と少年院の違いを話しました。4回目はもと受刑者を支援する弁護士に、5回目は犯罪被害者のご遺族になった後、人生が一変してご自身も刑務所に入ってしまった当事者に聞いています。「監獄人権センター」のような支援団体が一般リスナーに向け、当事者の声を届けるラジオ番組を作るのはおそらく初ということです。(YouTubeなどネット動画での配信された先例はあります)

ラジオ番組として制作した理由は、塩田さんが熱心なラジオリスナーで、かつては放送作家をめざしていたので、NPOの新しい取組みとしてラジオ番組を作ってみたそうです。塩田さんは出演交渉から台本作成、番組進行まで一人でこなしています。

また「監獄人権センター」スタッフとして働く匿名のクマさんは薬物使用で2回の服役経験がありますが「刑務所ラジオ」に出演してそこで服役中の経験や出所後に大変だったことなどを語っています。当事者として「刑務所ラジオ」を通して何を伝えたいのか聞きました。

「社会に認められなかった人が刑務所に入ることが多いと思うので、周囲が承認してあげれば、認めて、普通に接してくれる人が多いほど、再犯する人は少なくなるんじゃないかと僕は思ってます。出所者って(外見だけでは)分からないかもしれないですけど、真面目にやろうとしているのにうまくいかない人たちが多くいると思うので、僕もその中のひとりですけれど、そういう人たちの苦労とか、一所懸命やろうとしてるんだよ、ということを知ってほしい。そうしたことを一般の人にいっぱい聞いて欲しいというのが、僕が「刑務所ラジオ」で伝えたいことですね。」(クマさん)

「刑務所ラジオ」は刑務所を出所した人たちや、ご家族などの生の声を聞けるとても貴重なメディアです。受刑者や出所者への誤解や偏見をなくすためにも、当事者の言葉に耳をかたむけるのは大切だと思います。ただし6月27日(月)の放送をもって予定していた定時放送6回分が終了になります。今後は過去の放送音声をネット上にアーカイブして公開したり、これまでの放送をラジオフチューズで改めて再放送することも考えているそうですが、具体的にはまだ未定です。

最後に、塩田さんにこれまでの放送へのリスナーの反響や今後の展望などを聞きました

「聞いた方からは「番組を続けてほしい」というお声はいただいてます。あとは自分の回りに受刑者の支援で頑張っている人がいるから出してあげたらどうですか、とかいう反響もありました。私たちのNPOはこれまで刑務所の中にいる受刑者の悩み相談を手紙などで受けることが多くて、「刑務所ラジオ」で出所された方の困り事に応えようというのはわりと新しい取組みです。服役中の方からのお悩み相談でも「出所後のことが不安だ」とか、「どこに相談したらいいかわからない」とか、そういうお問い合せが非常に多かったんです。ただ今までは「ここに相談してみてください」と役所の窓口などを(手紙で)お送りすることしかできていなかったので、これからはもっと具体的にその方たちのお困り事に寄り添っていければいいなとは思ってます。」(塩田祐子さん)

とても有意義な続けてほしい取組みですが、同じ助成金は受けられないので今後はクラウドファンディングなど自分たちで資金調達して新しい番組を制作することを構想しているそうです。

改めて「監獄ラジオ」は6月27日(月)夜10時からの放送と7月3日(日)の再放送があります。ラジオフチューズは府中市にお住まいの方はFM87.4MHzで聞けます。 
https://radio-fuchues.tokyo/

またインターネットで全国のコミュニティFM放送が聞ける「ListnRadio(リスラジ)」のサイトやアプリからも聴取可能です。 
http://listenradio.jp/

「刑務所ラジオ」の今後の予定は「監獄人権センター」のホームページや「ラジオフチューズ」の番組表などに掲載されますので参考にしてください。 
https://prisonersrights.org/ 
https://prisonersrights.org/info/925-2/

(担当・フリーライター 藤木TDC)

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