「少年議会」で10代から政治参加を

森本毅郎 スタンバイ!

6月22日(水)は参議院選挙の公示日でしたが、前回の参院選では投票率が5割を割り込み、投票率の低さが課題でした。そんな中、国政選挙の投票率で、3回連続で全国1位なのが山形県。3年前の参院選は60・74%で、全国平均の48・80%と比べても非常に高い水準です。

そんな山形県では、政治への関心を高める取り組みが様々行われており、きょうは、その中の一つ、山形県・遊佐町(ゆざまち)の「少年議会」について取材しました。

 

■中高生のための議会

まずは遊佐町の「少年議会」とはどんなものか。遊佐町役場の風間雅文さんに伺いました。

遊佐町役場 教育委員会教育課 社会教育係 風間雅文さん:

遊佐町役場では、2003年から「遊佐町少年議会」というものを活動させていただいております。

遊佐町在住、もしくは在学のどちらかの要件を満たしている中高生が対象となりまして、立候補をして、定員を超えるようなことがあれば選挙も行うんですけれども、遊佐町の若者の代表として政策を立案していくような流れになっています。

実際に所信表明をしたり、政策を立案をしたり、遊佐町から45万円という予算を割り振らせていただいているんですけれども、その予算の中から政策を全て実現していくような形になります。

遊佐町の中高生がまちづくりを考える、若者で構成された議会が、「少年議会」です。

同じような取り組みは、他の自治体でもありますが、遊佐町の議会は、集まって話すだけという形式的なものではなく、使える予算が45万円あり、それを町のためになるものに使うために、政策提言や一般質問など、大人の議会と同じ仕組みで議会が進むのが特徴。中学生の平均のお小遣いは月2200円程度なので、45万円というのは180か月分のお小遣いに当たる大きな額。町民から集めた税金を無駄にしないように議論する、責任を伴った取り組みです。

もちろん、議会のメンバーになるには「選挙」もあって、選挙権、被選挙権を持つのは、町内在住、在学の中高生。

※投票の様子(遊佐町役場提供)

立候補にあたってはマニフェストも掲げるという徹底ぶりで、ちょうど先週、今年度6月から始まる議会に関して選挙が行われ、候補者16名に対して10名の少年議員が選出されました。

 

■駅に手作りベンチを設置

このように大人顔負けの仕組みなんですが、実際に、遊佐町少年議会はどんな施策を実現させてきたのか。昨年まで「少年町長」を務めていた、現在大学2年生の斎藤愛彩(あや)さんに、話を聞きました。

遊佐町少年議会 元少年町長 斎藤愛彩さん:

私自身は、JRの駅とか公共施設に、手作りのベンチを設置しました。

JRの場合は、一時間に一本あるかないかなんですけど、下校の時間帯と丁度重なるので、立っている学生で溢れかえっている状態。駅の一般の利用者にとってもすごく迷惑になっていたので、せめて座る場所だけでも欲しいよねということで設置しました。

ベンチのデザインとか、一から少年議会が考えて、町の工務店の方にこの形で作って下さいっていうのをお願いして、自分たちでペンキで絵を描いて、見ても楽しい、可愛いベンチを設置しました。

町に何かを作り、影響を与えているのは大人だけなんじゃないかっていう感覚もあったので、自分にだって街は変えられると本気で思うようになりました。

※遊佐駅に設置した、少年議会手作りのベンチ

議会ではまず、遊佐町の全中高生を対象にしたアンケートを取って、同世代のニーズの聞き取りから始まります。こちらのベンチの他にも、バスケットのリングが欲しいとか、町の音楽イベントを実施したり、町の特産品のお米をモチーフにしたイメージキャラクターを作ったり、さまざまな施策が形になっています。

※遊佐町のマスコットキャラクター「米ぇ~ちゃん」
※町をPRするかるた「ゆざっこかるた」

さらに、予算でまかないきれない大きなものは、大人の議会で協議されて、通学路に、街路灯や雪よけの柵が設置されたり、若者の意見が積極的に取り入れられています。

そんな中で、遊佐町の若者の政治参加の意識も高まっています。昨年の衆院選の遊佐町の18歳の投票率を見ると、63・53%。全国の18歳の投票率50・36%と比べて大幅に上回っていて、やはり、政治参加への意欲を示す若者が多いことがわかります。

 

■遊佐町の為に大学で学び、戻りたい

そして先ほど、お話を聞いた齋藤さんは、現在遊佐町を出て、山形市の大学で町作りの手法を学んでいるそうですが、少年議会を卒業した後も、こんな活動を続けています。 

※東北芸術工科大学(デザイン工学部・コミュニティデザイン学科)で街づくりについて学ぶ齋藤愛彩さん。庄内地域を盛り上げる学生団体「ショウナイユースプロジェクト」の代表でもあります。

遊佐町少年議会 元少年町長 斎藤愛彩さん:

遊佐町を含む「庄内地域」の魅力を発信したいっていうので、学生団体を立ち上げました。庄内地方に住む面白いと思った大人に取材しに行って、自分たちの地元にはこんなに面白い人がいるよっていうのを紹介したりとか、新しい芋煮を提案しよう、「創作芋煮会」、それをまた記事にするとか、庄内をフィールドにやりたいことがあったら、とりあえずこのチームに投げてみる。

でも、中学校のときに同じクラスだった子たちにいま会って話すと、あの頃のアヤちゃんは「絶対都会に出て行ってやる、こんな田舎大っ嫌いだ」って言っていたのが印象的で、まさかそんなアヤちゃんが遊佐町のために何かをしようとしているのがびっくりだと言われますね。

少年議会に入っていなかったら、出会っていなかったら、こんな風には絶対になっていなかったと思います。

周りに一面田んぼばかりで、近くにコンビニもない。何もない町に生まれ育った自分をすごく不幸に感じていたそうですが、少年議会の活動を通して町の魅力を知った今、いずれは遊佐町に戻って、遊佐町の教育に関わる仕事がしたいと話していました。

投票率の低下には様々な理由がありますが、こうした、自分たちの未来を自分たちで決める政治参加を学べる仕組みには、学べることもありそうです。
 

 

(TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」取材:田中ひとみ)

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