川口市や蕨市に暮らすクルド人の料理と暮らしがわかる本「クルドの食卓」

人権TODAY

 2022年4月、「クルドの食卓」という本が出版されました。著者の中島直美さんは埼玉県の川口市在住。日本にいる、主にトルコから来た2000人余りのクルド人はほとんど、川口市や蕨市とその周辺、埼玉県南部に暮らしています。中島さんにとっての「隣人」と一緒に作った本です。
 「クルドの食卓」の料理のレシピや写真、記事などで協力したのは、川口市内に暮らす3人のクルド人女性。そのうちの1人が5月、中島さんが自宅で開いている料理教室でボランティア講師をつとめているところを崎山記者が取材しました。

作ったのは、「クルドの食卓」にある33のレシピのうち、「カトマジャペニール」(チーズを挟んだ、半月状のクルド風ピザ)と「サラタ」(クルドの定番のサラダ。レタスやトマト、キュウリのほか、赤キャベツやパセリを使うのが特徴)

 参加者は崎山記者も含め4人。まず、床にソフレという布を広げます。これはクルド人にとってはテーブルのようなもの。そこで食事をしたり、料理をします。作っておいたピザ生地を棒を使って薄く伸ばすのですが、なかなかコツをつかめず、参加者は苦戦していました。また、「カトマジャペニール」には本来、「ヤギのチーズ」を使います。しかし、日本では入手が難しいので、ボランティア講師の女性が牛乳から作った自家製チーズで代用しました。地域には、イスラムの教えに基づいたハラルの食材を扱う店が増えて、いろいろ手に入りやすくなっていますが、手に入りにくい食材や道具については、「クルドの食卓」にも、日本のもので代用する方法が載っています。

 二つの料理に加え、ちょっと作るのが難しい「ピスタチオをたっぷり使った甘いデザート」を女性が作り、クルド風にチャイ、お茶を入れて、一緒に食べました。食べながら、いろんな質問が出たのですが、例えば「お米を食べますか?」という質問。「日本に慣れたので、お米は良く食べます」という答えに、中島さんが「日本に来る前から、向こうでもお米は食べるよね」と言うと、「食べるけど、ゲルミ(ピラフのようなもの)みたいに、たまに作るんです」という答え。毎日食べるのは、(日本でいう)パンだそうです。

 迫害から逃れ、トルコからビザの要らない日本へやってくるクルド人の中には、何らかの過程を経て在留資格を得た人もいますが、難民認定は認められず、その多くは在留資格を更新できずに失い、働けない、移動の自由がない、健康保険もない、不安定な状態で暮らしています。そんな中、日々、家庭で作って家族と食べている料理が本になったことや、料理を教えたり、おしゃべりしたりする機会があることを、クルドの女性たちは喜んでいるようでした。ピザづくりで、チーズをのせている最中、ボランティア講師の女性は「私がすごくやりたいのは、料理など自分の文化に関わることを日本人と一緒にやることです」と話していました。
 中島さんも「『クルドの食卓』という本を一緒に作って、完成したことを彼女たちはすごく喜んでます。本を出版してよかったことはそれが一番かな。いるのにいないことにされてる人たちにとって、自分たちのことを取り上げてくれる本がある、それも、みなさん自分の得意な料理を満面の笑みで作り、それが本になった、というのはとてもうれしいんだと思います」と話します。そのうえで、「この本の食卓は、ここ、川口に暮らしているクルドの人たちの食卓です。ここじゃないとできない本だと本当に思うんです。ここに暮らしてる人たちがいてできた本です」と付け加えました。

 「クルドの食卓」の出版を企画し、中島さんに提案したのも、地元川口市にある出版社「ぶなのもり」です。掲載されている料理や道具、作っているところの写真も、女性たちの自宅の普段の暮らしの中で撮影しました。また、本には料理のレシピだけでなく、中東や、日本に来てからのクルド人の状況の簡単な解説、また、3人の女性たち、そして、トルコで生まれ、小さい時日本に来て育った10代の子供たちの、普段の食事や暮らしにまつわるトークも載っています。

 料理を入口に、様々なことを知るきっかけになる本です。

(取材担当:TBSラジオ記者 崎山敏也)

    

 出版社「ぶなのもり」:http://www.bunanomori.jp/new.php#kurdfood
 
 中島直美さんの料理教室や手芸教室のページ:https://tukcuru.wixsite.com/harika/
 

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