いとうせいこう×斎藤幸平2

スナックSDGs powered by みんな電力

土曜日の夜、ラジオの中にオープンする社交場が、「スナックSDGs」。 
毎週いろいろなお客さまを迎えて「この星の未来」を話し合う番組です。 
スナックのホストは、再エネソムリエの大石英司とTBSアナウンサー上村彩子。 
今回のお客さまは、いとうせいこうさん と 斎藤幸平さん です。 
 

          ↓放送音源はコチラ!

 


いとうせいこう

活字に映像に音楽と様々な分野で活躍するクリエーター。累計30万部のベストセラーになった小説『想像ラジオ』、ノンフィクションでは、『国境なき医師団を見にいく』など著書多数。2021年には、福島県に「いとうせいこう発電所」をオープンして電気の生産も始めている。 


斎藤幸平

1987年生まれ。東京大学大学院・総合文化研究科の准教授。社会の行き詰まりを打破するためには、「今こそ、資本主義から脱却すべき」と書いた著書、『人新世の「資本論」』は新書大賞を受賞。45万部を超えるベストセラーとなっている。 
 


今回のSDGsは・・・

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―いとうせいこうさんが電気を生産する理由

 

上村 
気候危機という大きな問題に対して、私たちには何ができるのかと考えた時に、いとうせいこうさんが始めたのが発電所です。せいこうさんは、どうして電気を作り始めたのでしょうか?



いとう 
最初はね、大石さんが、「アーティスト発電みたいなのをやりたい」って言っていたのを、聞き及んだんですよ。その時は、まだ、こんな形にはなっていなくて、あるアーティストが発電所をパネルも含めて買うっていう形だったんですけど、それは、でも、何千万円もかかるんですよ。 で、何千万円もかかるのは良くないと思って、というのも、まず、そんなにお金がないってことがあるんだけど、もう一つ、「お金持ちだからできるんだな」 っていうことを思わせたら絶対に良くない と思ったんですね。誰でも始められるような形にしなければならない。 
それで、アイディアが必要だなと思って考えていた時に、あーそうか、これバーチャルにパネルを切り分けて所有権を切り分けて、たとえば最終的に1000円でも2000円でもいいから、それで自分がパネルを持っているということにする。 その持っている分だけ電気がかえってくる、っていう風にすればいいんだって思って、それをやらせてくれないかって言ったら、やりましょうって。 

で、どこでやりましょうかねーということになったので、やっぱりそれは福島に欲しいですよねって。 福島の二本松というところにある程度の施設を僕に貸してくれるような形になって、それを「いとうせいこう発電所」って名前にしてくれたんですよ。 それが今やっている「いとうせいこう発電所」で、もうすでに契約者が大勢申し込んでくれちゃったんで今は締め切りになっていますけど。 これが水力だったらどうか風力だったらどうか、とか、あるいは、他にもたくさんいろんなメッセージを出せるような人たちが次々に誰々発電所、誰々発電所っていうことを始めていくと面白いなーっていう風に思っています。

「いとうせいこう発電所」 をやっているけど、僕自身もそんなにプロじゃないからよく知らないっていうこともあって、利用者の人達が集まっていつでも参加ができるような ネット上の会合っていうのを2回ほど開かせてもらったんだけど、そこで本当に忌憚のない意見とか質問とかがあるんですよ。「これって本当にやっているんですか?」ぐらいの感じで。 消費者生産者も、両側、顔が見えている。僕は、そのことにお金を払っていると思ってるんですね。 何も知らないでとにかく与えられて、自分たちができることはより安いもの選ぶことだけだ!っていう風に社会がなってしまったわけですよね。

それは希望のない社会になってしまっているし、資本主義が爛れていくことだと思うんだけれども、まずその、徹底的に何か知っていること、それからこれはまだ途上に過ぎないんだってことは僕はしつこく言っているんですよ。完璧な何かじゃなくて、何か問題があれば考えて一緒に変えていきましょうよって。 とにかく、突破口ではあることは確実だと僕は思うんで、その、一緒に何かを変えていくっていうことに彼らはお金を出しているんです。



斎藤 
まさにコモンというか、単に消費者としてお金を払って、どこから電気がきているのかわからないけどスイッチを点ければ明かりがつくって話じゃなくて、自分がそこにお金を出して投資をして、さらにそこの運営とかにも「みんな電力」 の人たちと一緒に関わっていく、いろんな議論ができる場がある、というのは、自分が使う電力がどこからきているのかとか、これをもっと大切にしようとかってことを考えるきっかけになります。もっと他のことでも生活を見直していったり、こういうことを広めていこうっていう、ライフスタイルの転換とかのきっかけにもなりますよね。



いとう 
そうなんだよね。情報は常に開示されているし、何時でも良い方向に、全員の話し合いで変えていける。こんなことが、まさかエネルギーでできるとは誰も思ってなかった。もっと硬直化したもんだったと思っていたけど、やりようによってはできるんじゃないかってことをやっているわけだし、だからこそ変化したいんですよ僕は。むしろ変化する姿を見せたいというか、変化しちゃいたい。 もうすでに、僕が知らない新しい技術がすでに蓄電池で出てきていたり、ものすごい細い太陽光パネルがほぼ成功してかけていたりして、そうすると何が起きるかって言うと、それ以外の所から光が下に入るから全く普通の農業ができちゃうんですよね。 

しかもこの細いものの中になるべく廃棄物ができないように次の技術を作っている。「廃棄物が結局出るじゃないか。ほら、原発と同じじゃないか」って言う人がいるけど、あれって十何年前の情報で言ってるんですよね。 
今この時も、もうすでに当然新しい社会に向かって技術者たちが次の技術を作ってるんですよ。 みんなが次々やってるんです。やっぱりね、それをオープンにする場所が、この番組もそうだけど、毎週毎週おそらく起きている新しいことを、トピックをどんどん紹介したほうがいいと思います。そうしないと、そうじゃない人たちが「再エネはやっぱり結局が安全じゃないんだ」とか「再エネは良くないんだ」っていうことを、本当に古い情報で言ってるから。 

去年の夏かな、ライブみたいなものがあって、僕も出てラップとかをしたんだけど、結構な機械を使って照明も使って1日中やったそのライブの電気は全部蓄電池から、しかもそんな大した大きさでもないパネルからとった蓄電池で全部賄ったんだけれど、その蓄電池を作ったのは、たしか下町の中年女性でした。 その人が、どうしても蓄電池をちゃんとやんなきゃダメだっていうことで、自分で開発して、ガラガラとなる、旅行の時のカバンみたいなあんなものに全部蓄電池が入ってる形を作って、可動式としてそれを三つぐらいかな、それでやりきったんですよね1日。これを見た時に、俺は度肝を抜かれた。ここまで、大企業がやってるわけじゃないことでこんなに社会が変わっているのに、なんで誰も何も言わないんだろう、おかしいんじゃないのか?言論統制されてんのか?って思いましたね。



斎藤 
結局、「これは難しい」「こういう困難がある」「何か再生可能エネルギーは安定しない」とか理由をつけて、何もしないことを言い訳しちゃっているんですよね、今の日本社会って。だけどそれをやっている間に当然新しい技術もどんどん出てきている。で、そこをうまく使って新しい持続可能な社会に展開していくような国が出てきてしまえば、ある意味それは置いてかれていくってことにもなるし、本来そこにあった自分たちの技術をより発展させていって、新しい雇用を生んでいくようなチャンスもまた失われていってしまうっていうのは本当にもったいないことですね。 
もちろん技術があれば何でもいいということではなくて、二酸化炭素を吸収する技術ができたからいくらでも別に気にしなくて生活できるっていう話ではないけれども、技術は確立しているんだからそういうものをどんどん使ってこの気候危機っていうのを乗り越える、っていうような、もっとポジティブな気持ちにしていきたいなとは思いますよね。

 


―未来を始める、村づくり!

 


いとう 
今必要なのは、理想的な、あるサイズの村を作ることなんじゃないかって思っていて、それは、アウトドアの服とかを作っていて考え方が凄く進んでいる若い子達もいっぱいいるんで、その人達が今はいろんな場所でもうそういう場所を作り始めていて、僕も呼びかけているんですよ。 新しい再エネを使って、新しい水の共有の仕方をして、農作物とかそういったものの共有もして、なおかつ常に新しい技術がそこから出ていくっていう、それが世界を変えていく可能性があると思う。

 


斎藤 
僕、それで言うと今度ちょっと仲間たちとお金を出し合って高尾山の一部を買おうかと思っていて。コモンフォレストみたいな、自然保全みたいな感じなんですけど、共同所有みたいな形にして、みんなで買うけどでも、そこのメンバー以外の普通の人たちにもいろんな形で来てもらうようにして、山菜取りとか、間伐をしたりしながら、東京の都市とかで暮らしている人たちに、自然との接点を作ってもらうことで感性をちょっと変えていくみたいな。



いとう 
いいね!じゃあその近くに村を作ればいいわけだ。新しい村!新しい太陽光パネルを導入して、常にそこで実験をみんなに見せて、こういうことができるんだっていうことを示して。下にはこんな見事に泥の中に米が出来てるじゃないかって、上にはパネルがあって三毛作4毛作になっているんだよって。 新しい農業ですよ、僕が言いたいのは。つまり、エネルギーは第一次作業なんですよね。自然から何かを直接得ることが第一次産業で農業なわけだから、これ、エネルギーも同じなんですよね。第1次産業を我々が変えていくってことはできるんじゃないのか、という風に思っているんです。



大石 
みなさん参加しながら電力のあり方も考えてもらうっていうこともできますもんね、小さな単位だったら。



いとう 
できるできる。小さければ失敗しても別にいい。それはそれで一つの実験であったっていうことで、きちんとみんながそこからヒントを得ていけばいい。でも、おそらく失敗しない。変化し続けるから。 ものすごい急いで、ある程度コンセプトがみんなに見えるものを作るべきなんですよ。真似する人がたくさん出てほしいから。で、真似すると真似の仕方が違うからバリエーションができるでしょ。画一しない。それが重要だと思うんです。



大石 
斉藤さんは、高尾山の一角を仲間たち数人で買おうとしているって言う話がありましたけど、 そう思ったきっかけって何なんですか。



斎藤 
いろんな人たちが僕の本を読んでくれて、いろんなところで、農業とかもそうだし林業かも含めてコモンっていう発想着想を得ていろんな試みを始めている方々が全国に結構いるんですよね。 で、その責任があるっていうか、僕も応援をするだけじゃなくて、そういう試みがあったら自分自身もそこに参加したい。僕は学者・研究者だからいろんなものを読んで考えるのが仕事だったけれど、やっぱり現実のいろんな人たちの今までやってきた運動と結びつくんだったら、そんなにすごいことはないし、是非行って学びたい。それで今ちょっと新しいプロジェクトを色々はじめようかなという感じですね。



いとう 
山を分割するこの考え方っていうのは、「いとうせいこう発電所」でパネルを分割してシェアするっていうのと同じ考え方だよね。コモンとしてみんなで共同で持って運営すれば大きなお金だって全然怖くないじゃないっていう。



大石 
電気の世界でも村の世界でも、コモンがどんどん進んでいるっていうのは、ちょっと希望がありますよね。 
 

 

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