東京新聞紙面連動企画・総務省の消費者物価指数、どう見る?

森本毅郎 スタンバイ!

毎週月曜日は東京新聞との紙面連動企画。今日は、「生活必需品急騰」という記事に注目しました。この記事が書かれた直前、総務省が、3月の消費者物価指数について、生鮮食品を除く総合指数では、前の年に比べ「0・8%上昇」、生鮮食品を含む総合数値では、前の年と比べ「1・2%上昇」と発表していました。

 

★必需品は急騰なのに、なぜ統計では見えにくい?

我々の生活実感とずいぶん違うな、もっと値上がりしている感じなのに・・・と違和感がありますが、この記事では、その違和感の原因を指摘していました。記事を書いた、東京新聞経済部の記者、渥美龍太さんのお話です。

●「全体の消費者物価指数というのがありまして、前の年と比べると0・8%の上昇という数字でした。これ自体はそれほど急激な上昇には見えないんですが、実際中身を見ていると、生活必需品に特化した指数というのがありまして、それを見ると4・5%、前の年と比べて上がっていた、と。自動車とか旅行・レジャー関係とか、いわゆるぜいたく品みたいなものに特化した指数を見てみると、3・3%下がっていた、と。大きく上がっているものと下がっているもの合わせて、全体として、それほど上がってないように見えていた、ということです。(0・8%、そんなもん?と思います)そうですね、だいたい生活実感とちょっとずれてないか?という気持ちになるかと思います。」

ぜいたく品が引き下げてるだけ・・・ということなんですね。

消費者物価指数はいくつかの指数がありますが、この「前年同月比0・8%上昇」という生鮮食品を除く総合指数は「コア指数」と呼ばれて、比較的重視されている数字。ただ、これは日銀が金融政策を決める時に重視する数字の1つで、一般の人は、そんなに見なくていい数字。逆に、除かれている生鮮食品など生活必需品に特化した「4・5%上昇」の方が、生活にはものすごく影響する。0・8%の上昇と、4・5%の上昇では、大違い!!

しかし、この数字は、役所が隠しているとかではなく、よく資料を見れば載っているものなので、実態を伝えるのはどの数字なのかを見て、報道しなければ、とおっしゃっており、そこで渥美さんは、今回紙面で、生活必需品は急騰しているのに統計では見えにくい理由も説明した、ということでした。国の統計の数字、と聞くと、それは客観的な事実、と信じがちですが、見せ方によってはずいぶん変わってしまうんですね・・・。我々も、自分に必要な数字はどれか、統計をどう見ればいいのか、知ることが大事。

 

★買うことができるものが少なくなっている

そこで、専門家に、今回の統計の数字から、どんなことが読み取れるのか、聞きました。野村総合研究所エグゼクティブエコノミストの木内登英さんのお話です。

●「例えば海外アメリカだとですね、景気も強いので、物価全体がいろんなもん値段上がってるってことがありますが、日本はそうではなくてですね、実際に今上がってるのはですね、まさに食料品とかガソリンとか電気料金とかですね、簡単に逃れることができない、ちょっと厄介なですね、物価の上昇になってるということだと思います。もちろん生活の環境は人によって違うんですけども、日本全体で見ると、物価の上がり方に賃金の上昇が追いついてないっていう状況ですから、段々段々と買うことができるものが少なくなってる、購買力が落ちてきてしまってると。この状態がすごく長く続くとですね、平均的に見た日本の家計はどんどん貧しくなっていくということになります。」

ぜいたく品は価格が上がれば「買わなければいい」と生活者が物価の影響から逃れることができる。しかし、今上がっているものは、生活必需品、つまり、「決してそれ無しでは生活が出来ず、しかも頻繁に購入しているもの」ということで、今の物価上昇は、簡単に逃れることのできない、ちょっと厄介な物価の上昇、と言える、ということです。さらに、「物価の上がり方に賃金の上昇が追い付いていないので、買うことのできるものが少なくなっている」というのは、非常に怖い話です。

また、食料品の値上げなどの報道も多いですが、それはメーカー段階の価格。消費者物価指数は、全国で特定の商品を特定の店舗で調査するので、例えば、小売店が頑張って値上げしない、とか、値段を据え置くと努力すると、物価統計との間に乖離が起こることもあるので、消費者物価統計が、物価の動きを正確に表してるとまでは言えないと思う、ともおっしゃっていました。

 

★生活実感に基づく物価感を見て政策を!!

ということなので、政策者の側にも生活者の物価感に目を向けてほしい、と木内さんは言います。

●「政策当局者からすると、個人の物価感がどう変わっていくか、というのは、実は重要なところなんですよね。今の物価の上昇が一時的だと思っているのか、もっと根付いてしまうのか、と。根付いてしまうとなると、今の状況だと賃金がなかなか上がらないわけですから、消費がかなり弱くなる、消費者が防衛的になるっていうサインだという風に、読むこともできるので、政策者の方からすると、実際の物価統計だけでなくて、個人あるいは企業もそうなんですけども、どういう物価感を持ってるか、っていうのを常にチェックして、それに合わせた政策対応をしていくということが、必要になって来ると思います。生活実感に基づく物価感みたいなものは非常に重要じゃないかな、と思います。」

消費者物価指数だけでなく、生活実感に基づく物価感覚を見て政策を行う事が重要。さらには、結局は、賃上げが起きてこないと改善されていかないとも話していました。

木内さんによれば、賃金上昇率は、潜在的な経済成長率が上限ということですが、日本の潜在成長率は「0・23%」、生活必需品の物価上昇の「4・5%」に及ばない。物価高対策も大切だが、日本の経済を強くする政策が必要と指摘していました。日銀の黒田総裁は「家計は値上げの許容度が高まっている」と発言しましたが、そういう生活実感とかけ離れた感覚ではなく、政策当局者こそ、生活実感に基づく物価感が非常に重要なんですが・・・。

 

取材・リポート 近堂かおり
 

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