ビヨンセ新曲『Break My Soul』リリース記念~今年の夏はハウスミュージックで生活が踊る!(高橋芳朗の音楽コラム)

ジェーン・スー 生活は踊る

高橋芳朗:本日はこんなテーマでお届けいたします。「ビヨンセ新曲『Break My Soul』リリース記念~今年の夏はハウスミュージックで生活が踊る!」

 ジェーン・スー:本当かよ?(笑) 

高橋:本当かもよ?(笑)

 スー:まあね、奇想天外なことが起こりすぎてますからね。 

高橋:まずはハウスミュージックの説明を簡単にしておきましょうか。ハウスは1970年代後半にシカゴで誕生したと言われる、ディスコミュージックをルーツとするダンスミュージック。名前は1977年にシカゴにオープンしたクラブ「Warehouse」が語源とされています。音楽的な特徴としては、いわゆる「四つ打ち」。ひとつの小節に四つバスドラムが入ります。基本的にはその「四つ打ち」のリズムがずっとループしていく構成で。これが延々と繰り返されることによって、クラブのダンスフロアで踊る人たちに陶酔感や恍惚感を与えていくわけですね。ある意味「踊る」ことの機能性に特化した音楽といいますか。このあと、実際に曲を聴いてもらえばなんとなくは理解してもらえると思います。そしてこのハウスミュージックが、ここ一週間ぐらいで急速に注目を集めているんですよ。

 スー:びっくりしたよね、ドレイクの新譜とかさ(笑)。 

高橋:ねー。R&Bシンガーのビヨンセ、ラッパーのドレイクといった現行のポップミュージックを代表する大物アーティストが、立て続けにハウスを取り入れた新作を発表して。それによって「今年の夏はハウスが流行するのでは?」と世間がざわざわし始めているんですけど、今日はそんななかで早速ハウスを取り入れたここ最近の話題作を紹介していきたいと思います。 

まずはビヨンセが6月20日に発表した新曲「Break My Soul」。7月29日リリース予定のニューアルバム『Renaissance』からの先行シングルです。ハウスはジャンルやスタイルが細分化されていてサブジャンルがたくさん存在しているんですけど、このビヨンセの新曲は1990年代前半に流行したハウスのサウンドを打ち出していて。

 スー:だからびっくりしているの。1990年代後半だったり2000年代のハウスだったらまだわかるんですけど、1990年代前半はちょっと気恥ずかしいところがあるというか。 

高橋:実際、「Break My Soul」では1993年にヒットしてハウスアンセムとして愛されているロビン・Sの「Show Me Love」を引用しています。

  

スー:もう聴いていて恥ずかしい(笑)……「恥ずかしい」っていうのは、単純にヨシくんも私もこのころがいちばんイキッていた時代だから。そのイキッていた自分を思い出して恥ずかしくなってくるっていうね。 

高橋:20代前半ぐらい? 本当にイキりまくっていたころですね(笑)。あとこのタイミングでビヨンセがハウスの曲を発表した背景としては、6月が性的マイノリティの権利について啓発を促すさまざまな取り組みが行われる「プライド月間」であること、さらにアメリカでは「黒人音楽月間」でもあることが影響しているのではないかと思っていて。というのも、もともとハウスは黒人のゲイカルチャーから生まれた経緯があるんですよ。その文化を祝福する意味も込めてのこのタイミングでのハウスミュージックの新曲ということもあるのではないかと思います。 

M1 Break My Soul / Beyoncé

  

高橋:続いては、ラッパーのドレイクの「Falling Back」。6月17日にリリースされたニューアルバム『Honestly, Nevermind』からのシングル曲です。ドレイクの場合は、これまでにもたびたびハウスミュージックに取り組んできていて。2017年にハウスを取り入れてヒットした「Passionfruit」は、日本でも人気を集めてコーネリアスやMINMIがカバーしたほか、KIRINJIによるオマージュソング「silver girl」も登場しました。

  

スー:めっちゃ人気だったよね。

 高橋:ね。「Passionfruit」については当時この番組でも特集しました。そんなこともあって、今回のドレイクのハウス路線はまた日本でも歓迎されるのでは、という気がしています。先ほどのビヨンセのパッションがほとばしるような「Break My Soul」に対して、こちらはぐっとスタイリッシュな仕上がりです。

 M2 Falling Back / Drake

  

高橋:今年ハウスミュージックを取り入れた人気アーティストの作品としては、日本に目を向けると宇多田ヒカルさんが1月にリリースしたアルバム『BADモード』がありますね。今月9日にはその収録曲のスタジオライブを収めたアルバム『Hikaru Utada Live Sessions from Air Studios』が出たばかりです。

  

高橋:次はその『BADモード』から、イギリス人DJのフローティング・ポインツがプロデュースを手掛けた「Somewhere Near Marseilles -マルセイユ辺り-」を聴いてもらいたいと思います。いまこうして夏に向けてハウスが注目を集めているのは、ポストパンデミックに向けていろいろなことが再開し始めた開放感によるところも大きいのではないかと。これから聴いてもらう「Somewhere Near Marseilles -マルセイユ辺り-」の歌詞は宇多田さんがパリに住む友人と交わしたチャットからインスピレーションを得ているそうなんですけど、途中の歌詞に「ぼくはロンドン、君はパリ/この夏合流したいね/行きやすいとこがいいね/マルセイユ辺り」なんてフレーズがあったりして。こうした気分がハウスミュージックの軽やかさとすごく相性がすごくいんですよね 

M3 Somewhere Near Marseilles -マルセイユ辺り- / 宇多田ヒカル 

高橋:ドレイクや宇多田さんのハウスは清涼感があってこれからの季節にばっちりなのではないかと。ぜひ今年の夏のバケーションのサウンドトラックとしてハウスミュージックを聴いてみてください!

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