神話から広がる漫画の世界~里中満智子さん

コシノジュンコ MASACA

里中満智子さん(Part 1)

大阪府出身の漫画家。16歳で第1回講談社新人漫画賞を受賞し、プロデビュー。以来50 年以上にわたり500タイトル以上の作品を手がけ、現在も漫画界の第一線で活躍しています。大阪芸術大学キャラクター造形学科学科長、日本漫画家協会理事長。


JK:神楽坂女声合唱団からのお付き合いよね。

里中:そうですね。すごい人とご一緒して歌うんだ!と思って。歌は全然下手なんですけど、ディナーショウの収益を動物愛護に使おうっていうことで頑張ろうと思って。入ってみたら、すごくまじめに練習するのでビックリしちゃいました(笑)

JK:今もやってるんですよ、20周年!

里中:嬉しかったのは、コシノさんオリジナルのドレスをみんなでおそろいで着て・・・一流の人の仕事は違うなあって思ったのは、不思議とみんなプロポーションがよく見えるんですよ(^^)コシノさんも気さくな方でびっくりしました。お仕事とも関連してるんでしょうが、いつもシャキッとした格好で、ヒールのある靴で・・・この気力がないとダラダラしちゃうなあって思いました(^^;)

JK:でも里中さんは自分の世界をお持ちだから。漫画界の理事長ですもの! すごい人なんだなあって思った。

里中:とんでもないです。気が付いたら流れでやってただけで。好きでやってて生きてこられたのはラッキーだなと思います。

JK:ここに山のように里中さんの作品が積み上げてあるんだけど、その中でも『古事記』を読ませていただいて。すごくお勉強になったし、自信になりました。

里中:各国の神話とかに興味があって、価値観というか美意識というか、民族ごとにあるんですよ。何を正義と感じるかとか、何を美しいと感じるか。それを知らずにこっちの価値観で見てると、うまく付き合えないんじゃないかなって。ギリシャ神話とひとくちに言われるのもヨーロッパ人の基本の物語ですよね。きっと「これがいい」っていうのがずっと残ってきたんだと思います。

里中:『古事記』でもそうなんですけど、「これって卑怯じゃない?」って思うこともあるんですよ。ヤマトタケルだって英雄みたいに言われてるけど、イズモタケルをだまし討ちしたり。でも彼にとっては、大和の国を背負っている自分として正しい行為だということなんでしょうね。面白いのは、ヤマトタケルの父親である天皇も恐れるわけですよ。「うちの息子はやり過ぎじゃないか、危ないから遠くへやったほうがいい、それで死んでもその方がいいかもしれない」って。

JK:すごい強烈ですね。身内で・・・残酷ですね。

里中:そうですよね、でも各国の神話にもあるんですよ、このパターン。親子関係、父親と息子の複雑な関係って世界共通であるんだなあって。

JK:私、手塚治虫さんの『火の鳥』の衣装をやったでしょう? それも思い出した。すごく優しい人でしたね。

里中:私たちの世界では神様のような存在なんですが、たくさん作品を描いた大先輩というだけでなく、道を作ってくださった。

JK:そうですよね、世界の道を作ってくれた!

里中:いま日本の漫画が世界からもすごいねって言われてますが、日本の漫画の独自性が世界に通じていったわけです。世界に合わせなかったんですよ。スタイルが違うってことが否定されていた時期もあったんですが、日本人はそれを意に介さずに自分たちのスタイルを貫いた。その出発点が手塚先生なんです。だから近年、とくにアメリカから「どうして日本だけが漫画が発展したんだ」って言われるんですけど、長くしゃべるのは面倒くさいから「私たちには手塚治虫がいたからです」って言ってます(笑)

出水:『古事記』もそうですが、持統天皇をテーマにした『天上の虹』、ギリシャ神話を題材にした『オデュッセウスの航海』など読み応えのある作品を数々描かれていますが、漫画なんですが情報がたくさん詰まっていて、大人になってから読むと学びがたくさんありますよね。

里中:ありがとうございます。もともと万葉集が好きで、万葉集に作品を残した方々の人生を描きたいなと思っていたんですね。その中である程度長く生きた方で、万葉歌人との接点が多い人を主人公にしたいなと思って。あとはやっぱり、私たちの仕事の場合、まだ誰も描いてない物語。持統天皇って誰も描いてないんですよ。日本神道って権力を持ったまま死んだ人って好きじゃないんですよね。

JK:万葉集って愛と夢がありますよね!

里中:本当に! なんとか万葉集を世界記録遺産にしたいなと思っているんです。万葉集の何がすごいかって、男女の差がまったくないんですよ。身分の差も関係ない。歌がテーマ別に並べてあって、反政府的な歌も平気で取り入れているんです。天皇の歌も政治犯の歌も同列。国を恨む歌も平気で載せてるし。

JK:それこそ言論の自由ですね(^^)

里中:そうです。あの時代、女性も職業をもって独立した会計を握ってましたし、後の武家社会よりも自由に仕事をしていました。その辺り日本人は忘れちゃって、昔はぎゅうぎゅうに堅苦しかったと思ってるんだけど、もともとの日本人の本質はこうじゃないかなって思いますね。けっこう自由で結婚離婚は当たり前にあったし、女性も生涯に複数の男性の子どもを産んだって・・・何も言われないかどうかは知りませんけど(^^;)でも飛鳥~奈良時代にかけては男女平等。女性の天皇も多いですしね。

里中:『古事記』でも出てきますけど、日本って信仰の中の最高神は女性なんですよ。天照大神は女性で太陽神なんです。農耕民族ってだいたい太陽神は男性なんですけど、日本は女性。日本では月の神様が男性なんです。だからなかなか不思議な国だなあと。

出水:あらゆる文献を読んで勉強されているのがよくわかります!

JK:勉強っていっても、私たちはありとあらゆることを描かなきゃいけないと思うから、若い時に集めたファッション誌とかそういうのも見たりするんです。自分の記憶もそうだし、時代の記憶も参考にして。だから昔の雑誌とかを見ると、コシノさんが出てきたころなんかは日本のファッションも活気があって、すごかったですよね!

JK:ファッションとか音楽とか、ひとつの時代の始まりみたいでしたよね。ひとつの渦の真ん中にいた、みたいな。すごく楽しかった。あの時代を知ってるから、忘れられない。ずっと持続したいなと思ってるんだけど、世の中もつねに変わるからね。

里中:みんなが未来を信じてた時代。今も信じればいいんですけど、なのに「未来がない」って好きでしょ、日本人って。

JK:未来はないわけじゃないのよ、未来は平等にある。

里中:でも懐かしい、ベルボトムとかね(笑)楽しかったなぁって。

JK:楽しい思い出って絶対忘れないし、時代が過ぎても記憶の中に残ってますよね。漫画もそう。


==OA曲==

M.  シクラメンのかほり / 布施明
 

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