靴が震えて道案内!「あしらせ」体験してみた

森本毅郎・スタンバイ!

先月、奈良県の踏切で、目の不自由な女性が列車と接触し死亡する事故がありました。この事故は、点字ブロックが劣化して剥がれていたため、足で感じられず、危険なところへ入って、事故に遭ってしまったというものでした。こうしたことが繰り返されないよう、点字ブロックの設置はちゃんとしてもらいたいですが、こうした中出てきた、点字ブロックがなくても、目の不自由な方が歩ける新しい技術について、「森本毅郎・スタンバイ!」(TBSラジオ、月~金、6:30-8:30)「現場にアタック」で取材、報告しました。

 

★靴に仕込む歩行ナビ「あしらせ」

それは靴に取り付ける新しい技術、「あしらせ」です。株式会社あしらせ の代表取締役CEO、千野 歩(ちの・わたる)さんに伺いました。

「「あしらせ」は、視覚障害者向けの歩行ナビゲーションシステム。靴に挿入して、立体的なインソールみたいな形で取り付けて、靴の 中に沿わせているようなデバイス。それがスマートフォンと連携して振動することで、足に誘導情報を伝えて、振動に従って歩いていくと、目的地まで行けるようなナビゲーションになっています。例えば、自分の向いている向きに対して、進むべき方角を、左側であれば足の左側が振動したり、後ろであれば両足のかかとが振動したり、進むべき方向っていうのを教えてくれます。」

(株式会社あしらせ・代表取締役CEO 千野 歩さん) 

▲「あしらせ」。中敷きのように靴の中に這わせて使います
▲靴に取り付けるとこんな感じ。

「あしらせ」は手のひらに乗るほどの小さな装置。柔らかいプラスチックでできています(写真)。これを靴の中に入れて、靴を履くと、足を包み込むような形になります。あとは連動するスマホアプリに目的地を入れて歩くと、
足の甲や外側、かかとがブルブルッと震えて、進むべき方向を知らせてくれます。

千野さんは、自動運転車などの技術者でしたが、おばあさまが、川に転落して亡くなったことから、「靴の中に点字ブロックが出せないか?」と着想し、独立、「あしらせ」を開発。

★体験!GPSで指示が明確

でも、本当に目的地までたどり着けるのか。実際に「あしらせ」で歩いてみました。目的地は350m先のコンビニです。

田中「普通に歩行を始めました。あっ左足の甲だけが、ブルッブルッと、間隔をおきながら振動してます。」

千野「この先、曲がり角まで行ったタイミングで左に曲がりますよっていうのを事前にお知らせをしている。」

田中「そして左の甲がブーと連続的に振動している。丁度曲がり角があったので、曲がります!曲がった途端、今度は右の甲が振動し始めました。」

千野「なので、この後は、右の方向にこの先、曲がっていきますよと。ただもうちょっと距離ありますよと繰り返す。」

田中「…あ、間隔短く両足の甲がブッブッと震え出しました。もう目的地が近いということですね?」

千野「その通りです。今、全体がブブブと鳴りましたよね。振動が止まったらここが目的地。」

田中「コンビニにつきました!」

今回は、目を開けて使ってみましたが、実際には全盲の人だけでなく、見える範囲が狭いとか、見えにくい、まぶしいなどで、日常生活で不自由を感じる「ロービジョン」といわれる状態の方の歩行を支援するための機器になります。使ってみてわかったのが、振動による指示が意外とわかりやすい。振動のテンポを変えながら徐々に曲がり角が近づいてきたことを知らせてくれるので、事前に右に寄っておこう、と判断も可能。また、これなら、手に何かを持つ必要がないので、余裕を持って歩くことができるようです。

 

★ちょっとした外出を増やして生活を豊かにしたい

この「あしらせ」があれば、今まで行ったことのない新しい場所に行くハードルも下がりそうだな、と思ったのですが、最後に千野さんは、気軽な外出こそ増やして欲しいと話していた。

 「凄い喜んでくれる、これがあればラーメン屋探しに行けると。例えばヘルパーと一緒に行くのも当然あっていいが、1人で行動したいことって人間結構ある。僕も結構奥さんに隠れてラーメン、油っこいの食べに行ったりとか、そういうのがなくなったらって思うと、結構寂しい。そういうちょっとした単独歩行で得られる自由っていうのが、実はもの凄く僕は価値が高いもの。行ってみようって思えるような背中の押し方が出来れば嬉しい。」

(株式会社あしらせ・代表取締役CEO 千野 歩さん)

目の不自由な方だけでなく、高齢者や聴覚に障がいのある方等に「あしらせ」を使てもらって、かしこまらない外出を増やして欲しい、それが豊かさに繋がるのでは、ということでした。「あしらせ」は、現在開発中で、今年中の販売を目指して動いています。

今後の課題は、五差路などの分岐が多い道などで、こういった点をクリアしていきながら、年末には、3万円~5万円程度で発売できればということでした。

 

取材・リポート:TBSラジオキャスター田中ひとみ

 

 

 

 

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