東京新聞紙面連動企画・原発 攻撃を受けたら首都圏は

森本毅郎 スタンバイ!

毎週月曜日は東京新聞との紙面連動企画。今日は、環境経済研究所が行ったあるシミュレーションの結果を大きく取り上げた「原発、攻撃受けたら首都圏は」という記事に注目しました。

 

★日本の原子炉が武力攻撃されたら・・・

まずは、何を想定したシミュレーションなのか。そして、その結果について、環境経済研究所・所長の上岡直見さんに伺いました。

●「ウクライナ問題で、原子炉に対する武力攻撃というのが浮上してきたわけですけれども、もし日本でそれが起こった場合に、という状況を想定しています。放射性物質が放出されるわけですけれども、例えば柏崎刈羽原発を想定した場合、だいたい群馬県から埼玉県の北部辺りまでが、立ち入り禁止。その南側、埼玉県・東京都・神奈川県などが、強制移住範囲というような被害が出ると思います。福島(第一原発)の場合は、中身の1%から3%程度が出てきた、ということでも、あれだけの被害になったわけなんですが、今回は、そのおそらく一桁上くらいのですね、放射性物質が出てくると。このシミュレーションは、本体の破損を想定してますけれども、貯蔵プールの方が構造的には弱いので、もしそれが破壊された場合にはさらに被害が、その数倍くらいにはなるんじゃないかと思います。」

ウクライナでは実際に原発が狙われましたが、武装勢力が押し入って、携行武器で原発を攻撃した、ということを想定したもので、全国の原発でシミュレーションしました。東京新聞の紙面では、茨城県の東海第二原発、新潟県の柏崎刈羽原発、静岡県の浜岡原発の3つのシミュレーション結果を紹介しています。

今回は、簡略化のため、地形の影響などは無視する形で、3原発とも、放射性物質が東京方面に吹く風で拡散する、上岡さん曰くの「最悪のケース」を試算したのですが、柏崎刈羽原発を想定した場合、群馬県から埼玉県の北部辺りまでが、立ち入り禁止。その南側、埼玉県・東京都・神奈川県などが、強制移住範囲。東海第二では、茨城・埼玉県・東京都の広域が立ち入り禁止。神奈川、山梨、静岡で強制移住範囲、となっていて、その被害の範囲の広さに驚きます。

 

★現在の日本の原発は、いわば逆核シェアリング

地震などによる事故ではなくて、武力攻撃を想定した今回のシミュレーション。取材をした、東京新聞・水戸支局デスク、宮尾幹成さんは、上岡さんのこんなお話も、印象深かった、とおっしゃっています。

●「ウクライナの事態なんかを見てると、原発って非常に大量の核燃料物質を置いてある場所ですから、そこを攻撃するっていうのは、非常に費用対効果が高いんですよね。ダメージを与えるという観点からすると。上岡さんがおっしゃっているのはですね、逆核シェアリングだ、と。どういうことかって言うと、日本と、仮に戦争敵対する国が出てきた場合に、日本の武力攻撃に対して、非常に脆弱な原発を、狙えば、もう敵対する国の核兵器が日本にあるのと同じじゃないか、と。それを逆核シェアリング、逆核共有という言い方で表現されてるんですけれども、たしかに、日本に対して敵対してる国から見れば、日本の原発ってそういう風に位置付けることができるのかな、というのは感じましたね。」

核シェアリングは、アメリカの核を日本に配備し、敵国からの防衛に活用しよう、というものですが、今の状態の日本の原発をこのまま放置することは、敵国からの攻撃に活用されてしまうので、いわば、逆核シェアリングだと。

というのも、宮尾さんによれば日本の原発は警備が緩いのだそう。多くは民間の警備会社が警備をしており、自衛隊が警備しているわけではない。また、原発は海沿いに多いので、海からの攻撃に弱いのに、海上保安庁が警備しているわけでもない。そう考えると、日本の原発は、武力攻撃のリスクというのは非常に考えなくてはいけない問題だったが、今までほとんど考えられていなかった。しかし、今、ウクライナの事態があって、我が事として考える必要が出てきたのかな、とおっしゃっていました。

 

★多くのシミュレーションで再稼働の議論を

最後に、このようなシミュレーションについて、宮尾さんはこう話します。

●「いま、東海第二も柏崎刈羽も浜岡も動いてませんから、今攻撃を受けても、確かにこういう被害にはならない、と。ただ、どの原発も再稼働しようとしている、と。で、動かした場合、こういうリスクというのはあるんだ、と。このリスクを抱えてでも動かした方がいいのか。でも、やっぱり、このリスクっていうのは、いざ現実となってしまったら、取り返しのつかないものなんだから、やはり動かすべきでないのか、と。だから、再稼働云々という議論をするときに、まあ、この試算に対する批判は、もしかしてあるかもしれませんけれども、ただ、武力攻撃のリスクっていうのは、必ずあるものですから、この想定は重すぎる、軽すぎるって考える方がいらっしゃるのであれば、それぞれに出されて、そこから議論が深まればいいんじゃないかと思いますし、そういうものも、ぜーんぶ遡上に乗っけて、原子力とどう今後付き合っていくべきかということを、国民的に議論できればいいと思います。」

民間の一つの研究所のシミュレーションで、これについて意見はあるだろうが、上岡さんが一つ先鞭をつけた、ということで、今後、多くの研究者が、多くのシミュレーションをして、それら様々なものを、全部まな板にのせることで、これからの原発との付き合い方の議論が深まるのでは、と。

試算した、上岡さんも、これだけのリスクがあることは事実なので、原発の在り方、というのを考える機会にしてほしい、と話していました。フクシマの事故では、いまだに帰れない人たちがいる。武力攻撃では、最悪、被害の桁が違うし、東京も強制移住となる・・・。こういう現実をしっかりと踏まえておく必要がありますね。

記事や「東京新聞紙面連動企画」の感想は→ stand-by@tbs.co.jp

取材・レポート:近堂かおり

 

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