障害者専門の芸能事務所「アクセシビューティーマネージメント」

人権TODAY

今回のテーマは…障害者専門の芸能事務所「アクセシビューティーマネージメント」

美容系企業が運営する理由

身体障害者専門の芸能事務所を運営するのは、美容系企業の「アクセシビューティー」です。こちらの会社はこれまで障害者への美容普及や障害者雇用の職域拡大などに取り組んできたのですが、その流れで芸能事務所もスタートさせました。「アクセシビューティー」代表取締役の臼井理絵(うすい りえ)さんにお話を伺っています。

「弊社が手掛けるwebマガジンの取組みで、障害者モデルオーディションを開催した時に、ホントに沢山の方が応募して下さって、当事者の方と話す中で、弊社の取組みの中だけではなく、社会に向けて活動できる子が沢山居るっていう希望の種みたいなのを沢山見て、2021年9月に障害者専門芸能事務所という形で、「アクセシビューティーマネージメント」を設立しました。」(「アクセシビューティー」代表取締役 臼井理絵さん)

「アクセシビューティー」代表取締役 臼井理絵さん

臼井さんは元々ネイリストだったのですが、お仕事を通じて障害者の女性たちと出会っていく中で、そうした方々が就ける職業が限られていること等に、問題意識を抱くようになりました。そこで美容業界へのアクセスをし易くする目的もあって、「アクセシビューティー」を設立。更にはその一部門として、モデルやタレントなどへの入り口を広げる狙いで、「アクセシビューティーマネージメント」を起こしました。

夢を実現した視覚障害者のモデル

現在こちらには、車椅子のネイリストや義足や聴覚障害のモデル、車いすフェンシング日本代表でモデルとしても活躍する二刀流アスリートなど、8人が所属しています。その中の1人、先天性緑内障という重度の視覚障害がある、現在21才の工藤星奈(くどう せいな)さんにお話を伺っています。

「小さい時からモデルとか芸能系のお仕事に憧れてたんですけど、やっぱり視覚障害があるから無理だなと自分の中で諦めてたんですね。高校生の時になって、やっぱりモデルの仕事とかやってみたいという憧れは、強くなっていった感じでした。昨年の10月に所属したんですけど、お仕事をしていく中で、撮影風景や機材などが憧れそのままだったので、ワクワクしました。」(視覚障害者のモデル 工藤星奈さん)

「アクセシビューティーマネージメント」所属のモデル 工藤星奈さん

工藤さんは、インターネットで「モデル 視覚障害」と入力して検索し、「アクセシビューティー」のホームページのモデル募集を見つけて応募。初めてモデルにチャレンジしてみて想いが強くなったところを、臼井さんが芸能事務所を作るからと、スカウトしたということです。今までに、スポーツメーカーが開発した視覚障害者向けの白杖のCMや、資生堂が150周年を記念して制作した、綺羅星のようなスターが何人も登場するCMに、出演しています。

「広瀬すずさんや長澤まさみさんなど沢山の有名な方が出てる中で、出演することが出来たので、私でいいのかな?という気持ちとものすごく嬉しい気持ちが、混在していました。」(視覚障害者のモデル 工藤星奈さん)

このCMには、“ガイドメイク”と言って、視覚障害者が自分で化粧が出来る方法を学ぶという役で出演しました。現在音楽大学の3年生として声楽を学んでいる工藤さんは、モデルの活動を軸としながらも、今後はミュージカルの世界にもと、夢を抱いています。

障害者専門のタレント養成スクールを立ち上げ

そんな彼女たちを支えると共に、新たな才能を発掘するために、臼井さんは更なるアクションを起こしました。

「モデルやタレント、俳優としての実力っていうのがすべてになってくるので、そこはしっかりスクールでサポートしていきたいなと思って、今年1月に「アクセシスクール」という養成スクールを立ち上げました。」(「アクセシビューティー」代表取締役 臼井理絵さん)

「アクセシスクール」は現在、週1回土曜日の午後に2レッスン、モデルポージングやダンス、演技、ボイストレーニング等々、新宿などでバリアフリーの設備がある場所を借りて実施しています。受講しているのは、10代前半から60代までの男女。また通えない方向けには、オンラインでの受講も可能です。

『コーダ あいのうた』でろう者の俳優がアカデミー賞受賞

さて臼井さんは、芸能プロとその養成スクールを運営して行く中で、この春ある作品を観て、深い感動と共に決意を新たにしました。アカデミー賞で作品賞など3部門を受賞したアメリカ映画、『コーダ あいのうた』です。 ご存じの方も多いと思いますが、『コーダ』は聴覚障害の家族の中で1人健常者として生まれた高校生の女の子が主人公。彼女の両親と兄を演じる3人は、実際に聴覚障害者のプロの俳優で、その内の父親役を演じたトロイ・コッツァーさんが他の作品の健常者の俳優たちをしのいで、アカデミー賞の助演男優賞に輝きました。

「『コーダ』を観た時に、どの方が聴覚障害の当事者かというのを調べずに映画を観たんですけど、後から全員が当事者だったって知って、感激したんです。これから表舞台を目指す障害当事者の方は、障害の肩書きにとらわれずに、そうやって実力を付けてしっかりとした、こう表現者になっていくっていうところが、大事だと思います。」(「アクセシビューティー」代表取締役 臼井理絵さん)

『コーダ』は、障害のある役は、実際にその障害のある俳優が演じるべきだという考え方を、ぐっと一般的にする役割を果たした作品と言えます。しかしこれは、アメリカのように障害者のタレントの層が厚く、その役を演じる実力の持ち主が居るという前提があってのことです。そうした意味では、臼井さんのチャレンジはまだまだ端緒についたばかりではありますが、今後に注目です!

★株式会社accessibeauty(アクセシビューティー)    
URL:https://accessibeauty.co.jp/    
Eメール:info@accessibeauty.co.jp

担当:松崎まこと(放送作家/映画活動家)

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