嬉し寂しいラジオの進化/根本宗子【連載エッセイ「わたしとラジオと」】

インフルエンサーや作家、漫画家などさまざまなジャンルで活躍するクリエイターに、ラジオの思い出や印象的なエピソードをしたためてもらうこの企画。今回は、劇作家の根本宗子さんとラジオのおはなしです。友人の言葉をきっかけに思い出したというこれまでのラジオ、そしてこれからのラジオとのつき合い方。

 

「宗子はいつも授業中耳にイヤフォンを入れてラジオ聴いていたよね」
先日、幼馴染にそう言われ、自分の学生時代を思い出した。

高校生の頃はとにかく演劇とラジオに夢中で、学校が終われば劇場へ行き、授業中はラジオを聴く日々を送っていたわたし。
授業を聞かないのはおすすめできることではないが、おじさんが使うような渋いデザインのポケットラジオを制服の胸ポケットに忍ばせて、巻き取り式のイヤフォンを片方の袖からスパイダーマンの糸みたいにビューっと引っ張り出し、頬杖をつくふりをしながら片耳でラジオを聴いていた。

SMAPが大好きだったわたしは、一番好きな中居くんの切り抜き写真をラミネート加工した自作ステッカーをポケットラジオに貼っていた。自分で作ったステッカーもお気に入りだったので、とにかくそのラジオが大切だった。

当時、好きなラジオはリアルタイムで聴くか、自宅のコンポでMDに録音して聴くしか方法がない。毎日予約を繰り返し、ミスして録れてなかった時は本気で泣いていた。

あれからずいぶんと時を経て、radikoのタイムフリー機能ができた時は本当に革命だと思った。と、同時にあのわたしの青春時代に完全に幕が降りた気がした。必死になってコンポにかじりついてラジオを聴いていたわたしのような少女、少年はもう生まれることはないのだ。アプリで聴けるようになって、ラジオがより身近になったのはもちろんいいことでしかないのだが、あの必死にラジオを聴いていた時の自分が、今の自分を作っている気もするので、なんだか少し切ない気持ちも正直ある。

中居くんのラジオを毎週楽しみにしていたあの頃のわたし。足の手術とラジオの時間が被ってしまった時、友人が録音したMDをお見舞いに持って来てくれたこと、そしてそのMDが何より嬉しいお見舞いだったことを、今でも鮮明に覚えている。

そんなことを言いつつ、今ではバリバリにタイムフリー機能を利用しているわたし。最近はPodcastも利用しまくっていて、Amazon Audibleでフルで聴けるようになった『宮藤さんに言ってもしょうがないんですけど』を楽しみに聴いている。

わたしは気に入ったものを何度も何度も観たり聴いたりする癖があり、「ドラマプロデューサーの愚痴」(Ep.17・Ep.18)のエピソードを、すでに50回くらいは再生している。

なによりAudibleで配信中の宮藤さんと大人計画の女優の伊勢志摩さんのお二人でやられている番外編番組『大渋滞~宮藤官九郎と伊勢志摩のまとまらない映画の話』が最高過ぎて、移動中繰り返し聴いている。「まとまらない」とタイトルにあるように、本当にまとまっていないのだ。しょっちゅう「あれ、あれあれあれ」と名前やタイトルが出てこない伊勢さんがわからないまま喋り続ける感じもめちゃくちゃ面白く、これを聴くと「小さいこととかどうでもいいよね!」と思えて最高だ。Audibleに大感謝。そうやって好きなラジオ番組を聴く度に、「あ~タイムフリーやポッドキャスト機能があって本当によかった~」と思うのだ。

文明の進化はいつだって良い面と切ない面が共存している。

日々いろんなことがある中で、しょっちゅう「スマホ捨てたい」と思うこともあるけれど、どうしたって手放せないし。

これからも進化していくラジオと一緒にわたしも生活していきたい。幼馴染からの言葉をきっかけに、ラジオについてちょっと考えてみた。
 

根本さんのラジオのお供は、「いい香り」「クッキー」「飴」「紅茶」だそう


 

今回のエッセイに登場したTBSラジオ番組

『宮藤さんに言ってもしょうがないんですけど』
毎週金曜日21:00~21:30放送中/出演者:宮藤官九郎

 

根本宗子/1989年生まれ。東京都出身。19歳で劇団・月刊「根本宗子」を旗揚げ。以降、劇団公演すべての企画、作品の脚本演出を手がけ、近年では外部のプロデュース公演の脚本、演出も手がけている。2015年に初めて岸田國士戯曲賞最終候補作品に選出。2022年には自身初の長編小説となる「今、出来る、精一杯。」を上梓

llustration:stomachache Edit:市川茜、ツドイ

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