日本で初めてウレタンフォームを生産したイノアックコーポレーションが開発! 50%植物由来の環境にやさしいスポンジ「エコロセル」

見事なお仕事
企業の“見事な”取り組みや新情報をお届けする番組『見事なお仕事』。ポップカルチャーの総合誌「BRUTUS」の編集長でカルチャーに精通する西田善太さんならではの視点で、企業の“見事なお仕事”の内容と秘訣を、インタビュー形式でうかがっていきます。

4月23日のゲストは、株式会社イノアックコーポレーション高機能材料事業本部発泡品事業部ウレタン技術部の佐藤莉緒菜さん。今回は佐藤さんが長い時間と労力をかけ開発された、サステナブルで革命的な植物由来のスポンジ「エコロセル」を紹介いただきます。SDGsをはじめ環境への配慮が叫ばれる今日、開発の目線から持続可能な社会について考え続ける佐藤さんに研究にかける思い、これからの目標についてお話を伺いました。

 

陰から暮らしを支える会社、イノアックコーポレーション

西田:佐藤さん、とても肩書きが長いですね。「イノアックコーポレーション・高機能材料事業本部・発泡品事業部ウレタン技術部」。こちらで合ってますか?

佐藤:合ってます(笑)。

西田:正直なことをいいますと……ぼくは初めて聞く名前なのですが、「イノアックコーポレーション」はどのようなことをされている会社なのでしょうか?

佐藤:イノアックコーポレーションは、約70年前に日本で初めてウレタンフォームの生産を開始した会社です。

現在では、ウレタンフォームだけでなく、石油由来の製品であるゴムやプラスチック、複合材といった4つの高分子素材をもとに多様な製品を製造販売しております。

西田:なるほど。消費者に直接名前が届くわけではないけど、生活を支える大事なものを作っているんですね!

 

植物由来の資源を50%配合! サステナブルなスポンジを開発

西田:今日は「凄いものを開発しちゃった!」ということで佐藤さんに来てもらったんですよね。

佐藤:はい! 「エコロセル」を開発したんです。

西田:「エコロセル」とは、どういうものでしょうか……?

佐藤:簡単に言うと、スポンジです。

西田:いわゆる食器を洗うような……?

佐藤:そうです!

西田:いま、スタジオにその「エコロセル」を用意してもらっています。ハート型の可愛いスポンジですね。使い心地は従来のスポンジと変わりないんですか?

佐藤:変わりないです。

西田:バイオマスが50%と書いてありますが、これはなんでしょうか?

佐藤:「バイオマス」とは植物由来の資源のことです。普通のスポンジは石油由来の原料をほぼ100%使っているのですが、この「エコロセル」は植物由来成分を約50%配合したウレタンフォームでつくられているんです。

西田:植物由来成分を用いるとどういったメリットがあるんでしょうか?

佐藤:持続可能な素材である植物を使うことで、次世代の環境にまで配慮した製品になっています。石油にはSDGsでも取り上げられている枯渇問題があったんですよね……。

また、従来の石油由来の製品と比べて、原料を製造する際のCO2排出量が少ないのも特徴です。

西田:我々が排出する温室効果ガスの量と、植物が吸収する量を均衡させるという「カーボンニュートラル」で環境にやさしい製品なんですね。

 

前例のないことに挑戦する開発者の苦労

西田:この「エコロセル」は、開発がとても大変だったと聞いています。どういったところが難しかったんでしょう?

佐藤:植物由来の素材は、普通の石油由来の製品と比べて強度が弱いという問題がありました。すぐに破れてしまうので、従来は少量しか配合できなかったんです。

西田:つまり、植物由来成分が50%のウレタンフォームを開発するというのは、当時は高い目標だったのでしょうか?

佐藤:そうですね、かなり高い目標でしたね。

西田:なるほど。では、そんな目標を立てたあとに開発者は何をするんでしょうか? とにかく研究を重ねて試行錯誤……?

佐藤:そうですね。過去の文献も調べたのですが、50%が植物由来資源ウレタンの成功例はなかなかなかったので、手を動かす実験が中心でした。

西田:挫けちゃいそうになることもあるんですか?

佐藤:何回か挫けかけましたね(笑)。

西田:実験はどのように進んでいくんでしょうか。例えば同じ部署の研究員の方と知見を共有しながら少しずつ登っていくような感じなんですか? それとも、実験を繰り返すうちに発見があって一気に開発されていくんでしょうか?

佐藤:ひとりにひとつ開発テーマが割り振られることが多いので、基本は私ひとりで上司の力を借りつつやっておりました。

わたしはチマチマ進めるのが苦手だったので、最初から植物由来成分50%以上でやろうと決めて実験に挑んでいましたね。

西田:じゃあ失敗もし続けたということですか。

佐藤:はい。

西田:「化学は失敗から学ぶ」って言うじゃないですか。予想と違う結果が出た時に原因が見えてくるって。まさにそのような感じで、努力や苦労を重ねられたから「エコロセル」がうまれたんですね。

 

子どもの頃から環境について考えてきた佐藤さんの想う、未来への目標

西田:佐藤さんは、大学で化学を専攻されていたんですよね。そのキッカケはなんでしょう。

佐藤:もともと動物が好きだったので、小さい頃は動物関係に進みたくて、いつかはムツゴロウさんみたいになりたいなあと思っていました。

でも、中学生の時に地元福島で震災を経験しまして。それから環境に優しい化学に興味を持つようになり、環境化学科がある大学に入学したんです。

西田:なるほど。それでイノアックに入社されたんですね。50%植物由来のウレタンフォームの開発に成功されて、今後はどんな研究をしようと思っているのですか?

佐藤:ウレタンフォームは、少しの配合の違いでいろいろな触感に変えられるんです。

西田:触り心地ですか。

佐藤:いろいろな触感の素材をつくって、低反発マットレスや座椅子のクッション材などさまざまな製品に応用していきたいですね。

西田:では、会社としての目標を大きく言うと?

佐藤:会社としては、やはり石油を扱っているメーカーですので持続可能な社会へ貢献するためのアクションを起こしていきたいと考えております。

植物由来の資源であっても廃棄される際には、石油を使って燃やされます。するとCO2が出てしまうのでそのあたりのリサイクルについても考えていきたいです。

西田:未来の世代のことも考えていきたいということですね。

佐藤:はい。

西田:今日は10代の頃から環境について考えらえてきた世代が、次世代に向けたサステナブルな開発をしているということを知れてとってもうれしかったです。

これからももっともっとすごいものを開発していってくださいね。
 


編集:株式会社ツドイ

 

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