「3人答えられたら合格」と言われて/九龍ジョー【連載エッセイ「わたしとラジオと」】

インフルエンサーや作家、漫画家などさまざまなジャンルで活躍するクリエイターに、ラジオの思い出や印象的なエピソードをしたためてもらうこの企画。今回はライター・編集者としても活躍し、YouTubeチャンネル『神田伯山ティービィー』をはじめさまざまなYouTubeチャンネルの構成もされている九龍ジョーさんに小学校時代の思い出をうかがいます。


 

ティーンエイジャーの頃、私は正真正銘のラジオっ子だった。夜は布団に入り、ラジオにかじりつく。何かをしながら、ではない。ラジオは目をつぶって聴くものだった。いったいいつ勉強していたのだろうか。テレビ番組を観ていた記憶だってそれなりにあるのが不思議だ。しかし、21時過ぎから深夜寝落ちするまで、たしかに私はラジオを聴き続けた。

放送局も番組も渡り歩いた。あの番組、この番組……記憶にあるかぎりここに書き出してみたい誘惑に駆られるが、それはまたの機会に。あれほど仲良かったのにクラスが替わればあっさり疎遠になってしまう同級生みたいなもので、どの番組も薄情なほど忘れているくせに、ひとたび思い出せば、途端に愛おしさも甦ってくるというもの。

あれはたしか小5のとき。某局の局アナがパーソナリティを務める生放送のラジオ番組にハマった。そして、おそらくマイナーだったその番組を、親友と呼ぶほどではないがそこそこ気の合う仲だったクラスメイトのTくんもまた愛聴していることを知った。ふたりの間で番組が話題になったのは、一度ぐらいのことだ。それでもスパイ同士の会話のような秘めやかな交歓が嬉しかったのを覚えている。

Tくんとそんな話をして半年ほど経っただろうか、夜中にある電話がかかってきた。受話器をとった祖母が、私を呼び出す。出てみれば、なんと件のラジオ番組だった。番組内の視聴者参加型クイズコーナー。投稿ハガキに名前の書かれた3人全員がクイズに正解すれば合格、というルール。ちなみに、その日の放送を聴いていれば誰でも答えられるクイズとなっている。

Tくんだ――。瞬時に悟った。Tくんが、3人のリストに私の名前も書いて投稿したのだろう。だが、私は受話器越しのパーソナリティの問いかけに、正解を答えることができない。聴いていなかった、だけではない。そのとき私はすでに他局の裏番組のリスナーとなっていたのだ。
「……すみません、わかりません」
思えば、自分の声が生まれてはじめてラジオの電波に乗った瞬間だった。

この件について翌日以降、Tくんも私もいっさい触れることはなかった。私にいたっては、すぐに忘れてしまった。その後も一緒に遊んだりはしていたはずなので、きっと彼もなかったことにしたのだろう。あるいは、Tくんもまた当日、放送を聴いていなかったのかもしれない。なにせ私は電話に出ただけで前後のオンエアも聴いていないので、真相がわからないのだ。だとしても、この場を借りてTくんには謝っておきたい。

深夜の友は真の友、とは伝説のラジオ番組『五木寛之の夜』の名文句だ。転じて、「ラジオの友は真の友」。いかにも五木ファンらしい神田伯山のラジオ番組『問わず語りの神田伯山』でおなじみの前口上である。Tくん、あのときは信頼を裏切ってすまなかった。そして、いまさらながら聞かせてほしい。Tくんと私でふたりだ。あともうひとりは誰の名前を書いたのかい、と。

九龍さんが普段ラジオを聴いているスマートフォン


 

今回のエッセイに登場したTBSラジオ番組

『問わず語りの神田伯山』   
毎週金曜日21:30~22:00放送中/出演者:神田伯山
 

 

九龍ジョー(くーろん・じょー)/ライター、編集者。ポップカルチャーから伝統芸能まで幅広く執筆。手がけた書籍、雑誌、メディア多数。放送番組やYouTubeチャンネルの構成なども。著書に『伝統芸能の革命児たち』(文藝春秋)、『メモリースティック ポップカルチャーと社会をつなぐやり方』(DU BOOKS)など

 

llustration:stomachache Edit:市川茜、ツドイ
 

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