困りごとに対する支援を使いやすくする『お悩みハンドブック』

人権TODAY

今回のテーマは「困りごとに対する支援を使いやすくする『お悩みハンドブック』」

例えば、心や体の不調、対人関係のトラブル、困窮状態にあることなど1人で対処するのが難しい困りごとを解決するため、国や自治体、民間団体がいろんな支援を用意していますが、いざその支援が必要なときにたどり着くことが出来ない。そんな思いをした当事者の一人が無料のWebサイト 「お悩みハンドブック」を開発しました。Web上でいくつかの選択肢に答えていくだけで自分に適した支援が提示されます。こちらを開発した株式会社グラファーの佐藤まみさんのお話です。

「私自身、筋肉の指定難病、心にも父の家庭内暴力の影響で重めの病気があります。もし私が児童相談所に保護してもらえていたら、動悸がするほど不安な気持ちなどに悩まされずに済んだかもしれないです。しかし、必要なときに支援は活用しづらく、場当たり的に支援と繋がるしかないようでした。誰もが必要なときに適切な支援を簡単に活用できる社会にしたいという思いから、お悩みハンドブックを制作しました。」(株式会社グラファー・佐藤まみさん)

そもそも支援があることを知らない、申請が複雑など、適切な支援にたどり着けないという課題を解決するため、佐藤さんは自ら起業して「お悩みハンドブック」を作ろうと考えていましたが、株式会社グラファーという、行政手続きのデジタル化を主な業務とし、佐藤さんがやりたいことのノウハウを持っている会社との出会いがあり、佐藤さんは現在グラファーの社員としてお悩みハンドブックを手掛けています。

簡単な質問に答えるだけで自分に合った支援が見つかる

実際に、佐藤さんの困りごと=家庭内暴力を想定してこのお悩みハンドブックを使ってみます。

 

いくつかの質問に答えていくと、「役立ちそうな支援が 14 件ヒットしました!」と表示されました。

例えば「セーフティネット住宅登録制度」さまざまな事情から住まいに悩む人が、 低額あるいは無料で借りることが出来る住宅。また「婦人相談所」という、 事情がある女性を対象とした協力も頼める支援機関などが出てきました。案内される解決手段は、お金、仕事、住まい、病気や障害、子育て、いじめ、学び直しなど全228種類あります。

当事者にとっての使いやすさを追求

そんなお悩みハンドブック。佐藤さんは、悩みを抱える当事者の視点で、使いやすさを重視して開発しました。

「自分で自分自身が困っているってなかなか気づけないなっていうふうに思っていて。何かつらいとかしんどいとか死にたいとか、曖昧な気持ちとか感情っていうのがあるけれども、その悩みに向き合うことがつらくて耐えられないだったりとか、あるいは、その困っている状況が当たり前になっていて、何がおかしいのか気づけないっていう状況があると思います。そういったときにもお悩みハンドブックは、当てはまる悩みにチェックをつけていくだけなので、考える負担を最低限に抑えることができます。」(株式会社グラファー・佐藤まみさん)

操作が簡単で考える負担の軽減になるだけでなく、選択肢に使われている文言も、最初から「家庭内暴力を受けている」だとその自覚がない場合チェックから外れてしまう可能性もあるのでまずは「身の危険を感じる相手がいる」という所から丁寧に訊ねられるようになっている点も工夫されています。

さらに、選択肢に答えて支援が表示されるだけでなく、実際の支援につなげるような機能も設けられています。

「悩みが深刻だと置かれている状況を考えて言葉にしたり、支援制度の手続きをしたりすることさえ難しいです。 そんなとき、事情を伝えて、人に力を貸してもらうために、相談をサポートする機能があります。まず自分の悩みとそれに対応する支援を結果ページのURLや印刷した紙で簡単に伝えることができます。それに加えて、相手にお願いしたいことも伝えられます。例えば手続きを手伝ってほしい、一方で、事実確認は最低限にしてほしいといったことを回答結果と合わせて伝えることができます。」(株式会社グラファー・佐藤まみさん)

 

回答結果を印刷する際に「今回の相談にあたってお願いしたいこと」というチェック欄があり、支援者などに対して「情報を教えてほしい」「悩みを聞いてほしい」などの意向を伝えることができます 

さらに佐藤さんはこのお悩みハンドブックを、困っている本人だけでなく、周囲の人にも活用してほしいといいます。

「周りの人がなんか大変そうだけど、何が大変なのかわからない状態ってよくあると思っていて、例えば欠勤や欠席、自傷行為、近隣のトラブル、大量飲酒、体型の急激な変化、後はSNS上の投稿などといったサインには気付くけど、具体的には当事者がどんな状況にあるのか把握しきれていない状態っていうのがよくあることだと思います。そんなときには、支援の見落としがチェックできるサイトだよみたいな感じで一緒に回答していく、でどの支援から使って、どういう感じになったらいいよねっていう話をしていってもらえたらとても嬉しいです。」(株式会社グラファー・佐藤まみさん)

このお悩みハンドブックは開設からおよそ2ヶ月で利用者数が延べ15万人を超え大きな反響を呼んでいます。同時に佐藤さんは、必要なときに支援を活用しづらいという問題の深刻さを実感したといいます。佐藤さんは今後も、困っている人からは絶対にお金を取らない形で、いつの日かお悩みハンドブックがなくても大丈夫な未来が訪れるまでの間、何とか継続して公開し続けられるようにしたいと話していました。利用したい方は「お悩みハンドブック」で検索すればすぐ出てきます。

お悩みハンドブック https://compass.graffer.jp/handbook/landing

(担当:中村友美)

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