学校のデジタル化で見えたのは「アナログ」の存在価値。学校と保護者をつなぐ連絡網サービス「マチコミ」

見事なお仕事
企業の“見事な”取り組みや新情報をお届けする番組『見事なお仕事』。ポップカルチャーの総合誌「BRUTUS」編集長を14年務め、カルチャーに精通する西田善太さんならではの視点で、企業の“見事なお仕事”の内容と秘訣を、インタビュー形式でうかがっていきます。

4月2日のゲストは、株式会社ドリームエリアの寺下武秀さん。デジタル化が進む昨今、教育現場にもその波が訪れています。ドリームエリアが提供しているのは、メールやアプリで学校からの連絡を受け取れる連絡網サービス「マチコミ」。子どもたちの安心・安全を守りながら教員の負担を減らすことのできるこのサービスを推進していくなかで「完全にアナログをなくすことは難しい」ということに気づいたそう。今回はそんな、学校における「アナログ」の必要性についてもお話を聞いていきます! 
 

子どもの安全を目指して、教育現場にもデジタル化を

西田 教育現場にもデジタル化の波がきているそうですね。

寺下 はい。私たちドリームエリアが提供しているサービス「マチコミ」は、学校と保護者をつなぐ連絡網ツールとして、さまざまな教育現場に取り入れられています。

西田 連絡網って、昔はクラスメイトの電話番号が載ったプリントがあって、自分に連絡が来たら次の保護者に電話して......って使っていましたよね。

寺下 マチコミは、かつて連絡網を用いて行われていた緊急連絡をメールで届けられるサービスなんです。ほかにも、生徒の欠席連絡や、PTA総会や各種行事の出欠確認なども、スマートフォン上のアプリで簡単に伝えられます。

西田 なるほど! 以前は電話や紙ベースだった連絡がデジタル化していっているわけですね。

寺下 はい。全国で13000以上の施設に導入されていまして、神奈川県の公立高校や鳥取県の小中学校など、地域によってはほぼ100%の施設でマチコミが活用されています。

西田 他にはどんな機能があるんですか?

寺下 この3月に二つの機能をリリースしました。一つは、プリントのファイル共有機能です。プリント物をPDFにして配信して、提出期限が近づくとアプリのプッシュ通知でお知らせします。

西田 それは便利ですね!

寺下 もう一つは安否確認機能です。災害発生時の安否確認サービスは、携帯会社ごとにバラバラなことが多いのですが、それを統一したプラットフォームで情報をお届けできるんです。

西田 子どもの安心・安全を支えているわけですね。どうしてこのサービスを始めようと思ったんですか?

寺下 もともとわたしたちは飲食店向けにクーポンなどのメール配信サービスを提供していたんです。それを見た松戸市の小学校から、学校でも活用できないかと相談されまして。

その当時、子どもが巻き込まれる事件が多発していました。そして、わたし自身に子どもが生まれたこともあり、ひと事ではないと感じたんです。そのため、不審者情報配信ツールとして「マチコミ」のサービスを開始しました。

西田 社会貢献の気持ちが強かったわけですね。マチコミは無料で使えるみたいですが、どうやって収益化しているんですか?

寺下 単にマネタイズするだけなら、アプリに広告を導入すればいいのですが、それだと保護者の方が正確に情報を得られなくなってしまいます。

そのため、現時点では収益は度外視で、会社の信用獲得や、今後展開するサービスの基盤になればという想いで運営していますね。

西田 すばらしい、まさに "ドリーム" なお仕事ですね。

寺下 ありがとうございます(笑)!  
 

プリントも教育の一環。どうしてもなくせない「アナログ」の必要性

西田 マチコミはスタート当初から順調に広まっていったんですか?

寺下 いいえ。実は、3~4年前まで学校側はデジタル化に消極的だったんです……。現状でも教員の方の負担は大きいのに、それに加えて新たなシステムを導入するとなると、簡単には踏み切れないという事情がありまして。

西田 その後の維持コストのメリットはわかっても、どうしても最初の導入は手間になりますもんね。

寺下 それに学校では頻繁に担当者の異動があって、引継ぎが難しいという課題もありました。

西田 デジタル化の壁は大きかったわけですね。今のように広まったきっかけは何なんですか?

寺下 やはり、コロナ禍でプリントを渡せなくなったのが大きいです。もともとは不審者情報の配信がメインだったんですが、コロナ禍以降は緊急の学級閉鎖や分散登校の連絡などが8割以上を占めるようになりました。

西田 マチコミを使うと、一斉配信の手間が減るから利用され始めたんですね。

寺下 保護者からメールアドレスを集めて配信する形ですと、出入会の管理や個人とアドレスの紐づけの登録など、学校側の負担も大きいんです。

その点マチコミなら、登録用の情報を保護者に渡すだけなので管理が非常に楽なんですよ。

西田 では、今後はどんどんデジタル化が進んでいくわけですね。

寺下 いえ、実はそう簡単な話でもなくて……。プリントをすべて廃止することは難しいと思います。

西田 紙なんて最もアナログなツールだと思うんですが、どうしてですか?

寺下 プリントって、教育の一環でもあるんですよ。先生が子どもにプリントを渡して、それを保護者の方に渡すという。

西田 なるほど! プリントを通して、約束を守る一連の流れも学習しているんですね。

寺下 だから、ほとんどの学校はプリントの廃止に反対の声が多いんです。

西田 面白いですね。僕は渡し忘れてランドセルの底でプリントがぐちゃぐちゃになっていました。

寺下 僕も同じタイプです(笑)。また、導入が進まないもう一つの理由に、保護者間のデジタル格差があります。教育現場という特性上、どうしても情報格差が発生する可能性があるうちは、全面的なデジタル化は難しいですね。

今は、緊急性のあるものは先にメール配信して、その後に紙で追って連絡をするという使い方が多いです。保護者の方に聞いても、完全なデジタル化を望む声は数%程度しかいませんね。

西田 なるほど。完全にプリントがなくなることはないのかもしれませんね。

寺下 デジタル、アナログのそれぞれの良さを理解しながら、これからもサービスを提供しようと考えています。

編集:株式会社ツドイ  
 

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