“ハガキ職人”ではない一般リスナーの会社員が、ラジオ愛を発信するために始めたこと/岩井葉介【ラジオ沼から愛を込めて】


ラジオを深く愛する方々にその魅力を教えてもらう連載「ラジオ沼より愛を込めて」。  
今回は、"ラジオリスナーが作るラジオリスナーのためのイベント”である「ラジオリスナーフェス」を主宰する岩井葉介さんにお話を伺いました。

現在会社員として働きながら、フェスと並行し毎月印象に残ったラジオ番組に賞を贈る「プラネット賞」も運営している岩井さん。なぜ彼は“ラジオリスナー”の域を超えた活動を続けるのでしょうか?


--まず「ラジオリスナー主導のフェス」を開催する、というアイディアに至るまでには、どんな背景があったのでしょうか?

岩井:きっかけは名古屋に住んでいるラジオ好きの友達が開催した「アナログ」という“ラジオ”がテーマのグループ展に行ったことでした。その場でPodcastを録る人もいれば、実在しないラジオのノベルティを作る人もいて、すごく自由な空間だったんです。「ああ、こういうラジオとの関わり方もあるのか」と感化され、約3ヶ月間の準備を経て2019年3月に第1回目を開催しました。

岩井:実は、今も昔もハガキを番組に送ることはどうしても“自分ごと”にならず、投稿をしたことはほとんどないんです。ハガキ職人ってすごく才能があるし、遠い存在に感じて。でも「アナログ」を機に「リスナーが主催するラジオイベントなら、ハガキを送らない自分でもラジオと関わることができるのでは」というアイディアが生まれたんですよね。 
 

第一回ラジオリスナーフェスは「東京にラジオ好きが集まりそうだから」とオードリーの武道館公演の翌日に開催。「エレ片」の番組イベントにも出演経験のある落語家・三遊亭栄豊満やアマチュアでありながらオーディション選考から「ANN0」のパーソナリティとなった本村康祐らが出演。

 

--その後、2020年に開催された第2回目では一気に規模を拡大させましたよね。会場をよりキャパシティの大きい渋谷ユーロライブに移しただけではなく、ウエストランドやラランドといった人気の芸人さんたちも出演していらっしゃいます。

岩井:実は初回のラジオリスナーフェスが終わった時点で「2回目は大きくしたい」と早めに準備していたんです。なるべく豪華で知名度の高いゲストをお呼びしよう、と考えていたのですが、いかんせん素人なので事務所に直接連絡すると断られる可能性が高く……ラジオの公開収録のタイミングで関係者の方にお声がけしたり、「GERA放送局」(さまざまな芸人さんが出演しているお笑いラジオアプリ)を経由してご連絡をしたりと、多くの方にご協力いただきました。

――行動力が素晴らしい! しかし、第2回はコロナ禍の影響で同年9月に延期となりましたよね。その間の2020年6月にプラネット賞を立ち上げたのは、何か関係が?

岩井:ある程度フェスの準備が終わっていたぶん、半年間やることがなくなったことは影響しています。ただ、決め手になったのは「タダバカ」こと『さらば青春の光がTaダ、Baカ、Saワギ』(TBSラジオ)に東ブクロさんと会ったことのある女性が登場し、東ブクロさんとの夜について語る、という回を聴いたことでした。

「こんなクレイジーな番組がもっと騒がれないのはなぜだ!」って感じたんです。でも自分自身に拡散力もなく、かといって内容的にギャラクシー賞(放送批評懇談会が優秀なラジオ番組・個人・団体に贈る賞)を獲れるわけでもありません。それでも一部の人しかこの回を知らない、ということがもったいなくて、リスナー主導の賞を作ることに決めました。

--プラネット賞は一次審査で月間賞の候補を選出し、上位4番組を二次審査の選考委員50人が投票する、という仕組みですよね。二次選考にはどういった方が関わっていらっしゃるんですか?

岩井:SNS上で繋がっているラジオリスナー仲間です。男女比も半々くらいで、学生から主婦、50代の会社員など、幅をもたせながら構成しています。ニッポン放送の吉田尚記アナウンサーが立ち上げたマンガ大賞(2008年にスタートした、マンガ好きの一般読者によるアワード)を参考にしました。

最終的な判断や「プラネット賞らしさ」のような価値観は選考委員の皆さんに委ねているのですが、あくまで「面白かった番組」ではなく「印象に残った番組」に贈る賞であることは意識しています。

――どちらもラジオへの愛に溢れたご活動ですね! そもそも、岩井さんがラジオを聴き始めたのはいつからですか?

岩井:僕は1983年生まれで今年で39歳になるのですが、小学生の時にJPOPが好きになり、気づけば音楽チャート番組を自室のラジカセで聴くようになっていました。中学に入ると徐々に著名人の帯番組にも興味を持ち始め、『斉藤一美のとんカツワイド』(文化放送)や『伊集院光のUP'S』(TBSラジオ ※「JUNK」の前身番組)など、徐々に夜のラジオ番組を聴く習慣がついて。寝落ちしたり聴き逃したりしたこともありましたが、なんとなく曜日ごとに聴きたい番組は決まっていました。

――当時、特に気に入っていた番組は何だったか覚えていますか?

岩井:『ゲルゲットショッキングセンター(通称ゲルゲ)』(ニッポン放送)ですね。あとは『ゆずのオールナイトニッポン』(ニッポン放送)。特に覚えているのは、初めて「オールナイトニッポン」をやることになったゆずが「ゲルゲ」にゲスト出演した次の日に、学校で「ゆずっていう良いミュージシャンがいる!」と友達に話したことです。直後に彼らが有名になったから「あいつ(岩井)は音楽に詳しい」と騒がれたりもしました(笑)。

もともと人の話を聞くことが好きだからこそラジオにハマったんじゃないかな、と思います。それこそテレビのザッピングのように、駆け出しアイドルのラジオ番組や、名前も知らないアニメのラジオドラマなども聴いてました。高校に入るとバイトや他の趣味に忙しくなって一度は疎遠になったのですが、それでも時々、昔カセットテープに録音した過去の放送を部屋に流したりはしていましたね。

--ラジオ愛が再燃したきっかけは何だったのでしょうか?

岩井:20代の頃に「JUNK」(TBSラジオ)や「オールナイトニッポン」(ニッポン放送)がPodcastでの配信を始め、リアルタイムじゃなくてもラジオを聴けるようになったのが大きかったです。改めて「ラジオって面白いな」と感じたんですよね。

同時に、ニコニコ動画でたまたま見つけた『わがまま白たぬき』という関西在住の一般人がやっているトーク配信番組で自分も大喜利に参加するようになり、パーソナリティの2人と『バナナマンのバナナムーンGOLD』(TBSラジオ)や『JUNKサタデー エレ片のコント太郎』(TBSラジオ)などオススメの番組を紹介し合うようになりました。そのことも、一つのきっかけになっています。 
 

岩井:現在もリアルタイムで視聴することはほとんどないのですが、毎週20本くらいの番組は聴いています。最近だと『真空ジェシカのラジオ父ちゃん』(TBSラジオ)は毎回何が起きるか予想できないので面白いです。ラジオリスナーフェスを始めたばかりの頃は「聴かなきゃ」という意識が出てしまったこともあるのですが、今では特に縛りを課さず、自由に聴いています。

――毎週20本はすごい! しかし企業に勤めながら、フェス運営やアワードの管理を続けるのはかなり大変なのでは? 岩井さんがラジオにまつわる活動を続けるモチベーションとは何でしょうか。

岩井:まずは「ラジオが好きだから」ですね。ちょっとでも空き時間があればラジオを聴きますし、最近ではゲームをしながらも聴いています。同時に「もっと聴かれてもいいのに……」と感じることもあって、より多くの人にラジオの面白さを広めたいなと思っています。自分の好きな音楽や映画を友達に紹介したい、という気持ちの延長線上にあるのが、プラネット賞でありラジオリスナーフェスなんですよね。

年々フェスには良いラインナップが揃うようになり、自分の実力以上のイベントが生まれています。プラネット賞も知名度が上がってきていて、プレッシャーも感じています。でも、今や自分ひとりの力だけではないんです。いずれも、大勢のラジオ好きの協力があるからこそ成り立っているんだと感じます。何より、実際に開催するとやっぱり楽しいです。

岩井:また、主催者が一般のリスナーであり、放送局を横断したブッキングができるからこそ感じるメリットもあります。例えばラジオリスナーフェスでは来場者が全員着席し、自分の“お目当て”以外の講演にも耳を傾けてくれます。放送局を限定しないトークが繰り広げられるからこそ、知らない番組の情報なども自然とキャッチすることになるんです。そこに、番組の新規リスナーが生まれる余地があると思います。

ラジオリスナーフェスを訪れたことで番組の存在を初めて知り、リスナーになる……という誰かの“きっかけ”になれたら冥利に尽きますね。そして、そうやって好きなラジオ番組に恩返しができる可能性を秘めているのは、活動の強みだと感じています。これからも、みんながびっくりするような人に出てもらいたいです。

 

 

岩井葉介(いわい・ようすけ)/ラジオ好きの会社員。ラジオリスナーが印象的だった番組を選ぶ「プラネット賞」や、ラジオパーソナリティ・スタッフ・リスナーが出演する「ラジオリスナーフェス」を主催。リスナーがラジオに貢献する新しい方法を、日々模索している。またSpotifyで配信中の「愛されラジオ」パーソナリティとしても活動している。


Photo:持田薫 Text:高木望 Edit:ツドイ 
 

ツイート
LINEで送る
シェア
ブクマ