ストローは飲むためにあらず?ストローの生きる道。

森本毅郎 スタンバイ!

今日はこのコロナ禍でも、踏ん張っているある会社のお話。それは、岡山県にある、シバセ工業株式会社、という従業員50人のストローの会社。飲食店の営業自粛などの影響で、飲料用のストローの注文が激減し、売り上げが前年比で2~3割にまで落ち込んでしまっていました。そこに舞い込んだのがPCR検査の唾液採取に使うストローの製造依頼でした。

「森本毅郎・スタンバイ!」7時30分過ぎからは素朴な疑問、気になる現場にせまるコーナー「現場にアタック」、2022年2月7日(月)のテーマはこちら。

『ストローは飲むためにあらず?ストローの生きる道。』

 

★薄くて径の大きいストロー、実は難しいんです。

シバセ工業株式会社、代表取締役社長の磯田拓也さんのお話です。

●「コロナが発生しましてから、PCR検査機関の方から、こういうのができないか、という声をいただいたもんですから、検査用のちょうどいいサイズですね、唾液がうまく流れ出すような直径とか、容器に入れるための長さとか、そういったものを色々検査機関の方と話し合いをしながら、サイズを決めていって製品化に至った、ということになっております。ストローっていうのは、使い捨てということで、なんか悪者みたいになってるんですけれども、ま、非常に薄肉のパイプというのは作るのが難しくて、普通のパイプ屋さんとかチューブ屋さん、たくさんあるんですけれども、ストローのような薄いパイプっていうのを作ることができないんです。薄いパイプっていうのは、ストロー屋の設備でしかできないんですけれども、さらにそれを薄肉で、径を大きくする、というのは技術的に難しくなってきますので、他でできるところが無い、ということになってます。」

少し短いストローで唾液を容器の中に入れ、そのままそのストローも中へ入れて蓋をしめる。これならば、唾液の飛び散りの心配もなく、安全に採取できます。シバセ工業には、検査にちょうどいい直径や薄さのストローを作る技術もあり、コロナ禍で落ち込んでいた売上は、前年の7割まで持ち直すことが出来ました。今も急ピッチで製造しています。

 

★タピオカのストローを作ってましたから

それにしても、シバセ工業が、薄くて直径の大きい、技術的に難しい太いストロー作りに、
すぐに対応できたのは、なぜなのか?それは、いまPCR検査用のストローを作っている機械で、コロナ前まで作っていた、あるストローの存在があったからなのです。

●「タピオカはすごかったですね。ホントに大変なブームになりましたので、ストローを待って頂くのに三ヶ月という時期もありましたので、ものすごく注文が殺到しました。あの、国内で作れることろがありませんので、まあ、元々、飲料のストローは、9割方輸入のストローが使われてるもんですから、まあ国内のストローメーカーというのは、衰退産業と言えば衰退産業なんですけれども、そうした中で私ども、なんとか生き残っていかなきゃいけない、ということで、飲料用ストローについてもですね、色んなものをつくれるようにしよう、ということで、タピオカの太いストローを作れるようにしてきたことがありまして、まあ、私どもしかできなかった、と。」

タピオカで技術の下地ができていたんですね。シバセ工業がある岡山県浅口市はストロー発祥の地ということで、ストローの会社がたくさんありました。しかし、平成に入って格安の輸入品が増え、国内市場の9割が輸入ストローになってしまいました。そして、ほとんどのストロー屋さんが廃業。もう数社を残すのみ。

そんな中で生き抜いていくため、タピオカの前から、「多品種、小ロット、短納期」を
モットーに、国産を求める1割のお客さんに、希望通りのストローを届ける、というやり方を徹底していたのです。だから、タピオカの太いストローにも対応できた。そして、その技術で、いまPCR検査用のストローにも対応することができたわけです。

 

★一社依存を避けて、多岐に渡るストローの活躍

しかし、そうは言っても1割。それでは会社の成長望めない、と、ストローの技術を何かに活かせないか、ストローの技術の他分野への進出を探っていた。というのも、磯田さんにはこんな苦い経験をしたことがあるから、なのです。

●「もともとは、大手の飲料メーカーのストローの下請けという形で、一社依存だったわけなんですね。やはり一社に頼っていると、下請けだけでやっていると、やっぱり仕事がなくなってきたときに、もうどうしようもないですから。その経験からたくさんの取引先を増やしていく、ことがいいんじゃないか、という風に考えてます。社内でもよく言うんですけども、100万円のお客さんを一件取るくらいやったら、1万円のお客さんを100件取った方がいいよ、と。やっぱ100社くらいあると、当然無くなる会社もたくさんありますけれども、伸びて来る会社もあるわけですね。で、伸びて来る会社っていうのは、最初から一緒に小さいときからやってると、やっぱりよそに行かないですね。一緒にシバセさんとやってきたんだから一緒にやっていきましょう、と言ってくれるんですけれども、途中でポーンと大きな仕事取りに行ったりすると、これ次の年あるかどうか分からないんですね。ですからそういう仕事は、取りに行く必要ないよ、というふうに営業の方に言ってますので、ま、実際、最初五千円とか一万円ぐらいの取引でいいから、そっから始めようや、と。」

先代社長から頼まれて工場長になるや否や、95%以上を占めていた大手の下請けの仕事が大幅に無くなってしまって大変なことになった。その時の反省を活かし、今でも、ストロー関連は、最も大口でも売り上げの2~3%だとか。

飲料用ストロー、一分野しか持っていなかったら、あの下請けのときと同じになる。苦い経験の反省が活かされて、他の分野へ進出に繋がっている、ということです。

プラスチックストローは使い捨て、ということで悪者、という話がありましたが、医療用となれば使いまわしはせず、使い捨てが基本。しかも、紙のストローでは向かない。血液を吸い上げるノズルや注射針やカテーテルのカバー、アルコール検知器の吹き込み口、などストローを活かせる場を広げるべく、踏ん張っています。

 

取材・レポート:近堂かおり
 

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