仕事で半泣きだろうとお構いなし。“いつもの声”が安心をくれる。ラジオに生活を預けるイラストレーター/雪下まゆ【ラジオ沼より愛を込めて】


ラジオを深く愛する方々にその魅力を教えてもらう連載「ラジオ沼より愛を込めて」。第4回は、昨年タブロイド版「オトビヨリ6月号」にて表紙イラストを描いてくださった、イラストレーターの雪下まゆさんにお話をうかがいました。絵を描くときも、寝るときも、常にTBSラジオを聴いているという雪下さんに、ラジオの魅力を語っていただきます。

 

伊集院さんの見せる二面性が好き。ラジオのきっかけ『JUNK 伊集院光・深夜の馬鹿力』


——雪下さんがラジオを聴きはじめたきっかけはなんだったんですか?      

雪下 大学で絵を描いていたときに、一緒にいた友人が伊集院さんの『深夜の馬鹿力』を流していたんです。伊集院さんとリスナーさんのかけ合いが楽しくて、「こんなことしゃべっていいんだ、ラジオ!」って衝撃的でした。特に、老婆の肛門さんってラジオネームがめっちゃインパクトがあって(笑)。その後すぐに自分でも聴くようになりました。 


——番組コーナーでも、そんなふうに印象に残っているものはありますか?      

雪下 「空脳(そらのう)」のコーナーが大好きです。たとえば「小さいときに近所でよく見た変なおじさん、誰だったんだろう。みんなに訊くとそんなおじさんいなかったって言われるんです」みたいな、あいまいな記憶について投稿されるコーナーで。なんとも言えない気持ち悪さや、心にずっと残ってしまう不思議な感じが好きでした。「空脳」ってワードを作って、そういう話をコーナーにまとめられたこともすごいですよね。      
 

——パーソナリティの伊集院さんのことも大好きだそうですね。      

雪下 はい! ご自身の暗い側面と明るい側面どちらも面白くトークにしてくださっていて、そこに共感できるし安心します。      

25時からはじまる「深夜の馬鹿力」の伊集院さんは、勘ぐりすぎておかしくなるんじゃないかってくらいに、他人からの目や世の中についてぐるぐる考えてて。私自身も世の中や自分自身への勘ぐりで落ち込むことがあるので、深夜一人で作業をしながら伊集院さんの話を聴くと、励まされるんです。でも、午前中の『伊集院光とらじおと』では、まったく印象が違います。「らじおと」の伊集院さんは、近所の気の良いおじさんみたいな感じ。そんな二面性があるところが素敵だなと思います。



 

太田さんに銃で撃たれました! 『JUNK 爆笑問題カーボーイ』で起きた夢の時間


——もう一つ、雪下さんの大好きな番組が『爆笑問題カーボーイ』ですよね。『カーボーイ』の魅力はどんなところですか?      

雪下 爆笑問題のお二人はよく、私が今まで触れてこなかった芸能の系譜や落語の世界のお話をされるんです。わからないことを少しずつ知っていくのって、自分もだんだん“輪”に入っていくみたいな感覚があるんですよね。それがすごい好きで、『カーボーイ』にハマっていきました。      

太田さんは、喜び、怒り、妬み、創作への熱量とか、人間のすべてが詰まっているようなところが魅力的な方だと思います。田中さんはたまに目がビー玉になってる(生気を失っている)ような、ちょっと変な人(笑)。

そんなお二人のケンカみたいなやりとりが大好きなんです! 太田さんが田中さんにツッコミのダメ出しをして始まったりするんですけど、太田さんはねちっこくしつこく詰めよるのに、田中さんはあんまり食らってない感じで。お二人ともすごい可愛いんですよね(笑)。      
 

——2020年6月からは、『爆笑問題カーボーイ』の番組公式グッズを担当されています。      

雪下 そうなんです! もう、めちゃくちゃうれしかったですね。番組ディレクターの越崎さんとTwitterの相互フォロワーで、ダイレクトメールをいただきました。元々私が爆笑問題さんのファンアートを投稿していたのですが、それを「グッズに使いたい」と。      

越崎さん、すごい粋な方で……! その後(2020年8月)に、TBSラジオの『ACTION』にゲストで出演させていただいたんです。そのときはもう越崎さんとは連絡も取っていなかったんですが、放送後に越崎さんがいらっしゃって「今、下に爆笑さんいるので挨拶しませんか?」って。ラジオ放送の前に知っていたら私が緊張しちゃうだろうと思って、終わったタイミングで来たとおっしゃっていて、なんて素敵な方なんだろうと感動しました。 


——ということは、そのあと爆笑問題さんにお会いできたんですか!?       

雪下 会いました! 太田さんに銃で撃たれました!(笑) お二人が私の絵が特集されている雑誌を読んでくださっていたので、そのお話をしたり、映画の話をしたり、けっこう長い時間お話しさせてもらいました。私はずっと泣きながら……。プライベートでも周りの人を笑わせようとしている方々なんだなって思って、ますますファンになりました。緊張したけど、すごい楽しかったです。夢のような時間でした。


 

今は情報番組を聴くのも楽しい。ラジオで広がった世界


——今はいくつの番組を聴いているんですか?      

雪下 さっきメモしてみたんですけど……。『森本毅郎・スタンバイ!』『伊集院光とらじおと』『ジェーン・スー 生活は踊る』『赤江珠緒たまむすび』
『荻上チキ・Session』『JUNK 伊集院光・深夜の馬鹿力』『JUNK 爆笑問題カーボーイ』『ハライチのターン』
『問わず語りの神田伯山』『JUNK バナナマンのバナナムーンGOLD』『蓮見孝之 まとめて!土曜日』『土曜ワイドラジオTOKYO ナイツのちゃきちゃき大放送』『安住紳一郎の日曜天国』『爆笑問題の日曜サンデー』。いつも聴いているのがこの16番組で、他にも別の局の番組を聴くこともあったり、深夜番組をくり返し聴いたりすることもあります。    


——すごい! 以前もSNSで「この番組を聴いてます」と発信されていましたが、少し増えているような……?      

雪下 たぶんそうですね(笑)。朝起きたときから、BGMみたいにradikoでTBSラジオを流しっぱなしにしているんです。私は基本的にずっと家で絵を描いているから、一日中ラジオが聴けちゃう。だから、ただラジオを聴く時間が延長していって、聴く番組も増えていった感じです。      
ですが、『アシタノカレッジ』はスタートするときに内容が気になって、自分から聴きはじめた気がします。      
 

——どんなところが気になったんですか?      

雪下 伊集院さんの『らじおと』からの流れでスーさんの番組(『生活は踊る』)を聴くようになって、自分とは違う立場の人たちの悩みを知りました。子どもがいる家庭にはこんな問題があるんだ、とか。同じように『荻上チキ・Session』を聴きはじめて、だんだん政治の問題も身近に感じられるようになって。その流れで、「社会問題にフォーカスを当てて勉強していく」という内容の『アシタノカレッジ』にも興味が湧いたんです。      

芸人さんのラジオは変わらず大好きですが、最近はニュース系の番組を聴くのも楽しくなってきました。私と同世代でも芸人さんのラジオを聴く人は増えていると思うんですけど、情報番組ももうちょっと広まればいいのになあ、と思ったりしますね。      
『アシタノカレッジ』は公式で映像の配信もやっていて、YouTubeでアーカイブが観られるので、自分が興味を持った回を摘んで見ていくのも楽しいと思います。特に武田砂鉄さんとふかわりょうさんの回(2021/12/10)がめちゃくちゃ良かったです!


 

ラジオを聴いている間は、“自分”を放っておける


——雪下さんが思う「ラジオ」の良さを教えてください。      

雪下 私はラジオの在り方がすごく好きで……。いつも聴いていると、パーソナリティさんの人柄がわかってくるし、みなさんにすごく親しみを持っています。リスナーとパーソナリティさんの間には、ラジオだからこそ生まれる特別な関係性がある気がするんです。

たとえば私が仕事でミスして半泣きで帰ってるときとか、そういう私の状況や気持ちの波に関係なく、パーソナリティさんは常に“いつもの調子”で話してくれます。親しく思う人の“いつもの声”を聴くと、心が落ち着くんです。安心する。      
私の心のすぐそばに、いつでも変わらずに存在してくれるラジオのおかげで、「私はひとりじゃないな」って思える。それがラジオの一番の良さだと思います。    


——雪下さんにとって、ラジオが気持ちを支えてくれる軸になっているんですね。      

雪下 そうですね。それと、私はずっと家でひとりで仕事をしているので、昼夜逆転したり、平日か休日かわかんなくなってきたりすることもあるんです(笑)。でも、ラジオを聴くことで「今」を確認できる感じがある。ラジオが私の毎日のルーティンを組んでくれているというか。日々の生活を送る視点でもラジオに助けられていますね。    


——たしかに『森本毅郎・スタンバイ!』を聴いている間に朝の準備を終わらせる、とか決めているとテキパキ動けそうですね。      

雪下 そうそう。私にとっては「スタンバイ」は早く起きた日だけ聴ける番組なんですけど(笑)。      
あと私、寝るときもラジオ付けっぱなしなんですよ。目を閉じてから眠りに落ちるまでの間に、頭の中でなにかをぐるぐる考えちゃうことってあるじゃないですか。それで不安になったり、落ち込んだり……。でもラジオが流れていると、ラジオの中の話に集中できるから、一旦“自分”はどっかに置いておけるんです。今ではラジオを付けてないと眠れなくなりました。

同じ理由で、ラジオを流していると仕事にも集中できる気がします。ずっとひとりで絵を描いていると、いろいろ考えちゃうことが多いので。私みたいに頭の中で考え過ぎてしまう人には、ぜひ自分をラジオに預けてみることをおすすめしたいですね。 
 

——今日は、雪下さんのラジオ愛がたっぷりうかがえました。ありがとうございました!      

雪下 こうしてラジオについてお話しできる機会をいただけてすごい光栄でした。これからも大好きなラジオに関わるお仕事がたくさんできたらうれしいです。今日はありがとうございました!      
 

     
雪下まゆ/画家・イラストレーター。昨年発行した「オトビヨリ6月号」の表紙を担当。その活躍は多岐にわたり、CDジャケットや装丁といったタイアップ、コラボ作品も多く手がけているほか、2020年にはアパレルブランド「Esth.」を立ち上げ、デザイナーをつとめている。      


Photo:持田薫 Text:水沢環 Edit:ツドイ      
 

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