「私とラジオ」/ラブリーサマーちゃん【連載エッセイ「わたしとラジオと」】

インフルエンサーや作家、漫画家などさまざまなジャンルで活躍するクリエイターに、ラジオの思い出や印象的なエピソードをしたためてもらうこの企画。今回は、「ラジオは甘美な時間である」というシンガーソングライターのラブリーサマーちゃんにラジオと出会い、好きになるまでのエッセイを書いていただきました。

 

音楽の面白さに目覚めてから11年。
ピチピチロックギャルを名乗って音楽活動を始めてから今年で9年になる。自分でロックを作りながら、様々な音楽を愛聴し続けているが、その音楽人生が始まる要因の一つは紛れもないラジオであった。
 

中学生になると、周囲の友達は音楽に興味を持ち始めた。ヒットチャートのCDの貸し借りが盛んに行われる教室で、私も同じように音楽に興味を持った。友達から借りたCDを聴くべく、親に音楽プレイヤーをねだった。しかし父親から渡されたのはポータブルラジオ。お前は成績が悪いから、音楽を楽しむ前に英語の番組を聴いて勉強しなさいとの理由だった。
私は落胆したが、いざ聴いてみるとラジオも面白く、学校の行き帰りや帰宅後、英語の番組ではなくエンターテインメント寄りのラジオを聴き漁るようになっていた。そんな頃、現行の日本のロックシーンを中心に紹介するティーン向けのラジオ番組に出会った。その番組を初めて聴いたとき、相対性理論というバンドの「さわやか会社員」という曲がかかった。そうして私に雷が落ちたのだった。"こんな音楽、聴いたことがない!”
 

それからというもの、夜の10時になれば自室に篭り、ラジオを毎日聴くようになった。
とにかくお金が無かったため、音楽を聴く場所となると図書館でCDを借りるか、ラジオで聴くしかない。図書館に置いてあるCDのほとんどは一昔前の音楽ばかりで、私はそういった音楽を聴くほかなかったのだが、ラジオの登場によってそれが一変した。最近の日本の音楽の面白さに気付いたのである。ラジオを聴いていくうちに、私は現行の日本のロックキッズになっていた。
自分もロックバンドをやりたいと思いバンドを結成するのも自然な流れだった。
高校で組んだバンドが解散し、暇になった私は自分で曲を作り始めた。活動は序盤から運良く調子に乗り始めていたが、その人気も局地的なものであった。無名の高校生だった頃、なんの事前の報せもなく、私の曲がラジオでかかった。SNSで自分の芸名を検索すると「この人誰?」「今かかってる曲良い」。沢山のコメントを見た。知らない人に私の曲が一気に届いていく感覚を得たのはあの時が初めてであった。
 

ラブリーサマーちゃんとして活動するようになってから7年目の春、「インターネットラジオでレギュラーを持ちませんか」とオファーを受けた。
番組の内容は、自分の好きな曲や自らの曲をかけながら、曲についてトークしていくというもので、一人で1時間喋り続けることができるのか、面白い話ができるのだろうかと不安であったが、好きな音楽について喋りたい気持ちが勝り、引き受けた。
そうして私は、先日そのラジオが終了するまでの約2年間半、ラジオのパーソナリティを務めた。初期は話題が尽きてしまい、時間を持て余して泣き出してしまったりと、とんでもない番組であったが、今振り返るとあの2年間半はとても甘美な時間であった。
SNS全盛の時代、今の日本で最もポピュラーなSNSはTwitterであろう。ラジオを聴き、ラジオをやると、文字ベースで語られる情報の希薄さに気付かされる。中には手紙の方が得意な人もいるだろうが、ほとんどの人は文字で語るよりも口で喋る方が達者だろう。文字では、どんな風に笑っているか、喋っているか、その全てを再現することができない。パーソナリティの話し方、時間の動かし方に身を委ねるとき、その人間をより近くに感じることができる。
文字ではなく、温度を持った声で語るとき、自分の存在を開示することができた。今、私の存在を誰かが認めている、そして私も誰かの存在を認めている、心を通わせられていると感じられた甘美な時間であった。

 

ラブリーサマーちゃん愛用のラジオセット



ラブリーサマーちゃん/1995年生まれ、東京都在住の26歳女子。2013年夏より自宅での音楽制作を開始し、インターネット上に音源を公開。SoundCloudやTwitterなどで話題を呼んだ。2015年に1stアルバム『#ラブリーミュージック』、2016年11月にはメジャーデビューアルバム『LSC』をリリースし好評を博す。2020年9月には待望の3rdアルバム『THE THIRD SUMMER OF LOVE』を発売。可愛くてかっこいいピチピチロックギャル。

 

llustration:stomachache Edit:ツドイ

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