脱炭素に技術力で挑む企業たち

森本毅郎・スタンバイ!

COP26が終わりましたが、そこでは、日本の脱炭素への消極姿勢が目立ちました。一方で、日本の企業は、その技術力を活かして、積極的に脱炭素へ動いています。今回は、そうした企業を3つ、さまざまな分野からピックアップ。「森本毅郎・スタンバイ!」(TBSラジオ、月~金、6:30-8:30)「現場にアタック」で取材報告しました。

 

★CO2を吸い込むコンクリート

まずは、画期的なコンクリートを開発しているというお話です。鹿島建設、技術研究所の 主任研究員、関健吾さんに伺いました。

「「CO2ーSUICOM(スイコム)」といいまして、通常のコンクリートは、セメントと水が反応して固まっていくんですけれども、我々のCO2ーSUICOMは、CO2と反応しやすい特殊な粉、これセメントの代わりに使いまして、火力発電所とかそういったところから持ってきました排気ガス、例えばそういう高濃度のCO2を使いまして、CO2と反応させて固める、そういったコンクリートになっております。例えばローマのコロッセオとかも、2000年の時間でCO2と反応して、非常に安定して健全な状態になっているというようなことがわかりました。我々はそれを非常に短時間で作る、そういったことをしております。」

(鹿島建設 技術研究所・主任研究員 関健吾さん)

▲「CO2ーSUICOM(スイコム)」イメージ図

▲「CO2ーSUICOM(スイコム)」は、歩車道の境界ブロックなどに使われています

CO2を吸い込むコンクリート、その名もずばり「CO2ーSUICOM(スイコム)」=CO2を吸い込む。水ではなく、CO2で固めるコンクリートで、さまざまな大手企業と、それぞれの得意技術を出し合って完成させたそうです。

通常のコンクリートは1立方メートル作るのに、288kg、CO2を排出(+288kg)。一方こちらは、製造過程でCO2を吸い込んで固まり、18kg、CO2が減ります(ー18kg)。つまり、通常のコンクリートを作るのと差し引きすると、300kg以上の削減効果があるんです。

CO2の量というのはイメージが湧きにくいですが、大きな杉の木は1年間でCO2を14kg吸い込むということなので、このコンクリート1立方メートルで、杉の木1本のイメージです。

この技術は、今もしっかり残るローマのコロッセオなどに学んだ手法で、耐久性もあるそうです。現在は、ブロックなどで使われ始めていますが、今後は大きな橋とか、大きな土木分野で使えるように、さらに研究開発を進めるということでした。ただ、やはり一番の課題はコスト。通常の数倍ということで、ここを抑えたいとお話していました。

▲技術の開発者のお一人、鹿島建設の関健吾さんに伺いました

★希少金属で水素エネルギーを後押し

続いては、CO2を出さないクリーンエネルギー「水素」を、持続的、効率的に生産する新しい技術。こちらは、フルヤ金属の研究開発。取締役で、貴金属・資源再生本部長の桑原秀樹さんに伺いました。

「「プラチナ」「イリジウム」「ルテニウム」の3つの金属を、今後非常に重要となってくる水素を製造するのには欠かすこともできないメタルということから、「グリーンメタル」というふうに称してます。非常に少ない貴金属でございまして、足りるようにですね、「ナノ合金」という新しい分野なんですが、京都大学の北川教授と共にですね、研究開発をやっております。今まで1gで、例えば10、水素が作れたものを、半分、他の金属を混ぜて、同じ10作れば、使用量は半分になりますよね。2種類3種類4種類を混ぜてさらに小さくすることによって、千分の1で同じ10の水素を作れるような研究開発というところに非常に力を入れておりまして、2~3年、長くても5年以内には水素社会に対して貢献できるというふうには考えております。」

(フルヤ金属 取締役 貴金属・資源再生本部長 桑原秀樹さん)

▲フルヤ金属の桑原秀樹さんにお話を伺いました。

フルヤ金属はプラチナ、イリジウム、ルテニウムなど、希少金属のトップ企業。(イリジウムは、有機ELに必須な貴金属として、皆さんのテレビやスマホの中にも入っています!)

これらの貴金属は、クリーンエネルギーを作るのにも活躍することから「グリーンエネルギー」と呼ばれています。特にイリジウムは、水から水素を作る際に使う「電極」として高い能力を発揮します。

今、水素エネルギーの分野では、水素の生産自体もクリーンエネルギーで行う動きがありますが、不安定なクリーンエネルギーで効率的に水素を作るには、イリジウムの電極が最適だそうです。

ただ、イリジウムは、年間で家庭用バスタブ2杯分しか取れないという希少な資源…。とてもじゃないけど、大規模な水素社会の実現には足りません。そこで、フルヤ金属はイリジウムを他の貴金属と混ぜ、かつ効率を落とさない「ナノ合金」を研究。これまで困難とされていた「量産化技術」を開発したそうで、水素社会の実現に向けて準備中ということでした。

こうしたフルヤ金属の技術への関心は高く、来週26日金曜日には、環境省の事務次官も出席する国際オンライン会議「グリーンメタル&ハイドロゲン」にフルヤ金属から社長が参加、世界に、情報発信していきたいと話していました。

▼ご参考

フルヤ金属の古屋堯民(ふるやたかひと)社長も参加する「グリーンメタル」に関する国際オンライン会議は11月26日(金)15時から。

「GREEN METALS & HYDROGEN The Pivot to a Cooler Planet」

事前登録さえすれば、無料で参加できるそうなので、気になる方はぜひお申込みください。

 

★「パンの留め具」も脱炭素!

最後は、皆さんにとって、ぐっと身近な商品「バッグクロージャー」。何?と思うかもしれませんが、あのパンの袋の口を止める留め具のこと。製造会社「クイック・ロック・ジャパン」の代表取締役社長、河合元浩さんのお話です。

「「バッグクロージャー」の原材料はプラスチックなんですけれども、そこに、とうもろこしやジャガイモなどの炭水化物から作られた「バイオマス素材」を混合することによって、製造時に排出するCO2の量が10%削減できます。セブンイレブン様の「金の食パン」の留め具として採用していただいております。アメリカで先行発売しております。地域の製パン会社というところが、エコロックに切り替えていただいたケースがあります。1年間のCO2の削減量っていうのは、カナダからメキシコに車で6往復したときに排出されるCO2の排出量。ですのでもし日本中なんてことになりましたら、ものすごい量になると思います。」

(クイック・ロック・ジャパン 代表取締役社長 河合元浩さん)

▲環境に優しいバッグクロージャー「Eco-Lok(エコロック)」と、粒状のペレット

クイック・ロック社は、アメリカに本社があるグローバル企業ですが、その日本企業が「クイック・ロック・ジャパン」で、「バッグクロージャー」シェア9割以上の最大手です。

このプラスチックの材料の10%をバイオマス原料にして、CO2を10%以上削減!先程、アメリカの1社の例がありましたが、全米合わせると、自動車で地球5週分のCO2削減につながったと伝えられています。

現在は、技術上の問題もあり、10%までの配合ですが、クイックロック社は、2025年に「売上の5割をサステナブル製品に」としているので、今後も研究に力を入れていくようです。

 

取材・リポート:TBSラジオキャスター田中ひとみ

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