宇多丸『ハロウィン KILLS』を語る!【映画評書き起こし 2021.11.12放送】

アフター6ジャンクション

TBSラジオ『アフター6ジャンクション』の看板コーナー「週刊映画時評ムービーウォッチメン」。ライムスター宇多丸が毎週ランダムに決まった映画を自腹で鑑賞し、生放送で評論します。

 

オンエア音声はこちら↓


宇多丸:

さあ、ここからは私、宇多丸が、ランダムに決まった最新映画を自腹で鑑賞し評論する、週刊映画時評ムービーウォッチメン。今夜扱うのは、10月29日から全国の劇場で公開となったこの作品、『ハロウィン KILLS』

(曲が流れる)

これね、ジョン・カーペンター自身が1978年、一作目の時に作った、自身が作曲したもう有名なテーマ曲。アレンジはし直しておりますけど。この「テンテンテン、テンテンテン♪」(というピアノの旋律)とタイトルが出る時に、ちょっと、こっちが思っていたタイミングよりも早めに「テンテンテン、テンテンテン♪」って来るところ! ここがね、僕は『ハロウィン』のまず、アガりポイントで(笑)。今回の『ハロウィン KILLS』もね、「テンテンテン、テンテンテン♪」って来た時に、「おおーっ!」ってやっぱりね、アガるわけですね。

ジョン・カーペンター監督が1978年に手がけた『ハロウィン』の、40年後を描いた新三部作の二作目。前作の戦いで死んだと思われたブギーマンことマイケル・マイヤーズだったが──これね、「シェイプ(影)」なんていう言い方もしていますね──ブギーマンことマイケル・マイヤーズだったが、救助に現れた消防隊を惨殺し、ハドンフィールドの町で再び殺人を繰り返す。過去、マイケルに狙われたローリーは決着をつけるべく、娘のカレン、孫のアリソンと共に戦いに備える。その一方、住民たちはマイケルを恐れるあまり暴徒化していく。ローリー役にはジェイミー・リー・カーティスが続投。監督は前作に続き、デビッド・ゴードン・グリーン。製作は『透明人間』などのヒットメーカー、ジェイソン・ブラムが務めた、ということでございます。

ということで、この『ハロウィン KILLS』をもう見たよ、というリスナーのみなさま、<ウォッチメン>からの監視報告(感想)、メールでいただいております。ありがとうございます。メールの量は、「少なめ」。だってさ、公開が10月29日で。(実際の行事の)ハロウィンがね、もう30日、31日とあって。その旬の瞬間が、ちょっと短いだろう?っていうね(笑)。そんなのがありますけどね。

で、褒めの意見が8割近く。結構好評です。主な褒める意見としては、「景気よく大勢死んでいく。スラッシャーホラー映画としての楽しさ満載」「後半、暴走する群衆心理の恐ろしさを描いているのが新鮮で面白かった」「初めてシリーズを見たが、親切設計で問題なく楽しめた」。ああ、そうですか。それはよかった。などがございました。一方、否定的な意見としては、「中盤に近づくにつれ、ブギーマン、マイケルの強さがインフレしてきて面白さの質が変わってしまった」「最後はどちらに感情移入していいかわからず、期待していたものと違って混乱した」などがございました。

■「本作は『恐怖が人々を団結させる』ことについて語られています。」

代表的なところをご紹介しましょう。「真夜中のゴア」さん。

「『ハロウィン KILLS』、見てきました。人を不安にさせる演出、スリル、ゴア描写を十二分に楽しめるのは前作同様ですが、今回は前作以上に『ブラムハウス・プロダクション』らしい社会風刺的テイストが盛り込まれており、私としては大大大満足でした。本作は『恐怖が人々を団結させる』ことについて語られています。アンソニー・マイケル・ホール演じるトビーのバーでのスピーチなど、『恐怖』の物語を語り継ぐことで人々の心が一つになる様子を本作は説得力ある描写で描いていきます。

それは新作を何度も作り続け、恐怖の物語を継承し続けるホラー映画のシリーズと、それをカルト的に追い続けるファン同士のコミュニティと重なる部分もあるのではないでしょうか」。面白いね、これね。読みがね。「しかし本作は、恐怖による団結は暴力に結びつくことを指摘しています。中盤にショッキングな展開がありますが、デマによって恐怖心を煽られた集団が暴力の世界へと、文字通り走り出したら止めらない様子が後味悪く描かれています。本作は2019年撮影とのことですが、今年初めに発生したとある事件をつい連想してしまい、この先見の明はさすがブラムハウス・プロダクションといったところでしょう。

しいていえば、これは本作に罪はまったくないのですが、先日の京王線での刺傷事件の犯人が、『ハロウィンの日を狙った』などと供述していることが報じられている中で、ハロウィンの日に大変な目に遭っている人たちの映画を観るのが正直しんどくなるシーンも多々あったなあ、、、というのは後年の記録のためにも書いておこうと思います」という真夜中のゴアさんです。ありがとうございます。

一方、ダメだったという方もいますね。「ケン」さん。

「『『ハロウィンKILLS』観ました。感想としてはあまり良くありませんでした。

人々の恐怖の中の存在とされ、物理的な強さを超越してしまったマイケル(ちょうどちょっと前に公開されていたキャンディマンみたいになったなと思いました)が、次回作『Halloween ends』でどうなるのか、どう風呂敷を畳んでくるのかがとても楽しみな一方で、今作だけをみた場合、現代の社会を投影したような、『暴走する市民』みたいな説教臭さを感じる場面が印象に残り、前作のラスト、ローリーの家での戦いの時のような、爽快感が感じられる場面がなかったからです。マイケルが暴れまくるのは爽快感を感じなくもありませんが、それよりも、弱者が力を振り絞って一時的にでも一矢報いるシーンが見たかったです」というようなご意見でございます。

ということで皆さん、メールありがとうございます。

映画史的にも重要な一作、1978年の『ハロウィン』

『ハロウィン KILLS』、私もTOHOシネマズ日比谷とシネクイントで見てまいりました。まあハロウィンが終わっちゃった後ということもあるのか、正直空いてましたけど。ただ、シネクイントの時はね、昼の回だけど渋谷らしく、女の子2人でキャッキャ言いながらなんか見てたりして。そういうのがいいなと思いながらね、私も見てまいりました。

ということで本作『ハロウィン KILLS』、ざっくり言えば、1978年の記念すべき第一作『ハロウィン』と“ほぼほぼ”直接繋がった、つまり「40年後の続編」である2018年の『ハロウィン』、その続きの話なわけですね。まずその1978年の『ハロウィン』が、どんな作品だったか。これは本作『ハロウィン KILLS』の理解のためにも必要なので、一応ご存知ない方のために簡単に説明しておきますけど……まあ、いわゆる「スラッシャー映画」というね、80年代を中心に一大ジャンルとなっていった、ホラーの一形態があるわけですね。

要は、非常にアイコニックな殺人鬼。まあ超人的、モンスター的な存在感の殺人鬼がいる。これ、要はもちろんね、『悪魔のいけにえ』のレザーフェイスが先行する……もう本当にとんでもない名作として、ガン!とまずはありますけども。その存在感は超人的、モンスター的なんだけど、暴力そのものは即物的、というバランスがやっぱりこの『ハロウィン』のマイケル・マイヤーズ、非常にフレッシュだったように思いますね。

まあとにかくね、調子こいた若者たちを、罰するがごとく、次々と残虐な手口で殺害してゆき……その中で、唯一無垢な存在としての主人公、いわゆる「ファイナルガール」としてそれが生き残ってゆく、というような。まあ身も蓋もないというか、今となってみればかなりね、ちょっと古くささも感じるような形式ですよね。そういうスラッシャームービーの形をですね、まあ決定付けた。その後、無数のフォロワーを生んだ……たとえば『13日の金曜日』も、そもそもは「『ハロウィン』のパクり、やろうぜ!」って言って作った、っていうことも出てますけどね。映画史的にも非常に重要な一作なわけですね、1978年の『ハロウィン』。

まあ非常に超低予算だったんですけど。もちろん、脚本、監督、音楽も手がけたジョン・カーペンターの一大ブレイク作であり、あとはトニー・カーティスとジャネット・リーの娘でありつつも、まだまだ無名だったジェイミー・リー・カーティスをスターに押し上げた一作でもあり、という。その、見事に手作り感あふれる製作裏事情については、先ほどオープニングでもちょろっと言いましたが、Netflixのドキュメンタリーシリーズ『ボクらを作った映画たち』という、これの『ハロウィン』回に詳しいので、ぜひ見ていただきたいんですけど。

■決定版的な続編がデビッド・ゴードン・グリーン製作総指揮・脚本・監督の2018年『ハロウィン』

たとえばあのね、製作・共同脚本を手掛けている、デブラ・ヒルさんという方がいて。この方、2005年に亡くなっちゃってるんですけど。この人ね、当時ジョン・カーペンターの恋人でもあったんですって。で、この方が脚本に加わることで、特に女性キャラクターの描写の掘り下げにすごく大きく貢献した、という。デブラさんの色がすごく強い、という。これ、2018年の『ハロウィン』から今回の『KILLS』という流れにとっても、すごく重要な要素ですよね。そういう意味でも、すごく興味深い証言があったりしますし。

あと、今回の『KILLS』でもオマージュされている、あの、車内にいるマリオンさんという方が襲われるシーン……「実はこんなものが映り込んでいますよ」とか。あとはですね、ルーミス医師役のドナルド・プレザンスが、もう現場に(飲酒で)ベロベロになって現れて困りましたとか(笑)、そういうのが本当に面白いので、本編に合わせてぜひ見ていただきたいんですけど。とにかくその1978年、第一作のヒットを受けて、当然のごとく、まあここから一気に端折りますけども、続編というかね、いろんなシリーズが作られていくわけですよね。

まあ、その中には今回の『KILLS』にもオマージュが入ってますけど、マイケル・マイヤーズが出てこない『3』とかですね。あと、ジェイミー・リー・カーティスの再登板、これも2018が最初じゃなくて。『ハロウィンH20』という20周年記念のやつ、これがあったりとか。後はもちろんね、先ほども山本さんにお勧めしましたけど、賛否が分かれるのはわかるけど、僕は絶対支持!な、ロブ・ゾンビならではの「地獄のホームドラマ」として再解釈された、リブート『ハロウィン』2部作とかですね。まあいろいろ試みがあったわけなんですが。

まあ、そんな中である種、決定版的な続編として作られたのが、先ほどから言及しているデビッド・ゴードン・グリーン製作総指揮・脚本・監督による2018年『ハロウィン』。で、今回の『KILLS』、そして……というね、三部作ということもアナウンスされてますけども、連なっていく今回の新シリーズ。ある種、決定版シリーズという続編として作られてる、っていうことですね。

■今シリーズの最大の特徴。「三世代の女性主人公の物語」になっている。

最大の特徴は、やっぱり一作目、1978年の出来事を生き残った主人公ローリー、ジェイミー・リー・カーティス演じるローリーが、もうぶっちゃけて言っちゃえば、もうずばり『ターミネーター2』のサラ・コナーですね(笑)。つまり、マイケルとの再戦に備えて、常に完全武装の臨戦態勢、自らを戦士として鍛え上げた、という状態になっているわけですね。もう完全にあれ、サラ・コナーですね。そして、傍から見れば、その事件のトラウマで、ちょっとおかしくなっちゃった人に見えるわけですよね。

そういう母親に育てられ、訓練され、今ではちょっとそれに食傷気味というか、うんざりしている娘のカレン。これ、ジュディ・グリアさん、非常に見事に演じていらっしゃいます。更に、その娘。ローリーにとっては孫に当たる、アンディ・マティチャックさん演じるアリソンという。この、三世代の女性たちの物語になっている。これがまずその、2018の『ハロウィン』から始まる今回のシリーズの、最大の特徴ですね。三世代の女性主人公の物語になっている。

で、一方、その殺人鬼、モンスターたるマイケル・マイヤーズ、ブギーマン、シェイプはですね、1978年の『1』のラストと、1981年、日本では1982年公開の『2』のド頭のあたりが「ちょっと違うことになった」感じの、パラレルな現在、みたいなところに置かれている。また『ターミネーター』で言うと、『ニュー・フェイト』的な、ちょっと違う感じの今、というのになっていると。パラレルワールド。

まあ要は、1978年のその事件の直後に、マイケルは捕らえられて、ずっと病院で鎖に繋がれていましたよ、というような設定になってるわけですね。これがですね、2018年の『ハロウィン』の冒頭なんですけど。これ、さっき言ったロブ・ゾンビ版リブート、ジョン・カーペンターはあんまりお気に召さなかったみたいですけど、ちょっと僕、そこの感触も、ここには入ってるな、と思います。

つまり、要するに、あまりにも年月がもう重なり過ぎてしまって。もうマイケルの闇は取り返しのつかないことになっちゃった、っていう……人と隔離してしまったことで、「余計に取り返しがつかないことになってしまった感」みたいなのは、この2018年版に僕、ロブ・ゾンビ版もちょっとこだましてるかな、っていう風に個人的には思ってます。

で、まあ案の定というべきか脱走したマイケルは、再びハドンフィールドの町に帰ってきて、恐怖に陥れる。で、とある事情から、ローリーと再び相まみえるようになるという……この「とある事情」がまた本当にひどいんですけど。というのが、2018年『ハロウィン』の大筋なんですけど。

とにかくその前作はですね、終盤、ローリーの家に、その三世代の女性たちが集まり、マイケルと対峙、対決することになってからの、これは先ほどのメールにはありましたけど、ここのもうね、アガりっぷりが半端ないですね! ホラー映画でこんなに高揚することって、なかなかないんじゃないですかね。

要はホラー映画、スラッシャームービーの、これまでは犠牲者、被害者、もっと言えばもう、キャーッ!とか悲鳴を上げるだけの「無力な存在」としてずっと扱われてきた女性たち、という立場からの、ひとつのもう、痛快な回答ですよね。はい。あと、その「外部からやってくる敵に、自ら武装して、自衛で対抗する」というのはこれ、ジョン・カーペンター作品と通じる、西部劇イズムですよね。昔ながらのアメリカ映画、もっと言えばアメリカのフロンティア精神というか、アメリカ人の精神の根幹感みたいなのが、ちょっとここにも描かれていると。

で、まあとにかく「そう来たか!」と思わず拍手してしまう、本当にアゲアゲな展開が最高の一作ですよ、もうとにかく2018年版は。もう最高でしたね、これはね。なので、一作目で「最高!」ってなった人が、今回、「えっ、どういう気持ちになれと?」っていうのは、わかります。

■2018年の一作目の高揚感に冷水をぶっかける、「『1』を相対化する『2』」

その(2018年版のエンディングの)直後から始まる今回の二作目『KILLS』。大筋は、オリジナルで言う『2』ですよね。ほぼ病院が舞台、しかも病院も同じ病院、という設定ですし。ほぼ病院が舞台で展開されるあたりとか、一作目の直後の町を徘徊するマイケル・マイヤーズの視点が描かれていたり、とかっていうところは、『2』を想起させつつも……しかしですね、2018年のその一作目の、さっき言った半端ない高揚感。

まさにそれにですね、冷水をぶっかけるような、ある種、今言ったようなアメリカ映画の根本、西部劇感……自警団イズムというのかな。もっと言えば、アメリカの根本にある「恐怖を自衛で克服する」「暴力にはもっと上の暴力で対抗する」「外敵には団結して暴力で対抗していく」というような精神性を、非常に批評的に相対化し、その危うさを浮かび上がらせるような、なかなかに攻めた領域まで踏み込んでいく一作になっているわけですね。

つまり、単なる続きじゃないんですよね。『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』とかもそうだけど、ちゃんと『2』の意味がある……要するに、「『1』を相対化する『2』」になってるわけです。途中であの「保安官」が、完全に無力に終わる、っていうのも、非常に象徴的ですよね。そして、これはですね、ご覧になった方はお分かりと思いますが、まさしくアメリカの「今」……もちろんね、2019年に製作開始してるんで、ちょっと本当にシンクロニシティーも含みますが、アメリカの今、そして世界の今っていうのは、嫌でも連想させる。もっと言えば、現実に起こったさまざまな事件をも想起させる作りでも、明らかにあってですね。

その意味では、ジョーダン・ピール以降の社会派ホラー、非常に色濃くなってますが、その潮流とも本作は確実にシンクロしている、ということですよね。特に中盤、まさしく「目も当てられない」というのがふさわしい、とある本当に醜悪な展開、っていうのがあって。これが本当に、本作のキモになってると思います。まあ一作目でですね、そのローリーが子守りしていた、トミーくんというキャラクターがいるんですけど。

その男の子が、アンソニー・マイケル・ホール演じる、もうゴリゴリにマッチョな……まあアンソニー・マイケル・ホール自体、元々はね、マッチョから一番遠い感じの青春スターだったのが、なんか体を鍛えてゴリゴリなマッチョになった人でもある。「俺が町を、君を守る!」おじさんとなって……ゴリゴリマッチョな「俺が守るおじさん」になって、イキり散らした結果、みたいな。

ちなみにこのトミーがですね、ローリー……最初、娘のカレンが気を遣って、マイケルがまだ死んでいないっていうことをあんまり伝えないようにしてたのに、全く無配慮にドーン!って病院に入ってきて。「いやー、マイケル、ちょっと大変だからさ」「えっ、なに?」みたいな(笑)。あそこの、無配慮に伝えて、「いや、俺が守るから!」ってイキり散らかす時点でもう、「こいつ、ちょっとさ……」っていう感じになってるわけですけど。

ただ、そこからのローリーの暴走っぷりも、大概ですよね。先ほどもちょっと言いましたけどね、あの痛み止めをブスーッ!ってやって、通りがかりの医者に膝蹴りをドーン!っていうね(笑)。もう、乱暴すぎる! 一方その時、もう1人いるお母さんは、とあるショッキングな対面を果たしてる、という。本当に地獄絵図がここは繰り広げられてるわけですけど。

■マイケル・マイヤーズさんの「ああ、もう無理だ。話も通じないし……」に圧倒される

個人的にはですね、これは『ハロウィン』だけの問題ではないんだけど、こういう、なんていうか連続殺人鬼で、それが精神病院に行ってて……みたいな設定の映画。長年こういうのは、要は心の病を持つ現実の方々に対する偏見を煽りかねない描写、という意味で、僕はやっぱりちょっと、あんまりよくないよな、これはな、っていうのは長年感じてきた部分なんだけど。本作『KILLS』は、そこの部分にも、一定の真っ当な回答を示していると思います。

精神病院にいらっしゃる方々、心の病を持った方々は、むしろ弱者なんですよね。助けを求めている、助けが必要な方々だ、ってことを、はっきり描いている。そこでもすごく納得度が高かったです。

まあともあれですね、そんなイキり散らかしていたトミーが、最後、最後の最後にですね、「うわーっ!」ってイキり散らかしてたのが、深淵から見つめ返される……つまり、マイケルから見つめ返される。ここのですね、終盤の、ほとんど……非常に描写が抽象化していくわけですね。もうバックは真っ黒になって、その中でいろんな殺戮が繰り広げられる。非常に、ほとんど「哲学的ホラー」化していくあたりも、すごく新鮮な描写でしたし。

今回、マイケルが、「実家の窓から、彼は何を見ていたのか?」というのが、ひとつの一貫した軸として描かれていて。これもすごく上手いというか、いい作りだなと。マイケルの闇とは何か、っていう考察のキーワードとして、すごくいい設定を作るなと思いました。まあ、とはいえマイケル・マイヤーズさんはですね、さっきその「イキりマッチョなトミーを……」なんて言いましたけど、そういう風に「いい人」とか「悪い人」とか「むかつくやつ」とかの区別を付けて人殺しをするような存在では、もちろんなくて(笑)。とにかく基本、会った人は全員、殺します。今回はもう、ローティーンも対象にしていましたね。恐ろしかった。

それも本作、特に多いのがですね、壁などへの執拗な、「打ち付け」ですね。有名スラッシャーの中でも、「即物的な暴力感」がやっぱり最も強い、マイケルならではの怖さ。あと、なんというか、ちょっと美的センスっていうか、要は「こうしないと気持ち悪いから」とても言いたげな、プラスワン暴力、みたいなことをするんですよ。その、なんか意図がちょっとわかるようでわかんない感じの不気味さ、みたいなのを、すごく見事に表現されてると思います。

個人的にはですね、あの最初の方で押し入る家の、あの「蛍光灯」のくだり。瀕死の女性の視点で、いま言ったような、マイケルのちょっと理解できそうでやっぱりできない感じの殺人、暴力の、そのノンストップの行使っぷり……そこにある、「えっ、今なんでそこにこだわった?」みたいなところとかの、要するに彼の本当に理解不能感みたいなのを、たっぷり、被害者の目線で目撃させられる。要するに被害者の絶望が、それで「ああ、もう無理だ。話も通じないし……」って(心情が伝わってくる)。それを容赦なく切り取っているところで、ここも圧倒されるシーンでしたし。

もちろんクライマックス。あの階段と、手すりですね。空間の使い方としても、とっても上手いっていうか……痛い、と言いましょうか(笑)。これ、ぜひご覧いただきたいあたりですよね。

■映画史的にも重要な三部作に、今回の『2』で決定的になった

ともあれですね、前作が、40年にわたるそのローリーの、まあ強迫観念ですよね。その強迫観念に、落とし前をつける、彼女がトラウマに向き合う、「ローリーの物語」だったとするならばですね、そうしたローリーの、いわば、さっきから言ってるような西部劇的、アメリカ映画的、アメリカ的自警団イズムに対して、とはいえそことは一定の精神的距離を置いている娘のカレンがですね、今回の『KILLS』では、最も活躍するわけですよね。

特に、さっき言った中盤の展開で、要するに被害者意識が転じて、その集団が暴力性を帯び始めている時に、その標的とされてしまう「真の弱者」に、彼女は寄り添おうとする。彼女だけが積極的に寄り添おうとするところ、本当に感動的だし。まあその、ローリーに続く「カレンの物語」として、とても理にかなったシリーズの発展のさせ方だと思うんですよね。本作はですね、全編舞台が夜のため、撮影監督マイケル・シモンズさんによる闇、「黒」表現も、よりシャープで際立ったものになってたりとか。僕は前作以上に、脚本・監督のデビッド・ゴードン・グリーンさんの腕、感心しました。

すっごくシャープな画面とかもあるし、抽象化もうまいっていうか。前作はね、ちょっと画として緩いなって思う瞬間も多かったんですけど、今回は結構キレッキレっていうか、更に……「ああ、この人、結構腕があるわ」っていうのを感心したりもしましたね。

ということでですね、まあローリーの物語が2018年の一作目。で、今回の『KILLS』はカレンの物語、となると、今度は残るはローリーの孫、カレンの娘、アリソンの物語が、恐らく次にメインになってくるだろうと思われるわけですけど。既に発表になっている次作のその『ハロウィンENDS』。

何しろ今回ね、要するに、今までのような……わりと今までのそういうスラッシャー映画とか、ホラー映画、多いですけど、自警団的というか、西部劇的発想、要するに「撃退」っていう発想ですよね。「撃退」っていう発想ではもう、マイケルの闇は倒せないっていうか、よりそれを強く濃くさせてしまうだけなんだ、ってことが、はっきり明言されますよね。となるとこれ、どう締める?っていうことですよね。ものすごく三作目が楽しみになりましたしね。

僕は『2』として……要するに『1』から続いた、『1』を相対化する『2』としても、そして『3』でさあ、どう締める?っていうバトンタッチ、その、なんか宙ぶらりん感がすごく楽しい『2』としても、申し分ないと思いますし。映画としても、要するにさっきから言ってるように、一種アメリカ映画批評っていうか、アメリカ批評にもなっていて、実はすごく攻めたことをやっているし……というあたりだと思います。

とにかく『ENDS』に備える、という意味も含めてですね、僕は意外と今回の三部作は、映画史的にも結構重要な三部作に、今回の『2』で決定的になったと思うんで。今のうちに乗っておいた方がいいと思いますよ! 『ハロウィン KILLS』、ぜひぜひ劇場でウォッチしてください。



(ガチャ回しパート中略 ~ 来週の課題映画は『エターナルズ』です)

以上、「誰が映画を見張るのか?」 週刊映画時評ムービーウォッチメンのコーナーでした。

◆過去の宇多丸映画評書き起こしは

こちらから!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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