コロナ禍で増!隠れ自転車通勤で労災はおりる?

森本毅郎 スタンバイ!

コロナ禍で、電車やバスでの「密」を避けたいと、自転車で通勤する人が増えています。実際、都内の自転車通勤者500人を対象とした調査では、「4人に1人が、コロナ流行後に乗り始めた」というデータもあり、街中でもスーツ姿で自転車に乗る人を見かけることが多くなりました。

この自転車通勤、何か問題はないのか?「森本毅郎・スタンバイ!」(TBSラジオ、月~金、6:30-8:30)「現場にアタック」で取材報告しました。

 

★「隠れ自転車通勤」が増えている

まずは、NPO法人「自転車活用推進研究会」の事務局長、内海(うつみ) 潤さんに、自転車通勤の現状を伺いました。
 

「自転車通勤する人が増えてるが、私が聞いている感じでは、会社に申告しないで、自転車通勤を始めた人が多いようです。「自転車で通勤していいですよ」と公式に認めている会社が少ないんです。なぜかというと、安全な公共交通機関があるのに、あえて自転車を使う必要ないんじゃないかっていうのが一つ。あとは、特に都心の企業さんだと、場所がない。駐輪場の問題っていうのも大きく言われるところです。」

NPO法人 自転車活用推進研究会・事務局長 内海 潤さん

就業規則に「自転車通勤禁止」と書いてあるケースは少ないかもしれませんが、「自転車通勤を認める」とちゃんと書かれていないケースも多いようです。

企業が自転車通勤の公式導入に後ろ向きな理由は、大きく2つ。

まずは、駐輪場の確保の問題。都心では駐輪場そのものが少ないので、会社の周りに路上駐輪されると、近隣から苦情が出てしまいます。

そして2つ目は、交通事故のリスク。自転車の事故は多いので、第三者にケガを負わせてしまったり、自損事故で負傷するなど、様々なリスクを恐れて公式導入に踏み切れないこともあるようです。

 

★「隠れ自転車通勤」でも労災はおりる?

会社公認でない自転車通勤=「隠れ自転車通勤」の場合、心配なことがあります。それは、「事故を起こしたら、労災はおりるのか」ということ。この点について、社会保険労務士の、大槻 智之さんに聞きました。
 

「会社に隠れてやるのは、労災の給付に関しては全く関係ありません。労災が決めた「通勤」という定義に当てはまれば、通勤災害として処理してもらえます。労災で決めた「通勤」というのは、「家から会社まで通うこと」。要するに、まっすぐ直線なら会社に行けるのに、わざわざ気持ちがいいから、川沿いを行こうとルートを外れて自転車を漕いでいくと、その行為は「川を見たい」という行為であって通勤じゃないよね、と判断され、労災が下りないことはあり得ます。そういう事でなければ、労災はおります。これは法律で決まっていて、労災の給付に関しては、会社の判断の入る余地はないです。」

社会保険労務士 大槻 智之さん

▲社会保険労務士法人 大槻経営労務管理事務所 大槻 智之さんに伺いました

通勤時に怪我をした場合(「通勤災害」といいます)の労災は、怪我をした人が、労働基準監督署に申請する仕組みで、会社の判断ではなく、労基署の判断になります。

そして労災対象となる「通勤」の定義については「労働者災害補償保険法」の第7条で決められていて、「住居と就業の場所との間の往復」を「合理的な経路及び方法により行うこと」となっています。

そのため、流石にスケボーは合理的な方法ではありませんが、自転車は一般的に「合理的な方法」なので、労災の対象になります。

また、普通はまっすぐ行く経路を、不合理に遠回りしていくような場合は認められませんが、大きく逸れていなければ、労災として認められるということです。

ただ、労災は労基署判断ですが、一方の会社が関わってくるのが「就業規則」や「交通費」。

仮に、就業規則で禁止されているのに黙って自転車で通勤していた場合は、就業規則違反で処分の可能性がありますす。また、通勤定期代を貰っているのに、自転車で通って、電車代を浮かしていたら、嘘の申告で利益を得た形となり、より重い処分もあり得ます。いずれにせよ、まずは、会社の規定をしっかり確認して欲しいということでした。

▲「通勤災害」についての概要はこちらのパンフレットにまとまっています。

 

★新しい「通勤」の問題

というわけで、法律や規則をみていくとスッキリ整理できそうですが・・・最近ならではの新しい問題もあるようです。

「コロナになって、本社まで来なくても良いから、サテライトオフィスとして、最寄の駅のどこかで仕事して・・・となると、そこには自転車で行くケースが多いと思う。そうすると、会社の人もそこまで気にしてルール作ってないので、その整合性が取れてないケースもあると思う。どこまで今の状態を続けるか、ちょうど多分判断する時期に差しかかっていると思います。」

社会保険労務士 大槻 智之さん

現在の労災制度では、通勤の対象となる「就業の場所」は、「会社」、「工場」、そして営業先などの「用務先」という言葉があるだけで、リモートワーカー向けのサテライトオフィスや、ネットカフェなどは想定されていません。これが「用務先」と判断されるのかどうか・・・

厚生労働省のテレワークに関するガイドラインには、個別の判断は労基署になりますが、としながらも、リモートワークでも労災が認められる場合も考えられる、と記してありました。

 コロナ禍で、通勤方法だけでなく、通勤場所も多様化しているので、制度も変化に対応して、明文化していく必要もありそうです。

 

取材:TBSラジオキャスター 田中ひとみ

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